第68回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題Y)

25.頚椎椎弓形成術に際して椎骨動脈損傷が危惧された頚髄症の一例

 

国立病院機構九州医療センター 整形外科 

 

○寺田 和正、小原 伸夫、宮崎  清、今村 寿宏、安原 隆寛、宮原 寿明

 

 あらゆる頚椎手術において椎骨動脈(以下VA)の損傷を回避することはきわめて重要である。特にMagerl法における外側環軸関節transarticular screwや頚椎のpedicle screwを選択する場合には、術前のVA評価は必須事項である。 VAの径の左右差やその走行には、かなりのvariationが存在することが報告されている。 VAの走行異常としてhigh riding VAはよく知られているが、そのほかにもVAが脊柱管内や椎体内に迷入することもあり、注意を要する。一方、進行性の頚髄症に対しては、近年、椎弓形成術がさかんに行われている。 VAを内包する左右の横突孔は、通常、脊柱管の腹側よりも前方に位置するために椎弓形成術の側溝作製の際に、椎骨動脈を損傷する可能性は少ない。しかしながら、今回、我々は、58歳、男性の頚髄症で、拡張した右椎骨動脈がC6椎体レベルで後内側に急峻なループを形成し、側溝形成に際して椎骨動脈損傷が危惧されたまれな一例を経験したので報告する。

26.環軸椎固定術(Magerl)における合併症回避の為の術前・術中の工夫

 

鹿児島脊椎脊髄研究班

鹿児島赤十字病院 整形外科1

鹿児島大学大学院

運動機能修復学講座 整形外科学2 

 

○田邊  史1、武冨 榮二1、砂原 伸彦1、恒吉 康弘1、山元 拓哉2、石堂 康弘2、井尻 幸成2、米  和徳2、小宮 節郎2

 

【はじめに】

当院では、環軸椎亜脱臼に対し、整復性であればMagerl & Brooks法を行っている。今回、われわれは、3D-CT再構築倭(以下CT)を術前に行い、術中体位などの工夫により本法を安全に行うことができたので報告する。

 

【対象】

 20017月から20073月まで本法を予定した52(6例、女46例、平均年齢61.5)を対象とした。基礎疾患は、 RA42例、特発性6例、外傷性3例、 Osodontoideum l例である。

 

【方法】

術前CTにて、椎骨動脈(以下VA) 、軸椎椎弓根形態を検討した。手術はジャクソンテーブルを用い、透視下に徒手的整復が可能であることを確認し、ガイドを用い経皮的にスクリューを刺大した。術後CTにて、スクリュー逸脱、合併症の検討を行った。

 

【結果】

術前CTで、 high riding VA 5例、軸椎椎弓根狭小4例を認め、本法による スクリュー刺 入が危険(8;15.4%)と判断し、術式を変更した。術後CTでは、 Magerl89本中、スクリュー逸脱は4(4.5%)に認めたが、神経・血管損傷などの合併症は認めなかった。

 

【まとめ】

術前CTにより環軸椎の3次元形態が正確に再現され、術中体位、操作の工夫により、 Magerl法を安全に施行することができ、有用な術式であると考えられた。

27.上位頚椎手術における椎骨動脈走行異常の検討

 

長崎大学 整形外科 

 

馬場 秀夫、安達 耕一

 

【はじめに】

上位頚椎手術において椎骨動脈損傷を回避するため術前に椎骨動脈の走行を把握しておくことは極めて大切である。上位頚椎手術に対し我々は術前に三次元CT血管造影法(以下3D-CTA) MR Angio.を行い、椎骨動脈の走行異常を確認している。今回当院の上位頚椎手術における椎骨動脈走行異常を検討したので報告する。

 

【対象と方法】

 20044月以降当院で上位頚椎手術を行う上で術前に3D-CTAMRAngio.を行った29例を対象とした。男性10例、女性19例で年齢は8歳〜81(平均64.3)であった。原因疾患は環軸関節亜脱臼:21例、頚髄腫瘍: 5例、軸椎骨折: 2例、アテトーゼ型脳性麻痺: 1例であった。手術方法は検査中に軽快した1例を除き、後頭骨頚椎後方固定術: 18例、環軸関節後方固定術:4例、その他の頚椎後方固定術: 3例、脊髄腫瘍摘出術: 2例、椎弓形成術: 1例であった。これらの症例について3D-CTA MRAngio.を行い、椎骨動脈の走行異常について検討した。

