第70回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題T) |
1.加速度センサーを用いた膝蓋腱反射の定量化の実験経験
福岡大学整形外科1 福岡大学工学部2
○小林達樹1、有水 淳1、伊崎輝昌1、高森義博1、内藤正俊1、森山茂章2
膝蓋腱反射は簡便で安価な検査だが、その評価は多分に主観的要素が強く定量化が困難とされてきた。今回、我々は加速度計を用いた膝蓋腱反射を定量化する実験について報告する。今回は健常者を対象とし、被験者は十分な高さの椅子または机の上に両下肢を垂らした状態で座り、3軸方向の加速度計を足関節に取り付け、ハンマーの先端には叩打時の力量を測定できるセンサーが付いている。実験前に最も反射がよくみられる叩打点を決めておき、同部位を2〜3秒の感覚をおいて連続して膝蓋腱を叩打する。各叩打時の力量を計測し、同時に得られた3軸方向の加速度ベクトルを積分し、ピタゴラスの定理を用いて速度を算出した。膝蓋腱反射の定量化法については2006年に馬見塚らが同様の装置を用いた実験結果を報告している。今回我々は健常者において、叩打の回数の増加と、それによる速度・加速度の疲労性減少の有無や、叩打の力量の増加と、それに伴う速度・加速度の変化等を比較・検討したので、若干の考察を加えて報告する。
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2.側弯症診療における腹皮反射の意義
宮崎大学整形外科
○黒木浩史、猪俣尚規、久保紳一郎、濱中秀昭、花堂祥治、帖佐悦男
【目的】神経原性側弯症は必ずしも神経症状を伴わず脊柱変形が唯一の症状の場合がある。本研究の目的は脊柱側等症患者に対する腹皮反射の意義に関し検討を行うことである。
【対象と方法】平成11年から平成19年の9年間に当科側弯症外来を初診した脊柱側弯症患者のうち先天性と症候性を除く446例(男42例、女404例、平均年齢13歳3ケ月)を対象とした。以上の症例全例に腹皮反射を施行しその異常者15例(3.4の に対し頭頚部MRIを撮像した。そしてMRI異常群と正常群とでカーブパターンやCobb角の比較を行った。尚、腹皮反射は腹部上下左右4箇所に施行し左右差をもって異常と判定した。
【結果】MRIにて15例中4例(26.7%)にChiari奇形I型ないし脊髄空洞症が発見された。また異常者の4例中3例が非定型的な左胸椎カーブを呈していた。初診時Cobb角は異常群で42.3±19.40、正常群で22.1±6.80 と有意差を認めた。 【結論】腹皮反射は神経原性側萄症を発見する上で簡便に施行できる有用な診察法である。
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3.馬尾腫瘍における初期臨床症状の検討
熊本大学整形外科
○谷脇琢也、瀬井 章、藤本 徹、水溜正也
【目的】 馬尾腫瘍は日常診療の中では他の腰椎疾患として加療が行われていることも経験する。今回我々は当院における馬尾腫瘍の初発症状と初期病状の変化に注目し、早期より馬尾腫瘍を疑わせる徴候が存在しないかを検討を行った。
【対象および方法】 1995年から2007年までに当院にて手術を行った馬尾腫瘍の患者20例(男性8例、女性12例、平均年齢53.3歳)において初期症状を中心に検討した。発生高位はT12〜Llが8例、Ll〜L2が3例、L2〜L3が4例、L3〜Slが5例であった。
【結果】 馬尾腫瘍の初期症状として夜間または仰臥位で増強する腰痛、下肢痛7例と最も多かった。初期診断名はこ腰部脊柱管狭窄症8例、腰椎椎間板ヘルニア6例であった。 【考察および結論】馬尾腫瘍に特徴的な所見として夜間痛、臥位での痺痛等が報告されている。今回7例の症例で夜間痛や臥位での痺痛増悪が認められ、初発症状を詳細に検討することによって、注意深く経過観察を行うことが可能となり、結果としてMRIでの早期診断確定にいたることができると考えた。
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4.脊髄腫瘍の臨床像について
岡山医療センター整形外科
○高橋雅也、中原進之介、竹内一裕、荒瀧慎也
近年、MRIなどの画像診断技術の進歩、普及により無症状や軽微な症状で発見される脊髄腫瘍が発見されることが多くなっている。しかし、その画像検査を適切に行うためには脊髄腫瘍の病歴、症候について熟知する必要がある。今回当科で手術治療を行った脊髄腫瘍症例について、その臨床症状を中心に検討を行ったので報告する。対象は1996年1月から2008年6月までに当科で治療した脊髄腫瘍(硬膜内)61例である。内訳は男性30例、女性31例、手術時平均年齢は54.9歳であった。腫瘍は硬膜内髄外腫瘍(神経鞘腫41例、髄膜腫12例、上衣腫4例、血管芽腫1例)が58例、髄内腫瘍が3例であった。腫瘍の発生高位は頚椎レベル12例、胸椎レベル27例、腰仙椎レベル20例、多発性のものが2例であった。これらの症例について、初発症状、症状の経過、神経症状を中心に検討した。
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