2016年度 数楽工作倶楽部 第1回

円筒の中の星1



今回製作したのは、円柱の中にぴったりと収まる「星型」です。
上の写真のモデルは、下のような切り込みの入った6本の紙の帯でできています。

長い方は円周、短い5本は星の部品です。

では、実際にはこれらの帯の長さと切り込みの位置はどのようにすればよいでしょうか?
今回の工作倶楽部では、計算によってそれらを求め、上記のっモデルの設計・製作を行いました。


五角形の星の設計

今回の模型の設計でポイントとなるのは、以下の2点の計算です。

(1) 円周部品と星の部品の帯の長さの比
(2) 星の部品同士が交差するために入れる切れ込みの位置

では、それらの値を実際に求めてみましょう。
(以下の考察は、高校の「数学1」レベルの内容です。)


1.星型の辺の長さと円周

平面上に、以下のような半径1の円と円周上の点、それらの交点を考えます。

このとき、円周の長さと星型の一辺の長さ(尖った点同士を結んだ線分の長さ)の比は次のようになります。


(ベクトルは要素を縦に並べて記述しています。)

この値が、短い帯の長さを1としたときの長い帯の長さになります。


2.切り込みの位置

線分 A_0 A_2 の長さに対する線分 A_0 B_1 の長さの比を k とし、その k の値を求めてみましょう。

ベクトル A_0 B_1 を以下のように k を用いて2通りの方法で表すと、k は次のような値になります。

また、黄金比を φ で表すと k は次のように表されます。

以上より、短い帯の長さを1とすると、切り込みの位置は次のようになります。 


以上の計算をもとにして設計図を製作します。
例えば、短い帯の長さを 10cm とすると、切り込みの位置は以下の2箇所です。

「10×(2-φ) = 3.819… (cm)」, 「10×(φ-1) = 6.180… (cm)

また、円周となる長い方の帯の長さは次のようになります。

「10×3.3032… = 33.032… (cm)

(実際には、円周の帯には適当な長さの「のりしろ」を付け足す必要があります。)

設計図ダウンロード(1枚3セット)



五角形の星の製作

実際の製作は、工程を守れば至って簡単です。


1.部品を切り取って切り込みを入れる

切り込みは、単に切り目を入れるのではなく、実際に隙間ができるように 0.5mmほどの隙間を切り抜きましょう。


2.円周部分を作る

一周してのりしろ部分が重なるように接着してください。


3.星の部分の組み立て

一筆書きで星を描くように、頂点を 「A_0 - A_2 - A_4 - A_1 - A_3 - A_0」 の順番で結ぶように組み立てます。
使用する部品と切り込みの上下は下の図を参考にして下さい。

設計通りに切込みが組み合わされ、円周の中にぴったりと接するように出来上がってゆくのが今回のモデルの醍醐味身です。
素朴な紙工作ですが、「数学の計算」をきちんと行わなければ決してうまくゆかない、実は硬派な数学工作です。


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