 

【結果】

椎骨動脈の骨外走行異常は両側例1例を含む4(14%)であった。椎骨動脈の骨内走行異常はhigh riding VA5例に認めた。椎骨動脈の左右差は軽度のものも含めると14(48%)に存在した。

 

【まとめ】

上位頸椎手術において椎骨動脈損傷を回避するため術前に3D-CTA MRAngio.を行うことは有用であった。

28術前MR AngioとのFusion 3D-CT画像を用いた椎骨動脈の走行確認

 

熊本整形外科病院 整形外科1、放射線科2 

 

○平川  敬1、栄  輝巳1、内田  仁1、 下村  修2

 

 当院では環軸椎亜脱臼の症例でAAS単独例はMagerl法にて整復固定術を行っているが、外側環軸椎関節にスクリューを挿入時、椎骨動脈の走行異常が問題となる。 Magerl法施行時の椎骨動脈損傷は2.4%5.8%に認めるとの報告もあり、事前に椎骨動脈と環軸椎との関係を十分に把握しなければならない。以前はAngio CTにて確認を行っていたが、義歯の影響や血管と骨組織同時の3D-CT化が困難であり走行の把握が容易でなかった。本年四月より最新のワークステーションを用いて椎骨動脈MR Angio画像と頚椎単純CT画像のFusion画像を作成し、術前のスクリュ一刺 入のプランを立てている。本年四月以降Magerl法にて固定を行った症例は5例で、そのうち1例は椎骨動脈とスクリュ一利入部の重なりを認めスクリューを片側1本のみとした。 MR AngioとのFusion3D-CT画像は侵襲が少なく術前に3次元的な椎骨動脈の走行を把握することが可能であり、術前プランを立てる上で非常に有用であると考えられた。

 

29.頚椎椎弓根スクリウ刺人の工夫

 

九州厚生年金病院 整形外科 

 

○土屋 邦喜、坂本  央、冨重  治、 川村 秀哉

 

 頚椎椎弓根スクリウはその強固な固定性から近年適応が拡大しているが、最大の合併症は椎骨動脈損傷である。頚椎椎弓根スクリウの刺大法は鐙らによりほぼ確立されているが、実際の適応では変形性変化による解剖学的ランドマークの変形や椎弓根の硬化、筋組織の抵抗等で刺人に苦慮する場合があり、正確な刺入は実際には必ずしも容易ではない。

 

【対象および方法】

現在までにC3-C6椎弓根スクリウを17例 82本使用した。主たる適応は透析性脊椎疾患であった。これらのスクリウに関しスクリウの逸脱率、逸脱の原因、および対策を検討した。

 

【結果】

 Minor violation1214% Major violation71.5%に認めた。重篤な神経血管障害は経験しなかった。

 

【考察】

 C3C4では外側逸脱が特に多く、スリーブ等を用い筋層を貫通する方が外側逸脱は起こりにくいようであった。また現在メーカーより供給されるプローブにも種々の問題点があり、望ましいプローブの形態等も含め頚椎椎弓根スクリウ刺 入における安全な手技に関し考察した。

 

30.椎弓根スクリュー刺入における術中イメージの使い方の工夫

 

愛媛大学医学部 運動器学(整形外科)

 

○森野 忠夫、尾形 直則、鴨川 淳二、日野 雅之、山本 晴康

 

 難易度の高い椎弓根スクリュー刺入における、イメージの使用方法の工夫について報告する。回旋を伴う胸椎・腰椎の椎弓根スクリュー刺入では刺入目的の椎体に対してイメージ前後像を棘突起が椎体中央に位置し、椎体上線が1本の線になる状態に調整する。椎弓根像の外側 縁からストレートのブローベを刺入し、内側方向は術前CTでの計測角度に沿って刺入する。椎弓根から椎体に入る部分の予定の深さで椎弓根像の内縁に達していれば予定通りの刺入であり、椎弓根の上下緑は常に見えているので穿孔することはない。頚椎の椎弓根スクリュ一刺入は椎弓根の方向にイメージ前後像を作成した状態で行う。全身麻酔後にpositioningを行う際に、目的とする椎体の椎弓根の方向にイメージをsetできるかどうかを確認しておく。通常はイメージを左右に45。傾けることによって椎弓根が楕円状に観察できる。この状態でストレートのブローベを用いて、椎弓根の方向で先端を椎弓根の内縁を滑らせるようにholeを作成すれば、内側、外側、上下のいずれにも穿孔しないスクリュー刺入が可能である。

