第68回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題X) |
20.後腹膜アプローチにおけるステント留置による尿管損傷予防
九州大学大学院医学研究院 整形外科
○播广谷勝三、前田 健、土井 俊郎、松本 嘉寛、岩本 幸英
【はじめに】 尿管損傷は腰椎前方固定術における合併症のひとつである。後腹膜アプローチによる前方固定術に際して、尿管損傷が危倶された症例に対してステント留置を行い予防したので報告する。
【方法】 全身麻酔施行後に泌尿器科医に依頼して膀胱鏡下にアプローチ側の尿管にステントを留置した。
【症例1】 先天性側背症に対して2歳時に前後アプローチによる半椎切除を行ったものの、側背の増悪を認めたため前方矯正固定術を施行。
【症例2】 神経線維腫症1型(NFl)で腰椎部に発生した砂時計型を呈した悪性末梢神経鞘腫瘍を切除後に側背の進行を認めたため前方矯正固定術および後方矯正固定術を施行。
【症例3】 NFlに伴う脊柱側背に対して後方矯正固定術の後に前方固定術を施行。術前より巨大な髄膜瘤による左尿管の走行異常を認めた。
【考察】 再手術例や尿管の走行異常を認める症例では前方アプローチの際に尿管損傷の危険性が高いと考えられる。術前にステントを留置することで術中に尿管を触知して確認できるため、損傷防止に有効であると考えられた。 |
21.片側椎弓根スクリューを使用した頚椎2手術例の経験
南部徳洲会病院1 琉球大学 整形外科2
○金城 幸雄1、砂川 秀之1、新垣 宜貞1、米嵩 理2
頚椎椎弓根径は左右差があることが多く、太い椎弓根側の椎骨動脈は非優位側のことが多い。よって、一側の椎弓根スクリューであれば比較的安全に刺入が可能である。今回、片側椎弓根スクリューを使用して、良好な結果を得た2例を報告する。 症例1 49才、女性。 C6頚椎脱臼骨折。乗用車の自損事故で受傷。右C 7根不全麻痺がみられた。手術はC5、7右片側椎弓根スクリュー刺入rod固定、さらにwavy rod固定を併用した。術後10過の現在、軽度回旋制限と頚部つっぱり感のみで、経過良好である。症例2 25才、男性。頚椎症性頚髄症、後考変形。歩行障害、手指しびれ脱力感、Lhermitte signがみられた。画像ではC 5/6で頚髄圧迫と後考変形を認めた C4-6後考角は中間位18゜、前屈位30゜であった。手術はC3-7頚椎椎弓形成術とC4、 5、6右片側椎弓根スクリュウ-刺 入による矯正固定を施行した。術後ハローベスト併用した。術後1年の現在、手指の軽度しびれを残すのみで経過良好である。 |
22.
医療法人 菅整形外科病院
○金出 政人、宮崎 昌利、吉田 省二、 福田 泰子、三原 茂、菅 尚義
【はじめに】 私たちは、平成14年6月より胸腰椎の圧迫骨折に対して、 HAブロックを用いた経椎弓根的椎体形成術を行っている。当初は椎弓根へのアプローチを開創して行い、その後は2ccの注射筒をワーキングポートに利用して経皮的に行ってきた(西日本脊椎研究会誌Vol. 32、 No. 2 2006)。しかし、経皮的手法では、HAブロックを挿入するためのインサーターを挿入する際に、椎弓根を正確に捉えているか不安があった。
【方法】 椎弓根の正中を正確に捉えるために、まず局所麻酔下にガイドピンを経皮的に椎弓根に挿入し、 CT撮影(ガイドピンに沿った横断像+椎弓根冠状断像)を行った。その後手術室に移動し、全身麻酔下にガイドピンの挿入方向の微調整を自作の器械を用いて行い、椎弓根の正中を捉えた。
【結果と考察】 本手法によって、エアドリルは使わず、経皮的にダイレ一夕-を挿入後、インサーターを椎弓根内にスムーズに打ち込むことが可能となった。結果、手術時間も約20分間短縮(手術時間約45分)され、骨粗鬆症患者にもより安全に椎体形成術が行えるようになった。
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23.脊椎内視鏡下手術におけるハイビジョンカメラの有用性
福山医療センター 整形外科
○甲斐 信生、松下 具敬、中山 和弘、川上 直明
当院では2007年6月よりハイビジョンカメラとショートスコープを導入し、脊椎内視鏡画像が格段に改善した。ハイビジョンカメラ導入の効果を検討した。
【対象】 ハイビジョンカメラ導入前後にMEPD法を施行した各13例を対象とした。導入前群は男性10例、女性3例、平均年齢66.7歳、導入後群は男性11例、女性2例、平均年齢69.2歳であった。手術時間、術中出血量、合併症について検討した。
【結果】 導入前群の手術時間は1椎間あたり平均103分、出血量は平均55mlであった。導入後群は平均131分、平均25mlであったが、対側除圧操作時間は短縮していた。合併症は導入後群で1例硬膜損傷を認めた。
【考察】 従来のMETRx lCCDインテグレータ-では38万画素であったが、導入したStrykerll88HDカメラでは3CCDで130万画素であり顕微鏡視に近い画像が得られる。あらゆる脊椎内視鏡下手術において安全性の向上につながるが、特に片側進入対側除圧時に有用であった。 |
24.圧迫骨折による遅発性脊髄麻痔に対する円筒形レトラクター(TR)を用いた顕微鏡下片側進入広汎除圧術について
医療法人 菅整形外科病院
○菅 尚義、宮崎 昌利、吉田 省二、福田 泰子、三原 茂
高齢者の圧迫骨折による遅発性脊髄麻痺に対して、金田デバイスなどによる前方除圧固定や、後方除圧固定あるいは脊椎短縮術などがおこなわれている。しかし高齢や内科的合併症のために大きい手術は困難とされ、車いす生活を余儀なくされることもある。また固定術まで必要か?と考えさせられる症例も見られる。我々はこういう症例に対して、円筒形レトラクター TR を用いた顕微鏡下片側進入広汎除圧術を施行し良好な結果を得ている。 TRは径17mmで手術創は2cm以下であり、後方支持組織を損傷することなく、脊髄の後方壁を除圧する事で脊髄を後方に逃がす。翌日起床可能である。術後、コルセットの使用、骨粗鬆症の適切な治療を注意深くおこなう。現在4例に行い2例は歩行距離の改善、後の2例は歩行不能から杖歩行可能となった。低侵襲で隣接椎体に対する影響は皆無であり、高齢者の遅発性脊髄麻痺に対してひとつの手術的選択肢と考えている。 |