第69回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題X)

27.CTによる冠状断MPR像とMRIを用いたRA上位頚椎病変に対する評価

 

鹿児島脊椎脊髄研究班

 

永吉(ながよし)隆作(りゅうさく)、井尻幸成、武富栄二、米 和徳、山元拓哉、坂本 光、竹之内 剛、小宮節郎

 

【目的】 RA上位頚椎病変に対し、従来の単純]線による評価に加え、 CTによる冠状断MPR像での所見をもとに垂直性脱臼(VS)の評価を行なっている。これまでの検討の結果から、従来の評価では正常値を示していても、 MPR像にて何らかの後頭環軸椎関節に関節病変を呈している症例があることが判明した。今回、我々が行っているVS評価の臨床的意義をCTMRIで検討した。

 

【対象および方法】対象はRA上位頚椎病変にて手術を施行した女性58例とした。単純]線による評価に加え、冠状断MPR像による関節病変の評価を行なった MRIにて脊髄病変を評価した。 CTにおける関節病変の評価にはLarsen分類を改変したものを用いた。

 

【結果・考察】 MPR像で高度の関節病変を認めた症例を30(52%)に認め、うち10例は単純]線における評価では正常値を示していた。それらの中にはMRIで脊髄病変を呈しているものがあった。 RA上位頚椎病変の病態把握には、 CTの冠状断MPR像とMRIによる詳細な評価が重要であると思われた。

 

28.胸椎黄色靭帯骨化症と腰部脊柱管狭窄症の合併例の画像的臨床的評価

 

佐世保共済病院整形外科 

 

久我尚之(くがなおゆき)

 

【はじめに】腰部脊柱管狭窄症(LCS)は高齢者に多いが、稀に胸椎黄色靭帯骨化症(T-OLF)と合併する。今回、強い歩行障害のために手術を行ったLCS T-OLF合併例の画像的臨床的評価を行った。

 

【対象と方法】当科にて手術を施行した4例である。男3例、女1例、年齢は75才から85o 全例術前に腰椎MRIと脊髄造影CTを行った。手術は胸椎椎弓切除、腰椎部分椎弓切除を、 3例は同時に、 1例は2期的に行った。

 

【結果】術前の主訴は全例下肢痛またはしびれによる歩行障害で2例は歩行不能だった。知覚低下、筋力低下、臆反射元進をそれぞれ4例、 3例、 3例に認めた MRIでは全例にTl0LF部位の脊髄内高信号(T2強調)を認めた。術後は全例症状が改善したが2例に歩行障害が遺残した。

 

【考察】 LCS T-OLF合併例はLCS単独例と比べ歩行障害が著しかった。臆反射元進が特徴的だったが全例ではなく、馬尾神経圧迫による相殺が考えられた。画像検査では胸腰椎移行部の所見を見逃さないことが重要である。手術は胸椎腰椎同時除圧術が手術時間は長くなるものの望ましい。

 

29.脊髄腔造影を併用したCT画像バーチャルエンドスコピーを用いた腰部脊柱管内の評価

 

愛媛大学運動器学 

 

尾形(おがた)直則(なおのり)、森野忠夫、日野雅之、鴨川淳二、森 実圭、奥田俊介、山本晴康

 

 腫瘍、ヘルニア、黄色靭帯や椎間関節の肥厚(脊柱管狭窄症)などによる腰部での硬膜や神経の圧迫状態を脊柱管内から見た画像で評価する試みを行った。脊髄腔造影後にmultidetector-row CT (MDCT)を撮影し、DICOM dataworkstation上に移し、画像処理ソフトウエア(Virtual Place, AZE株式会社製)の内視鏡モードを用いて内視鏡的な画像を作成した。造影剤の高信号を反転させ、脊柱管内から造影剤のとぎれた面、すなわち神経、腫瘍(硬膜内であれば)、硬膜の内壁などが観察され、ヘルニアや脊柱管狭窄症ではくも膜下腔の狭小化として、あるいは神経の出口が描出されない状態として認識される。脊髄鏡を用いた検査に比較し、手技上も問題もなく感染などの合併症のリスクも少ない。 CTデータを再構築することにより内視鏡と同様に管腔内に視点を置き、さらにその視点を自由に操作することで、実際の脊髄鏡では困難な角度での観察も可能である。この画像診断による病態の理解や手術デザインへの応用と、限界について考察する。

 

30.転移性脊椎腫癌に対するFDG-PETの有用性

 

九州大学整形外科 

 

松本(まつもと)(よし)(ひろ)、播广谷勝三、土井俊郎、岩本幸英

 

【目的】転移性骨腫痕のスクリーニングとして骨シンチが有用であるが、その異常所見は骨代謝や血流の変化を表す間接的なものである。一方、 FDG-PET(PET)は腫癌細胞における糖代謝元進を捉える事が可能で、多くの額域の腫癌に臨床応用されている。本研究では転移性脊椎腫瘍に対するPETの有用性について検討した。

 

【対象及び方法】原発巣が明らかであり、遠隔転移の有無を検索した3(粘液型脂肪肉腫、MFH、乳癌)、他の画像診断で病変があり、原発巣検索を必要とした3例の計6例を対象とした。全例にPET及び骨シンチを施行した。骨病変の最終診断は骨生検、CTMRIなどで行った。

 

【結果】 6例中3例において、 PETのみで検出された骨病変が存在した。骨シンチ、 PETの両者で検出されたSUV (standardized uptake value)値の平均は15.8PETのみで検出された場合は5. 5であった。

 

【考察】転移性骨腫疫の早期診断としてFDG-PETは極めて有用であると考えられる。

  

31.特発性側弯症の胸椎固定術後における腰椎カーブの検討-Lenke分類を用いた国定範囲選択の有用性について-

 

鹿児島大学整形外科1

名城病院 整形外科・脊椎脊髄センター2 

 

○山元拓哉1、井尻幸成1、永吉隆作1、米 和徳1、小宮節郎1、辻 太一2、川上紀明2

 

【はじめに】思春期特発性側琴症のLenke分類は構築性カーブの選択的固定の指針として用いられが、その定義は部位に関らず矯正位で25度以上のものとしている。今回胸椎側弯症における下位国定椎の選択に関し本分類の有用性を検討した。

 

【対象】症例は19933月から20044月に名城病院で手術施行したLenke type ltype 299例で、手術時年齢は平均15.3歳。Lumbar ModifierA:59例、 B:14例、 C:26例であった。これらの術後2年でのレントゲン所見について検討した。

 

【結果】術後の腰椎カーブとL4 TiltLumbar Modifier A7.0度と2.0度、B10.5度と17.8度、 C20.7度と-15.2度とCの症例で有意に大きく、Cの症例で下位固定椎を終椎の1椎体尾側までに留めた21例のうち術後2年でL4 Tilt10°を越えていたものが11例みられた。

 

【考察】Lumbar Modifier Cの症例に対する胸椎選択的固定では腰椎カーブの自然矯正不良が懸念される。