着任のご挨拶

 2012年9月1日付けで山口大学大学院医学研究科システム神経科学分野の教授を拝命いたしました美津島大です。私はJR大阪駅の隣、塚本駅の下町で生まれ育ちました。子供の頃、日本は70年代の高度成長期、決して良い環境とはいえず、その反動からか自然には強いあこがれを持っておりました。

 大学では獣医学科に進学し、3年の生理学実習では特に強いインパクトを得て、次第に脳の研究がしたいと思うようになりました。獣医生理学教室の門戸を叩きましたところ、4年から6年まで研究に参加させて頂くことができました。研究室では、やる気のある先輩方と日々自由闊達な議論を進めながら研究を進めましたので、この頃に自分で研究戦略を考えて、遂行するという、研究者としてとても重要な素地を得ることができました。偶然かもしれませんが、横浜市大医学部では、多くの基礎教授が学部学生の時代から研究室に出入りし、研究に没頭していたという経験を持っており、共感を得ることができました。山大医学部に来て素晴らしいと思いましたのは、放課後にopen science clubを選択できるということです。このプログラムは、将来医学を引っ張るresearch mindを持った人材を育てる、とても重要な取り組みであると感じております。

 大学院在学中にウィスコンシン大学の霊長類研究所に2年半留学する機会を頂き、帰国後は横浜市大医学部生理学教室に助手として採用されました。幸い横浜市大のマッチ率は例年かなり高いのですが、それでも基礎教室に入る医学部出身の大学院生はかなり少ない状況でした。そんな状況の中、強い志を持って大学院に入学し、研究を一緒に推進してくれたのは他学部卒の大学院生達です。もちろん就職志向の人もおりますが、理学部、農学部、心理学科を卒業した大学院生の中には、高い研究志向を持って、「医学部で研究したい」と感じている人がいます。もし、横浜市大に医学部修士課程が無く、他学部の大学院生がいなかったら、と想像すると、大学の基礎研究実績はもっと貧弱だったでしょう。山口大学は8学部を擁する、かなり大きな総合大学です。医学部にもインパクトの高い、魅力ある研究室が多いので、このメリットを生かして他学部の学生さんが自由に動ければ、人材の流動化と大学全体の活性化に繋がるのではと感じました。

 育てて下さいました先生方に報いるため、教授として一人でも多く、学問を牽引できる人材を輩出できればと考えております。初心を忘れず頑張って参りますので、今後とも、よろしくお願い申し上げます。(霜仁会会報より2012

 
略歴
昭和58年  高槻高等学校卒業
平成  2年  東京大学獣医学科卒業・獣医師
平成  5年  Wisconsin大学霊長類研究所 Honorary Fellow
平成  6年  横浜市立大学医学部生理学  助手
平成14年  横浜市立大学医学部生理学  講師
平成19年  横浜市立大学医学部生理学  准教授
平成24年  山口大学医学部システム神経科学  教授
 
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