経カテーテル大動脈弁留置術「タビ」

TAVI治療実績

75件 (2017.1.12現在)

TA(経心尖部アプローチ) 21件
TF(経大腿部アプローチ) 50件     その他  4件

心臓について

心臓は全身に血液を送り出すポンプの役目をしています。全身に酸素を届けたあとの血液(静脈血)は右心房から右心室へ戻り、肺に送られます。肺で酸素を受け取った血液(動脈血)は左心房から左心室へ送られ、左心室の収縮によって、大動脈を通って全身をめぐり、酸素を届けます。

図1

心室の入口と出口には弁があり、血液の流れが一方向になるように制御しています。

図2

大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁狭窄症とは?

大動脈弁狭窄症とは大動脈弁の開きが悪くなり、左心室から大動脈に血液を十分に押し出せなくなる病気です。原因としては、先天性やリウマチ性(リウマチ熱の後遺症)のほか、最近では加齢に伴う弁の変性や石灰化によるもの(動脈硬化性)が増えています。

図3

症状の現れ方

大動脈弁狭窄症は徐々に進行するため、病気を自覚しにくいのが実情です。動脈硬化性が多いため、70代、80代になってから症状が現れる方が増えています。大動脈弁狭窄症の代表的な症状として以下の3つが挙げられます。

  • (1) 胸痛:運動時や階段を昇った時などに現れます。
  • (2) 失神:多くの場合、体を 動かす時に全身に送り出す血液量が低下し、脳血流が減ってしまうために起こります。
  • (3) 心不全症状:体を動かした時の息切れや夜寝ている時に突然起こる呼吸困難(夜間発作性呼吸困難)などの症状が現れます。

何らかの症状のある大動脈弁狭窄症では突然死の危険性があります。ご高齢の方が、最近、動くと息が切れて動かなくなったというような背景にはこのような病気が潜んでいる可能性があります。

図4

大動脈弁狭窄症の診断

もっとも簡便に出来るのは聴診です。聴診では血液が狭くなった弁を通過する時に生じる収縮期雑音が聴取され 、この病気を疑うきっかけになります。そして、診断は主に心エコーによって行われます。心エコーは体の表面から超音波で心臓の状態を知ることが出来る検査で、大動脈弁の状態や心臓の機能を詳しく調べることが出来ます。

TAVI

重症大動脈弁狭窄症に対する治療方法

重度の狭窄においては弁を取り換えること(弁置換術)が唯一の治療法で、これまでは外科的大動脈弁置換術が唯一の治療法でした。2013年10月より日本でも開胸することなく、また心臓も止めることなく、カテーテルを使って人工弁を患者さんの心臓に留置する経カテーテル大動脈弁治療(TAVI)が始まりました。山口大学医学部附属病院でも全国で24番目に施設認定を受け、2014年4月よりTAVIを開始しています。また、大動脈弁狭窄症による重症心不全を発症した患者さんには積極的に大動脈弁バルーン拡張術(PTAV)を施行しており、全身状態を改善させた後、外科的大動脈弁置換術またはTAVIを行っております。次項でそれぞれの治療方法について、また当院での実績も含めて詳しく説明しております。

外科的大動脈弁置換術

人工心肺装置を使い、開胸し心臓を止めて、狭窄した弁を切除した後に、人工弁に置換します。現在は重症大動脈弁狭窄症に対し、標準的な治療となります。当院でも年間90例以上、弁置換術を施行しています。

経カテーテル大動脈弁置換術 (TAVI)

重症の大動脈弁狭窄症に対してカテーテルを使って人工弁を留置する新しい治療法で、低侵襲(治療のために患者さんの体を傷つける度合いが少ないこと)に加えて、人工心肺装置を使用しなくて済むことから、体への負担が少なく入院期間も短いのが特徴です。高齢のために体力が低下している患者さんや、何らかの疾患により外科的大動脈弁置換術が危険と判断された患者さん等が対象の治療法です。TAVIは、太ももの付け根の血管、または心臓の先端から、折りたたんだ生体弁を装着したバルーン付きのカテーテルを挿入し、心臓は拍動したまま、心臓の中まで運びます。大動脈弁の位置に到着すると、バルーンと一緒に折りたたんだ生体弁を広げて留置します。
患者さんの全身状態により2つのアプローチ法のどちらかを選択します。


