第68回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題V)

10.当院におけるSSIサーベイランスの試み

 

長崎労災病院 整形外科

○奥平  毅、小西 宏昭、稲冨健司郎、中河原 修、津田 圭一

 

 病院感染防止対策を効果的に推進するためには病院感染の発生率を客観的に把握し評価できる感染サーベイランスの実施が不可欠である SSI (Surgical Site Infection)は消化器外科において発生率が高いとされる一方で、脊椎外科手術ではインストルメントを併用する手術も多く、一度SSIが発生した場合は手術の目的が連せられないばかりか深刻な合併症を起こしうる。そこで当院でも脊椎手術症例でのSSIサーベイランスを実施した。

 

【対象と方法】

平成1710月より平成198月まで当院で行った脊椎手術例1110例を対象とした。術前の合併症、使用抗生剤、インストルメントの使用の有無、椎弓スペーサーやHAブロック等の骨補填剤の使用の有無、手術時間、出血量、輸血量等検討した。又、閉創直前の創培養、ドレーンの培養を行った。

 

【結果】

調査期間中のSSI発生は8例であり発生率は0.72%であった。内訳は頚椎前方固定が1例、頚椎椎弓形成術が2例インストルメント併用頚椎後方固定術が1例、腰椎除圧術が1例、インストルメント併用腰椎固定術が2例、インストルメント併用腰椎前方後方合併手術が1例であった。上記検討項目に加え文献的考察を行い報告する。

11.SSIリスクマネジメントにおける保菌調査の有用性

 

下関市立中央病院 整形外科 

 

○山下 彰久、白澤 建蔵、林  哲生

 

【目的】

脊椎術後深部感染症(Surgical SiteInfection: SSI)予防の一環として術前鼻腔培養を行っている。今回我々は脊椎手術患者の保菌状況を調査し検討したので報告する。

 

【対象】

 20074月から8月までに鼻腔培養を実施し術後8週以上の経過観察が可能であった54(男性26例、女性28)を対象とした。手術時年齢は平均68.2(23-92)、インストウルメントを使用した手術は33(61.1%)であった。

 

【結果】

検出菌は表皮ブドウ球菌:59.3%(うちMRCNS28.1% 、黄色ブドウ球菌:31.5% (うちMRSA35.3%)が多かった。薬剤耐性菌の保菌者は15(27.8%)にのぼった MRSA保菌者は周術期にハンコマイシンを予防的投与した結果明らかなSSIの発生はなかった。

 

【考察】

脊椎手術患者の3割弱が耐性菌を保菌している実態を踏まえSSI予防対策を再考する必要があると考察した。SSI予防において術前鼻腔培養の有効性が示唆された。

12.脊椎脊髄手術における消毒後の術野の細菌検出

 

長崎大学 整形外科 

 

○安達 耕一、馬場 秀夫

 

【目的】

今回我々は、術野より採取したイソジンドレープを用いて、細菌の検出を行い、術野の清潔度について検討したので報告する。

 

【対象と方法】

対象は、 200612月から20078月までに当院で施行した脊椎脊髄手術のうち、感染性疾患を除く、男性44例、女性28例の72例である。終刀時に、イソジンドレープを採取し、その皮膚側、術野側を各々血液寒天培地に貼付培養し、肉眼的にコロニーを観察した。

 

【結果】

 72例中10例に菌を検出し、ほとんどが皮膚の常在菌であった。上位頚椎、中下位頚椎後方手術において、菌の検出率が高かった。 72例中33例に、感染の危険因子となりえる合併症を認めるも、術後感染は頚髄腫瘍再発例1例のみで表在感染であった。

 

【考察】

厳密な消毒と術中操作にて、術野に暴露される細菌は、感染に問題ないレベルまで減少させることができる。ハイリスクな症例を多く含む当院の手術症例においても、短期ではあるが、深部感染を皆無にすることができた。

13.脊椎手術における創感染対策

 

益田赤十字病院 整形外科 

 

○村田 雅明

 

【目的】

当院では20059月に腰椎変性すべり症に対する術後感染例を経験した反省から、脊椎手術に対する創感染対策を講じている。本研究の目的はその妥当性を検討することである。

 

【方法】

脊椎手術後の創処置法として、出口らの方法を参考にし、術直後は創部にガーゼを置きドレープで密閉する。 翌日ドレープを剥がさずにドレーンだけを抜去する。術後4日目にドレープを剥がして創を透明の創保護材で覆い、その上からフイルムドレッシング材で被覆する。術後8日目に抜糸するまでドレッシングは剥がさない。今回は本法を施行する以前の、感染例1例を除いた腰椎変性疾患の29(前期群、平均年齢57.8)と、本法が完全に確立した最近の31(後期群、平均65.3)について、術後の創トラブルの有無、術後1過、 2過でのCRP値を比較検討した。

 

【結果およびまとめ】

前期群と後期群で術後のCRP値には差がなかったが、術後の創トラブルは前期群7 (表層感染1、深部感染0)、後期群3 (表層、深部感染とも0)と後期群で明らかに減少しており、本法の導入は有効はであったと考えられた。