 

31.側面イメージ不可な部位への椎弓根スクリューの刺入結果

 

荒尾市民病院 整形外科

 

○前田 勇一、清家 一郎、山部聡一郎

 

【目的】

椎弓根スクリューの刺入に際して、2方向のイメージ像は欠かせない。しかし、一般的な体格の方でも、 Tlなどでは側面像が見えないことが多い。我々は、この条件におけるスクリュー刺入結果を調べた。

 

【対象】

 C7 Tlへの椎弓根スクリューを施行した16椎弓根中10椎弓根で側面イメージ像が見えなかった。

 

【結果】

 2/10椎弓根で、スクリューの椎体外への穿破が生じた。穿破部位は各々椎間板内と椎体外であった。

 

【考察】

 C7 Tlには椎骨動脈の通過が無く、且つ椎弓根径も他の頸椎より大きい。このためスクリュー刺入行為は、C6上位より比較的容易である。しかし、側面イメージ不可な例では、椎体外への穿破が生じた。穿破予防の対応は、綿密な術前計画をたてた後にスクリュー刺入を行うことと術中のスクリュー刺入確認に際し、椎弓根部の穿破のみでなく椎体外への穿被の可能性も念頭に入れておくことである。

 

32.ナビゲーションシステムを併用して掻爬術を行った第2頚椎椎弓根部類骨骨腫の一例

 

鳥取大学医学部整形外科1

鳥取赤十字病院整形外科2

吉田病院整形外科3 

 

○谷田  敦1、永島 英樹1、山根 弘次2、西畑 貴子3、楠城 誉朗1、土海 敏幸1、豊島 良太1

 

【症例】

12歳女性。 9か月前に誘因なく後頭部〜後頚部痛が生じた。夜間に痛みが増悪し睡眠に障害を生じるようになったために当科紹介となった。 CTで右C2椎弓根部にnidusと思われる像を含んだ腫瘍を認め、内側と尾側の骨皮質が菲薄化し膨隆していた。脊髄、神経根、椎骨動脈損傷を回避するためにナビゲーションシステムを併用して手術を行った。センサーのついたブローベで方向を確認しながら、ダイヤモンドバーを用いて掘削したのちnidusを掻爬した。掻爬した範囲もブローベで確認した。病理診断は類骨骨腫であった。術後のCTnidusが十分掻爬されていることが確認できた。術後14か月時点で、疼痛は軽減している。

 

33.脊椎外科領域におけるNavigation Systemの有用性

 

岡山大学 整形外科

 

○中西 一夫、田中 雅人、三澤 治夫 

 

脊椎外科領域にもnavigation systemが臨床応用されてきた。椎弓根スクリュー(以下PS)による固定術は、強固な内固定が得られるが神経血管損傷のリスクを伴う。今回、当院でnavigation systemを用いて手術を行った40例についてその有用性を検討した。疾患の内訳は、側腎症21例、環軸椎亜脱臼7例、後縦靭帯骨化症4例、その他8例であった。合計394本のPSを刺入し、神経血管合併症はなく、全例強固な内固定が得られた。根尾の分類でgrade2以上の完全逸脱は394本中18(4.6%)であった。外側に12本、内側に6本逸脱し、レジストレーションを行った椎体で7本、行っていない椎体で11本逸脱していた。頚椎4本、胸椎13本、腰椎1本逸脱し、疾患別では側彎症が最も多く11本逸脱していたが、側彎症だけに限っては292本中11(3.8%)の逸脱率であった。脊髄の偏位や椎弓根の非薄化などによりPSの刺入が比較的困難な側彎症においてもnavigation systemは有用であると考える。

