第69回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題U) |
8.頚椎症性筋萎縮症における筋電図の有用性
広島市立安佐市民病院整形外科1 広島市立安佐市民病院神経内科2
○藤原 靖1、住田忠幸1、真鍋英喜1、小林健二1、宮内 晃1、原田 仁1、藤岡悠樹1、加藤智弘1、高澤篤之1、黒川勝己2
【はじめに】頚椎症性筋萎縮症は前根あるいは前角障害が単独あるいは複合して発症する。当科では全例後方法で、椎間孔拡大術(MCF)を併用した椎弓形成術を行っている。今回、本症における筋電図の有用性を検討した。
【対象および方法】術前筋電図検査を行った本症14例を対象とした。男10例女4例、平均年齢58歳、近位型10例遠位型4例であった。筋萎縮の範囲から予想される髄節を中心に多髄節の筋電図を記録し、障害髄節の高位診断を行った。また上肢筋のActive denervationpotential (ADP)の有無を検討した。
【結果】障害髄節は1症例あたり1.5髄節あり、複数髄節障害例が多かった。 ADPのある患者は10例13椎間に認めた。MCFにて根の絞扼所見を認めた症例は13例あり、 6例は前根と前角の混合障害と考えられた。
【考察】上肢筋萎縮の障害病態は多彩かつ複雑で除圧範囲の決定に苦慮することが多いが、筋電図検査が有用となる可能性が示唆された。
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9.脊髄症の診断における運動誘発電位測定の有用性
広島大学整形外科
○中前稔生、田中信弘、中西一義、佐々木浩文、濱崎貴彦、山田清貴、山本りさこ、泉 文一郎、越智光夫
【目的】脊髄症の診断における運動誘発電位(MEP)測定の有用性について検討したので報告する。
【方法】脊髄症を疑いMEP検査を行った800例を対象とした。MEPは頭蓋磁気刺激にて両側の小指外転筋および短母趾外転筋より導出した。また両側の尺骨神経および腔骨神経電気刺激によるF波を導出し、末梢潜時および中枢運動伝導時間(CMCT)を算出した。検査前の病名は頚髄症521例、頚椎症性筋萎縮症98例、頚椎椎間板ヘルニア62例、脊髄腫瘍51例、頚椎後縦靭帯骨化症49例、胸椎後縦靭帯骨化症6例、胸椎黄色靭帯骨化症13例であった。また10例でこれらのうち2つ以上を合併していた。
【結果】健常人と比較し687例(86%)でMEP潜時が延長し、475例(59%)でCMCTが延長していた。
【考察】変形性関節症などを合併し神経症状の把握が困難な症例や末梢神経障害との鑑別を要する症例において、MEP測定は皮質脊髄路の障害を客観的に評価できる点で有用であると考えた。
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10.頚椎症性脊髄症における神経学的所見の再検討一術中脊髄誘発電位をもちいて−
山口大学整形外科
○今城靖明、加藤圭彦、片岡秀雄、寒竹 司、鈴木秀典、田口敏彦
【目的】術中脊髄誘発電位を測定しC3/4, C4/5の単一椎間障害であった頚椎症性脊髄症(CSM)の術前神経学的所見から脊髄圧迫高位診断を再検討した。
【対象および方法】術中脊髄誘発電位から単一椎間障害と判定された34例を対象とした。C3/4椎間障害は20例で平均年齢72歳、 C4/5椎間障害は14例で平均年齢68歳であった。脊髄誘発電位は正中神経刺激、経頭蓋電気刺激、脊髄刺激で黄色靭帯から記録された。神経学的所見として臆反射は上腕二頭筋臆反射(BTR)と上腕三頭筋睡反射(TTR)、筋力は三角筋、上腕二頭筋と上腕三頭筋、知覚障害は障害範囲の上限を検討した。
【結果】 C3/4障害はBTR亢進70%、三角筋から筋力低下55%であった C4/5障害はTTR亢進84%、上腕二頭筋から筋力低下21%、上腕三頭筋から筋力低下43%で、知覚障害範囲の始まりはC6領域84%であった。
【考察】脊髄圧迫高位診断はC3/4椎間でBTR亢進、 C4/5椎間でTTR亢進が最もsensitivityが高く重要と思われた。
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11.圧迫性頸髄症における脊髄下行路の障害高位診断−下行性脊髄誘発電位の単極導出法と波形解析−
