第69回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題V)

14.腰痛評価法の使用動向調査

 

長崎労災病院整形外科 

 

森本忠嗣(もりもとただつぐ)、小西宏昭、稲富健司郎、奥平 毅、山根宏敏、津田圭一

 

【目的】近年の本邦整形外科の腰痛評価法の使用動向を調査すること。

 

【対象・方法】 2000-2008年の日本脊椎脊髄病学会雑誌に掲載された抄録から、腰痛関連研究における腰痛評価法を調査した。対象抄録は899(手術例692題、病態評価などの手術以外207)であったJOAスコア以外の腰痛評価法は、痛みの評価、機能評価、心理的評価に大別した。

 

【結果】 JOAスコア69.2%、痛みの評価41%、機能評価13.6%、心理的評価1. 6%であった。比較的頻度の高い評価法はVAS16. 2%、腰痛の有無9.3%、鎮痛剤使用状況5.7% SF364. 9% RMDQ4. 9%であった。

 

【考察】高橋らの1989-1998年での検討ではJOAスコア97.6% VASl.0%であり、近年のJOAスコア以外の腰痛評価法の増加が明らかであった。その中身は痔痛評価自体の多様化や機能評価(QOL評価)の増加などの患者側からの評価の増加であった。一方、心理的評価は1.9%と少なく、痛みの背景へのアプローチは不足していると思われた。

 

15.SF362による腰椎術後成績の評価

 

浜脇整形外科病院l 

浜脇整形外科病院リハビリテーション科2

 

渡邊(わたなべ)裕介(ゆうすけ)1、小川貴之1、村瀬正昭1、林 義裕1、浜脇純一1、酒井かおり2、松橋 淳2、葉 清規2

 

【はじめに】術後成績評価として、JOA scoreが良く用いられていたが、今回患者立脚型のアウトカム指標として、 SF36v2を用いて術後成績を評価した。

 

【対象および方法】対象はH18. 9月〜H19.12月までに腰椎の手術加療を行った453症例のうち、 SF36のアンケートに回答のあった429(270、女159)、平均年令は男18才〜88(平均52.47)20才〜86(平均 3.89)であった。疾患別では、 LDH 145例、 LSS 168例、分離辷り24例、その他68例、SF3636項目8下位尺度、 @身体機能 Aメンタル、ヘルス B日常役割機能、身体 C日常役割機能、精神 D体の痛み E全体的健康感 F活力 G社会生活機能から構成されている。各項目が0100点で示され、 50点の国民標準値と比較できる特徴がある。

 

【結果】 @身体的健康度@BDEFの回復は、精神的健康度ACEFGの回復より早い。A退院3ケ月では、国民標準値には達していない。 B術式と回復度はあまり相関なく、年令との負の相関が見られた。

 

16.腰痛患者に対する運動療法の治療評価−Rolland-Morris Disability Questionnaire (RDQ)を用いて−

 

長崎三菱病院整形外科1 

長崎三菱病院リハビリテーション科2 

 

矢部(やべ)(よし)(ひろ)1、北原博之1、崎村幸一郎1、安達信二1、瀬良敬祐1、池田章子2、篠原晶子2

 

【目的】 Rolland-Morris Disability Questionnaire(以下RDQ)は腰痛による日常生活の障害を患者自身が評価する腰痛特異的QO L尺度である。今回われわれは腰痛患者に対する運動療法の治療評価についてRDQを用い検討したので報告する。

 

【対象と方法】腰痛患者に運動療法・生活指導を行い、 1年以上経過した患者にアンケート調査を実施した。 回収率は63.1%であり、回答した89例のVASおよびJOA scoreの日常生活の項目(以下ADL score)RDQを比較し、それぞれの相関を調査した。RDQ偏差得点は国民標準値の50点以上・未満の2群に分類した。また腰痛再発の有無でRDQ値を比較した。

 

【結果】 VASおよびADL scoreRDQ値の間に有意に相関を認めた。また腰痛再発無し群で高いRDQ値を示した。

 

【考察】 RDQは腰痛による日常生活の障害を、より患者サイドから評価することが可能であり、また従来の評価法とも高い相関を示した。

 

17.腰椎疾患初診患者における臨床症状と自己評価抑うつ尺度の検討

 

岡山大学整形外科 

 

三澤(みさわ)治夫(はるお)、田中雅人、中西一夫、越宗幸一郎、尾ア敏文

 

