第68回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題T) |
1.脊椎 腫瘍における術中細胞診の有用性
九州大学 整形外科
○松本 嘉寛、前田 健、播广谷勝三、土井 俊郎、岩本 幸英
【目的】 脊椎・脊髄の腫瘍性疾患の治療には、確実かつ迅速な診断が必須である。しかし、脊椎腫瘍はその解剖学的、組織学的な特徴より標本採取が難しく確定診断に難渋する例も多い。本研究では、脊椎腫瘍に対する術中細胞診の有用性について報告する。
【対象および方法】 当科にて2003年から2005年に、脊椎腫瘍(原発、転移性含む)が疑われた20例を対象とした。採取標本の術中細胞診の後、パラフィン包埋標本を用いた組織診断を行った。
【結果】 検査時平均年齢49.7才(4 -79才) 、男性11例女性9例であった。採取方法は切開生検8例、経椎弓根的椎体生検が12例。細胞診の結果、 ClassI〜Uが7例、 Vが1例、WからXが11例、1例にて細胞成分が採取不能(採取不能例)であった。組織診断にて、Class I〜V、採取不能例は全例が良性病変であり、W〜Xの10例が悪性、1例が良性病変(神経鞘腫)であった。
【考察】 細胞診にて、良悪性の鑑別が90%(18/20例)の症例で可能であり、生検におけるサンプリングエラーの減少に有用であると考えられた。
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2.より安全な脊椎脊髄手術を目指した経頭蓋電気刺激一脊髄記録モニタリング法の検討
高知大学 医学部 整形外科1 愛知医科大学学際的痛みセンター2
○田所 伸朗1、池本 竜則1、坪屋 英志1、谷口愼一郎1、午田 享宏2、谷 俊一1
脊椎・脊髄手術において、特に脊髄への接触を要する硬膜内腫瘍や強い脊髄変形を伴うOPLLなどは、脊髄への直接侵襲は手術手技上避けられないことが多く、常に脊髄損傷のリスクを兼ね備えている。このような脊髄損傷を最小限に防ぐ方法として近年、脊髄機能モニタリング併用の有用性が報告されおり、我々の施設においても、手術操作の際にリスクの高い脊椎外科手術を対象として脊髄機能モニタリングの併用を行ってきた。本研究では当科におけるモニタリング手法およびその有用性や意義について検討したうえで若干の考察を加え報告する。対象は2002年以降、脊髄損傷のリスクが危惧された手術症例50例とした。モニタリング法は麻酔薬の影響を受けにくい安定かつ運動機能を重視した方法を選択し、筋弛緩剤を併用して主に経頭蓋電気刺激一脊髄記録法を用いているが、症例によっては脊髄刺激-脊髄記録、末梢神経刺激-脊髄記録を用いて行った。モニタリングはコントロール波形の振幅を基準とし、操作に伴う波形変化と術後症状の変化を比較しその結果を検討した。
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3.術中脊髄モニタリングで警告発信を行う基準の検討 〜CMAPによるモニタリングの問題点を含めて〜
久留米大学 整形外科1 久留米大学 麻酔科2
○山田 圭1、朴 珍守1、佐藤 公昭1、横須賀公章1、五反田清和1、吉田 龍弘1、永田 見生1、原田 秀樹2
【はじめに】脊椎脊髄手術の安全のために経頭蓋電気刺激による複合筋活動電位(CMAP)による術中モニタリングは頻用されているが警告発信のための基準は確立されてない。
【対象と方法】対象は2005年6月から2007年9月までに当科で術中脊髄モニタリングを施行した65例(男性23例、40例)である。年齢は平均43歳(11〜74歳)であった。術中モニタリングは頚椎除圧手術10例、脊椎矯正固定術21例、脊髄腫瘍摘出術21例、胸椎手術11例に対しCMAPを用いて施行した。 CMAPの振幅の変化(50%以上の低下ないし消失)と術後の神経障害との関連を検討した。
【結果】片側のみのCMAPの振幅の低下を11例に認めたが術後神経障害は認めなかった。両側のCMAP振幅の消失を6例に認め、2例に術後筋力低下を認めた。片側のCMAPの消失を6例に認め2例に術後筋力低下を認めた。
【考察】CMAPの振幅が50%以上の低下した時点で警告を発信していた方が安全であると考えられた。
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4.初回手術に運動誘発電位(MEP)の電位完全消失を認め再手術にて摘出し得た頸髄々内腫瘍の一例
熊本大学大学院医学薬学研究部運動骨格病態学分野
○藤本 徹、瀬井 章、谷脇 琢也、水溜 正也
【目的】 頸髄々内腫瘍摘出術中にMEPの電位完全消失を認めた為手術中止とし、2週間の待機後摘出可能であった症例を報告する。
【症例】 12歳女児、平成19年3月6日誘因無く頚部〜右上肢の痛みと右肩挙上困難出現し初診となる。右上肢1-3/5 (MMT)下肢4/5左上肢5-/5の運動麻痺、右上肢4/10の触覚低下及び右上下肢に病的反射を認めた。 MRIはC3-4にTl低・高輝度の混在、T2高輝度の周囲に低輝度、Gdにて造影効果を示す髄内腫瘍性病変を認めた。
【手術】 術前MEPは右上下肢導出不可能で、椎弓形成的に展開し脊髄と腫瘍の剥離時に左側MEPの電位完全消失を認め、 30分経過にて回復認めなかった為手術中止とした。一過性の右上肢痛認めたが四肢麻痺悪化は無く待機中右上肢の麻樺は2-4/5に改善した。再手術でMEPは左右導出可能で腫瘍摘出術施行した。組織診は海綿状血管腫で、術後6カ月の現在右上肢の運動麻痺4/5に改善している。
【考察】 髄内腫瘍の場合一期的な摘出にこだわらず脊髄切開による減圧を図り、神経機能の回復が得られた後に摘出するのも安全性を高める上で必要な方法と考える。
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5.Knee up test−術後麻痺早期発見の為の新しい検査法-
労働者健康福祉機構総合せき損センター 整形外科
○弓削 至
【目的】 術後麻痺早期発見の為の新しい臨床検査法を提案する。
【対象】 平成18年5月16日から脊椎手術を行った123例中、 Knee up可能であった245下肢
【方法】 抜管可能となった状態で、他動的に膝立てする。検者が保持をせずとも患者が膝立て保持可能なら陽性、困難なら擬陽性、保持不可能なら陰性とした。術翌日に神経学所見をとり麻痺発生・増悪出現の有無をprospectiveに調査した。
【結果】 術後Knee up test陽性、擬陽性の235肢のうち術後麻痺出現あり4肢、なし231肢であった。陰性10肢のうち、 麻痺出現あり7肢、なし3例であり有意な傾向差を認めた(Fisher’s exact probability test P=0.0000000039)。 Knee up test陽性で麻痺出現あり0肢、なし224肢、擬陽性であり4例、なし7例、陰性であり7例、なし3例でありtestの結果と術後 麻痺出現に関し有意な相関を認めた(Spearman rank correlation P<0.001 )。
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