研究業績(2007-2009年)


田村 功(大学院3年)



2009年4月3日 第61回日本産科婦人科学会学術講演会

優秀賞
「子宮内膜間質細胞(ESC)におけるTNFacyclooxygenase‐2(COX‐2),manganese superoxide dismutase(Mn‐SOD)発現に及ぼす作用とprogesteroneの遺伝子特異的な影響」




 この度、第61回日本産科婦人科学会学術講演会において、上記演題が優秀演題賞を受賞しましたので、ご報告させていただきます。

 私は、平成16年度に山口大学医学部を卒業し、県立総合医療センターでの臨床研修後、平成19年より大学院生として入局させていただきました。今までの臨床生活から一変し、“PCR”、“細胞培養”、“RNA・DNA”など聞きなれない言葉が飛び交う毎日に戸惑い、「そういえば学生時代にそんな言葉を習ったような気がするなあ。」と思うほどの貧相な知識でのスタートでした。2年間のベッドフリー生活のおかげで、なんとか学会発表できる形になり、日本産婦人科学会学術講演会に演題登録したところ、優秀演題賞候補として選ばれました。候補演題であるだけで私の中では満足でした。しかも、他の候補演題は、慶応大学から2題、群馬大学から1題選出されており、大学院2年目の私にとっては、強敵ばかりでした。しかし、杉野教授の熱のこもった御指導のおかげで、名誉ある本賞を受賞することができました。また、同時にグッドプレゼンテーション賞も受賞することもできました。

 発表内容としましては、子宮内膜におけるサイトカインとProgesteroneの遺伝子発現調節についての研究成果でした。当教室ではこれまで、サイトカインを介したCOX‐2・PGF2αを介したメカニズムが月経発来に関与していることを明らかにしてきました。また、同様にサイトカインにより誘導される活性酸素消去系が、どのように正常月経周期において子宮内膜に発現しているかも当教室のテーマであります。私の研究では、これらの遺伝子発現に対してProgesteroneがいかに妊娠成立に合目的に作用しているかをepigene:csの考えを用いて証明しました。この成果は、着床不全や反復流産といった疾患の原因解明の糸口になるのではないかと考えております。

 最後になりましたが、杉野教授をはじめ、実験の指導をしてくださった先生方、また、検体採取にご協力いただきました関連病院の先生方に、この場をお借りしてお礼申し上げます。


【杉野教授からのコメント】

田村 功君(平成16年卒、大学院3年)は、生殖内分泌グループで子宮内膜の研究を行っています。私が平成15年に日産婦学会のシンポジウムで講演した中で、説明がつかない現象がありました。サイトカインであるTNFa がNF‐kB という転写因子を介しMn‐SOD (活性酸素の消去酵素)と COX2 (プロスタグランディンを合成する酵素)の発現を増加させるのですが、プロゲステロンは、NF‐kB をブロックして COX2 発現を抑制するのですが、Mn‐SOD は影響されないのです。そこで、田村君にこの解明をテーマに与えました。当時はこの現象を説明する実験手法がありませんでしたが、田村君は新しい実験手法を用いて(苦労して実験を立ち上げてくれました)、この謎をみごと解明してくれました。この研究成果により、田村君は、今年の日本産科婦人科学会において、すべての演題からたった3題しか選ばれない最優秀演題賞を受賞しました。生殖内分泌分野では1番を取ったわけです。現在は、どこのジャーナルに投稿しようかと論文を執筆しているところです。田村君はいつも研究室で夜遅くまで実験しており、この成果も、彼のたゆまぬ努力の賜物と思います。