【注釈】
(1)例をあげると、フランスが130年、スウェーデンが85年、アメリカが70年、ドイツ、イギリスが45年、となっている。
(2)65才以上を「高齢者」、特に75才以上の高齢者を「後期高齢者」と呼ぶ。高齢化率とは全人口に占める65才以上の人の割合。日本においては、1970年に高齢化率 7.1% で「高齢化社会」へ、1994年に高齢化率 14.1% で「高齢社会」へ移行した。また高齢化率 21.0% を超えると「超高齢社会」となるが、今後の日本では、2025年に高齢化率 25.8% となるピークを迎えるだろうと予測されている。
(3)国家が広く国民に対して保障する、必要最低限の生活規準をさす。イギリスの『ベヴァリッジ報告』では、社会保障体系の充実をその中軸に据えている。
(4)世界の社会福祉政策のあり方を見てみると、そのジェンダー関係の扱いは各国により異なっている。例えば、児童保育政策 childcare で見てみると、その公的サービスが最も発達しているのはスウェーデン。サービスの市場供給が進んでいるのはアメリカ、またオランダではデイケアを供給するというよりはむしろ、母親による世話労働 caregiving work を援助するという傾向がある。(Orloff[1996:66])このなかで、「家族機能の見直しと強化」をうたい、生活保障の柱として家庭の役割を検討している「日本型福祉」は、「家庭=女性」に福祉の担い手としての役割を期待し、従来のジェンダー関係を固定化し続けようとするものである。
(5)多くの福祉施設において、「子どもたち(入所者)のうえに母親役割を果たす保母と父親役割を果たす指導員が配置され、その上に家父長的権威をもつ男性施設長が君臨する」。(井上[1989:252])
(6)被扶養者である妻の年間の収入が103万円以下であれば、夫の給与所得控除額65万円と基礎控除額38万円を差し引くと課税所得がゼロになる。
(7)一見、女性に有利にみえる制度だが、年金の積み立てを免除されている第三号被保険者(専業主婦・パートタイマーの主婦が99%)の年金は基礎年金のみであって、夫の1/3程度にすぎないという点で、結局女性の貧困化を招くものである。
(8)また、「家族福祉イデオロギー」は「male-breadwinner イデオロギー」や「家族賃金制」などとも密接に絡み合いながら、われわれの社会において機能している。
(9)具体的には、「男/父による家族成員に対する金銭的扶養」と「女/母による家族成員に対する世話行為」を基本とした家族の理念型から逸脱した家族に、その不足を補うといった形で援助を行なう。
(10)生活保護法では、「生存権の保障」「無差別平等」「最低生活の保障」「保護の補足性」という4つの基本原理が貫かれている。この中の「保護の補足性」では、国民の最低限の生活を国が保障するといっても、それはあくまでもまず「生活の自助原則」の上にあるもの。そこには、当人→扶養義務者→国という優先順位がある。扶養義務者:夫婦相互と未成熟子に対する親(生活保持義務)/その他の三親等内の親族(生活扶助義務)
(11)1990年には65歳以上の高齢者のうち92%が通常の住宅で生活を送っているし、そのほとんどが子どもと同居していない(86年の調査でも同居は6%のみ)。
(12)スウェーデンにおいては多くの親子は相互に訪問可能な範囲内に住んでおり、かなり活発な交流が行われている。1979年には「少なくとも1週間に1回」は子どもと会った高齢者の割合は65%にもなる。また通える範囲内(15km)に老親が住んでいる女性(40-50歳)は、その90%が「少なくとも1週間に1回」は老親を訪問している。(善積[1996:274-275])
(13)「寝たきりになったときに誰に介護を頼むのか」についての調査
単位(%) | 配偶者 | 息子 | 娘 | 子全員 | 嫁 | 家政婦 | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 52.1 | 3.1 | 13.8 | 3.5 | 6.9 | 1.9 | 18.1 |
男 | 75.O | 3.4 | 4.5 | 1.8 | 2.5 | O.8 | 12.1 |
女 | 33.6 | 4.0 | 21.4 | 4.8 | 10.5 | 2.9 | 22.8 |
【文献】
大沢真理 1993『企業中心社会を超えて』時事通信社
伊田広行 1993「シングル単位論観点による社会保障制度・税制度等の再検討」竹中恵美子編著『グローバル時代の労働と生活』ミネルヴァ書房
井上摩耶子 1989「社会福祉とフェミニズム思想」大塚達雄他編『社会福祉実践の思想』ミネルヴァ書房
岡村重雄 1963『社会福祉学総論』柴田書店
奥田いさよ・平塚良子編著 1994『現代人の社会福祉』川島書店
Orloff, Ann ,1996, Gender in The Welfare State, Annual Review of Sociology
善積京子 1996「スウェーデン社会と家族変動」野々山久也他編著『いま家族に何が起こっているのか』ミネルヴァ書房
自由民主党 1979『日本型福祉社会』自由民主党広報委員会出版局
橋本宏子 1996『女性福祉を学ぶ』ミネルヴァ書房
西下彰俊 1992「老人問題からみた家族福祉」野々山久也編著『家族福祉の視点』ミネルヴァ書房
野々山久也 1992「家族福祉の視点とは何か」野々山久也編著『家族福祉の視点』ミネルヴァ書房
山根真理 1992「フェミニズムからみた家族福祉」野々山久也編著『家族福祉の視点』ミネルヴァ書房