 慢性疼痛疾患の患者の背景として、うつが関与していることがある。我々は臨床症状とうつの関係を検討するために、腰椎疾患で外来を初診した患者に自己記入式のアンケートを施行し、罹病期間、 VASスコア、 Rolland-Morris Disability scale (R-M)、腰痛疾患JOAスコア、自己評価抑うつ尺度(SDS)について検討を行った。男性12人、女性15人、年齢は30-83(平均64)、罹病期間は1-12(平均21か月)であった SDSの回答が得られたものは27人中18人であり、 SDS50点以上であった患者は6例であった SDS50点未満を正常群、 50点以上をうつ群とすると、罹病期間は76週と230週、 JOAスコアは17.6点と11.2点、 VASスコアは4.27.7 R-M8.118.2であり、うつ群の症状は重症であった。うつがあるために症状が重症なのか、症状が重症なためうつになるのかは明らかではないが、患者の精神状態にも十分注意した診療が必要であると考える。

 

18.日本整形外科学会腰痛評価質問表(JOABPEQ)による腰椎椎間板ヘルニア治療成績評価の検討

 

山口県立総合医療センター整形外科 

 

豊田(とよだ)耕一郎(こういちろう)、椎木栄一、日 昭仁、谷川泰彦、岩永隆太、瀬戸信一朗、酒井和裕

 

 日本整形外科学会腰痛評価質問表(以下JOABPEQ)を用いて腰痛治療成績評価を行った。腰椎椎間板ヘルニア49(男性34例、女性15)を対象とした。平均年齢は48歳で、平均経過観察期間6ケ月である。 JOABPEQの経時的変化、有効率、JOA, Rolland Moris disabili ty Questionaire(以下RDQ)JOABPEQとの相関、 JOA改善率による成績良好例、不良例の比較検討した。治療後腰痛評価は1ケ月から6ケ月で経時的に上昇し、術前疼痛関連障害20-最終87点、腰椎機能障害32-84点、歩行機能障害33-90点、社会生活障害27-77点、心理的障害41- 72点に改善した。有効率は疼痛関連障害97%、腰椎機能障害87%、歩行機能障害100%、社会生活障害87%と高いが、心理的障害は60%とやや低い。歩行機能障害、心理的障害はJ OAと正の、腰椎機能障害、歩行機能障害、心理的障害はRDQと負の相関を認めた。旧JOAスコアのJOA成績良好例と不良例で社会生活障害、心理的障害で差が大きいことから、再発への不安や社会復帰への不安の解消には時間を要すると考える。

 

19.頚部脊髄症におけるADL評価法の比較:JOACMEQ vs 旧JOA

 

高知大学整形外科1 

高知大学リハビリテーション部2 

 

永野(ながの)靖典(やすのり)1、谷口慎一郎1、池本竜則1、武政龍一1、谷 俊一1、石田健司2

 

【目的】頚部脊髄症患者に対し、患者立脚型のJOACMEQと医療者側評価法の旧JOAスコアの両方で評価をおこない、その結果を比較検討した。

 

【方法】術前の頚部脊髄症患者16症例に対し両評価法を施行し、また、 ]線写真で頚椎前後屈可動域(C2-C7)を計測し検討した。

 

【結果】 JOACMEQの上肢および下肢機能関連スコアは、それぞれ旧JOAスコアの上肢機能(r=0.696)および下肢機能スコア(r=0.737)と有意な相関を示した。一方、膀胱機能関連スコアに関しては両評価法で相関性を認めなかった(r=0.354)。また、頚椎機能関連スコアは頚椎前後屈可動域(C2-C7)とは相関性を認めなかった(r=0.323)

 

【考察】膀胱機能評価については、 JOACMEQでは軽症にもかかわらず、旧JOAスコアでは「排尿時間延長」 (1)というあいまいな質問によりあやまって重症と評価され相関性が失われる傾向がある。頚椎機能については、0-C2可動性や回旋可動性も計測して相関性を調査する必要がある。

 

20.アテトーゼ型脳性麻痺に伴う頚髄症に対する椎弓形成術の治療成績

 

琉球大学整形外科 

 

(よね)(たけ) (ただし)、黒島 聡、我謝猛次、野原博和、金谷文則

 

【目的】当科におけるアテトーゼ型脳性麻痺に伴う頚髄症に対する治療成績を報告する。

 

【対象と方法】平成114月から平成203月に当科で手術を行った11例、男性7例、女性4例を対象とした。年齢は33歳から55歳、平均44歳、経過観察期間は9カ月から57カ月、平均33カ月であった。手術法は全例自家腸骨移植を用いたC3-7の椎弓形成術(正中縦割式10例、片開き式1)を施行し、術後4-9週のハローベスト固定を行った。検討項目は術前後の日整会頚髄症治療判定基準(JOAスコア) 、改善率、頚椎アライメント、頚椎可動域、合併症、 Fujiの評価について調べた。

 

【結果】 JOAスコアは術前平均7. 7点、術後平均10.1点、改善率は平均32%であった。頚椎アライメントは術前、前弯2例、直線5例、S3例、後弯1例が術後、前弯5例、直線1例、 S3例、後弯2例となった。頚椎可動域は術前平均36. 8°が術後平均26. 2°となった。 Fujiの評価では優1例、良3例、可7例、不可0例であった。