 

34.ナビゲーションシステムを使用した頚椎後方instrumentation手術のリスクマネージメント

 

高知医療センター 整形外科

 

○時岡 孝光、土井 英之

 

 CTbased navigation system (ナビと略)下に施行した頚椎後方手術でのscrew刺人の正確性を調査し、誤刺を回避させるための対策を検討した。対象は32例で、病変高位は上位頚椎が14例、中下位頚椎が18例で、疾患は外傷10例、頚髄症8例、非外傷性環軸関節亜脱臼9例、腫瘍5例であった。手術は椎弓根スクリュー固定(以下PS) 18例、Magerl法が11例、C1/2PS固定4例であり、そのうち4例は外側塊スクリューあるいはPSとのHybridを行った。これらをCTで術後評価した。

 

【結果】

 Cl/2固定術の14例中2例はhighriding VAがあり、Magerl11例のうち1例はVAの突出で片側のscrewが刺入不能であったが、他は正確に刺入されていた。C2-C7P S108本刺入し、9(8.3%)が逸脱していた。その他外側塊、椎弓スクリューに逸脱はなかった。また最近1年間の11例ではP Sの逸脱はなかった。小脳梗塞を2例認めた。

 

【考察】

術前にCTMRAVAの走行と椎根の形態を評価し、P SMagerlが危険と判断すれば外側塊スクリュー、椎弓スクリューとのHybridも検討する。また、正確に]線透視し、刺入角度に細心の注意を払うことで刺入精度を向上できる。

 

35.頚椎スクリュー刺人における術中CTガイドの役割について

 

国立病院機構岡山医療センター 整形外科1

岡山赤十字病院 整形外科2 

 

○竹内 一裕1、中原進之介1、高橋 雅也1、山内 太郎1、荒瀧 慎也1、高田 英一2 

 

術中3D-CTガイド下の頚椎スクリュー刺入について検討を加えた。対象は、3D-CT導入からNavigationSystem導入後の25例で、術中3D-CT使用群6例、3D-CT+ Navigation19例である。検討項目は、 @術前計画、 A術中評価とB術後画像評価よりなり、術中の手技変更と画像支援システムの役割に注目した。また、通常Navigation Systemを用いない術者との術前計画の違いについても検討した。まずCT使用群6例では、スクリュー刺人前にガイドピン設置の確認を行った。その結果2例において、スクリュー刺入の断念または手術法の変更となった。またNavigation19例では、entry pointdirectionを確認の上、スクリュー刺入へと進む。術前評価で関節面もしくは椎弓根の不整のない症例では、もとより問題なくスクリュー刺入可能であった。また、RAや透析による骨破壊、骨折やCPによる関節症変化の強い9例では、安全手術のために3 D-CT+ Navigatiionは特に有用であったが、それでも4例には術中変更があった。

 

36.Iso-C3Dによる術中ナビゲーションを使用した高齢者頚髄損傷の治療成績

 

神戸赤十字病院 整形外科 

 

     杉本 佳久、伊藤 康夫、長谷川康裕、中後 貴江、矢形 幸久、塩崎 泰之、下川 哲哉、馬ア 哲朗

 

【はじめに】

当院で治療した頚髄損傷患者について, 70歳以上の高齢者(70<)70歳未満の者(70>)とで比較を行った。

 

【対象および方法】

 87例の頚髄損傷患者を対象とした 70<群は21例で,受傷時平均年齢は78(71歳〜89)であり, 8例にinstrumentationを施行し, 9例に椎弓形成術を施行した。

 

【結果】

 70<群においては, Frankel分類は受傷時gradeA, B11, gradeC, D10例であり,最終調査時に1段階以上の改善を認めた症例は21例中8(38%)であった(70>群で1段階以上の改善は59%) 70<群では骨粗鬆症を有する症例が多く,強固な固定性を獲得するためにpedicle screw14,lateral mass screw4本刺入した。 screw, Iso-C3Dを用いたナビゲーション下に挿入し2mm以上逸脱したscrew0本であった。

 

【考察】

高齢者であっても1so-C3Dを用いたナビゲーション下にscrewが安全に挿入されており,早期のリハビリを開始する上で有用であった。