図5
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経大腿アプローチ (TF)

※クリックすると再生します

経心尖部アプローチ (TA)

※クリックすると再生します

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大動脈弁バルーン拡張術 (PTAV)

狭くなった大動脈弁をバルーン(風船)で広げる治療法です。重症大動脈弁狭窄症により全身状態が悪く外科的手術などに耐えうることができない患者さんに対して行い、全身状態を改善させた後に、TAVIまたは外科的大動脈弁置換術での治療を行います。風船で拡張させるだけですので、時間が経てば、大動脈弁はまた狭窄した状態に戻ります。当院では、2012年12月から大動脈弁バルーン拡張術を開始し、現在までに約70例行っています。

当院の体制

山口大学ハートチームの結成

TAVIを施行するにあたり、ハートチームを結成しました。当院の心臓血管外科、循環器内科、麻酔科を中心に、手術室の看護師、臨床工学技士、放射線技師を含め総勢20名前後で一人の患者さんに対して治療を行っております。患者さん個々で状態が全く違いますので、それぞれの患者さんにとって最善の治療法を模索するべく毎週ハートチームで話し合いの場を設けています。

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ハイブリット手術室

平成25年9月に、血管造影を行い易い高性能の放射線投影装置を設置したハイブリット手術室の運用を開始しています。これにより精度の高いカテーテル治療が安全に行えるようになり、不測の事態にも迅速に外科的手術へ移行することが可能です。

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費用

2013年10月よりTAVIが健康保険適用となりました。また、高額療養費制度をご利用する場合、費用の負担をさらに減らすことが可能です。

健康保険を使用される場合 高額療養費制度を利用される場合
70歳未満 約1,800,000円 70歳未満 約140,000円
70歳以上 約44,400円 70歳以上 約44,400円

※上記はあくまでも概算です。消費税は含まれていません。

入院期間

手術時間はもちろんのこと入院期間も外科的治療に比べて短く、TAVI適応患者さんへの負担軽減が期待されます。
当院のTAVI適応患者さんの平均入院期間は約2週間です。

Q&A

Q 治療による痛みはありますか?

A 治療は基本的に全身麻酔で行われますので痛みを感じる事はありません。

治療後にカテーテルを挿入した足の付け根に不快感があったり、経心尖アプローチの場合には傷口の痛みが残ることがあります。また、全身麻酔の場合は術後にのどに違和感をおぼえたりすることがあります。これらは数日から一週間でおさまります。

Q 年齢が若くてもTAVIを受けられるの?

A

TAVIが開始されてからまだ10年程度しか経っておらず、それ以上の長期成績がまだ明らかではありません。そのため、現在では60~70歳程度までの患者さんであれば通常、長期成績も担保されている外科的弁置換術が標準治療となります。しかし、これまで何度か開胸手術を受けたり、手術の危険性が高い方などは、TAVIの適応が検討されます。

Q TAVIで使われる生体弁の耐久性はどれくらい?

A非臨床試験(加速耐久性試験)において5年相当の耐久性を有することが確認されています。

また、文献*3よりTAVI生体弁留置後の5年フォローが出来た88人の追跡調査において、再治療を必要とする生体弁の構造的劣化は見られなかったという報告がされております。
このことから、少なくとも5年の耐久性は確認されていると考えられます。また、ウシ心のう膜生体弁で外科的弁置換術に使用されている製品に関しては、20年の長期成績が既に報告されています。

※3:Journal of the American College of Cardiology Vol.61 No.4, 2013

Q BSE(狂牛病)は大丈夫?

A 本品がBSEの感染源となる危険性は極めて低いと考えられています。

生体弁は厳重な管理の下に飼育された米国産のウシの心のう膜を用いて製造されたものです。原材料であるウシ心のう膜は、WHO (世界保健機構)/EMA(欧州医薬品庁)により伝達性海綿状脳症(TSE)感染の危険性が低い組織に分類されています。認証されたウシ群のみから心のう膜を採取し、生物学的に安全であるように製造・滅菌しています。これまで生体弁の使用・植え込みによりTSEがヒトに感染したとの報告は受けておりません。(2013年10月現在)

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