高知大学整形外科
○田所伸朗、池本竜則、谷口愼一郎、武政龍一、永野靖典、谷 俊一
【目的】 MRIで単椎間圧迫の頸髄症例において、術中に単極導出法により記録された下行性脊髄誘発電位(D-SCEP)の波形解析をおこない、圧迫高位に特徴的な波形変化を明らかにすること。
【方法】対象は索路症状を有する単椎間圧迫の頸髄症30症例である D-SCEPの単極導出法は、高電圧刺激装置を用いた経頭蓋電気刺激(TES)を左右の刺激電極に対し極性を変えて20回ずつ加え、記録は、黄靭帯または椎間板に刺大した単極針電極(関電極)と術野のできるだけ尾側の皮下に刺大した単極針電極(基準電極)でおこなった TESによりアンプが飽和しないようまず低感度で記録し、加算平均したのちに増幅した。
【結果】圧迫高位のD-SCEPはその頭側隣接椎間のD-SCEPと比較して、陰性波が有意な振幅低下(47%)と面積低下(42%)を示し、陽性波が有意な振幅増大(182%)と面積増大(392%)を示した。【考察】圧迫高位に特徴的なD-SCEPの波形変化は、陽性波の振幅増大を伴う陰性波の振幅低下と考えられる。
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12.術中脊髄モニタリングにおけるtrue positive例の神経学的予後と術中対応策の考察
久留米大学整形外科1 田中病院2 久留米大学麻酔科3
○山田 圭1、朴 珍守1、佐藤公昭1、井上英豪1、脇田 瞳1、佐々木威治1、吉田龍弘1、永田見生1、田中寿人2、原田秀樹3
【はじめに】経頭蓋電気刺激による複合筋活動電位(CMAP)による術中モニタリングのtrue positive例の神経学的予後の報告は少ない。
【対象と方法】対象は当科で脊椎脊髄手術中に脊髄モニタリングを施行した62例(男性23例、女性39例)であった。アラームポイントをCMAPの振幅の50%以上の低下とし、true positive例とその神経学的予後を調査した。
【結果】 True positive例は脊髄腫瘍4例、陳旧性C5片側脱臼1例であった。陳旧性C5片側脱臼の1例は術後3か月で、脊髄腫瘍4例中1例は術後3か月で、1例は術後1年で術前レベルまで改善していた。あとの2例中1例は術後1年でも麻痺は残存し、1例は現在術後4か月であるが麻痺は残存している。
【考察】脊髄腰痛以外ではCMAPで警告を発し、矯正操作の解除や手術操作中止・洗浄により術後の神経障害は回避されると考えられた。脊髄腫瘍では手術操作を中止しても術後神経障害が発生した例も多く、腫瘍摘出の際に薬物の併用なども考慮する余地がある。
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13.腰椎椎間板ヘルニアにおける術中S LRテストによる神経根血流量とCMAP変化
福岡大学整形外科
○高森義博
【はじめに】 SLRテストは下位腰椎椎間板ヘルニアにおいて最も重要な神経学的所見である。今回、我々は、腰椎椎間板ヘルニア手術例において、術中SLRテストを施行し、ヘルニア摘出前後での神経根血流量および神経根刺激による複合筋活動電位(CMAP)を測定し、その変化について検討した。
【対象と方法】対象は腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症状を有し、術前SLRテストが陽性であった9例とした。男性7例、女性2例。手術時平均年齢は32歳(21歳〜47歳)、罹患椎間は全例L5/Slレベルで、全例術前SLRテスト陽性であった (20°〜60° )全例に内視鏡下椎間板摘出術(MED)を施行し、術中、腹臥位にて術前SLR陽性であった角度まで患肢を下垂し、ヘルニア摘出前後での神経根血流、 CMAPを測定した。
【結果】ヘルニア摘出前の神経根血流量は、SLRテスト施行前後で有意に減少した(P=0. 0024)。 CMAPの振幅はSLRテスト施行前後で有意に低下した(P=0.0005),ヘルニア摘出後、再度SLRテストを施行し、施行前後の血流量、 CMAP振幅はいずれも有意差を認めなかった。これらの結果について考察する。
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