第70回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題X)

24.脊髄schwannomatosisと考えられた10

 

九州大学整形外科

 

播广谷勝三(はりまやかつみ)、土井俊郎、松本嘉寛、岩本幸英

 

【目的】

多発性脊髄腫瘍を認め、schwannomatosis と考えられた症例の臨床像について検討した。

 

【対象】

1985年から2008年までに多発性脊髄腫瘍に対して観血的治療が施行され、病理組織学的検査により神経鞘腫と診断された症例のうち、schwannomatosisが疑われた10例を対象とした。男性8例、女性2例。初診時年齢は平均45.1(2173)。経過観察期間は平均121.6ケ月(12309ケ月)であった。これらの症例について臨床症状、画像所見について検討した。

 

【結果】

 2例で家族歴を認め、5例で四肢や体幹にも神経鞘腫を認めた。頚椎から仙椎まで広く分布していたが、7例で胸腰椎移行部に存在していた。10例で合計68(214)の脊髄腫瘍が認められ、合計33(18)の脊髄腫瘍が摘出されていた。残存する腫瘍はMRIによる経過観察中である。

【考察】
脊髄腫瘍例では多発例である可能性を念頭に入れておくことが必要と考えられた。特に、四肢・体幹に神経鞘腫を認める症例では重要で、多発性病変の検索や砂時計腫の描出にはMRIが有用であった。多発例では長期にわたる経過観察が重要と考えられた。
 

25.当院で経験した脊髄発生神経鞘腫の検討

 

佐賀社会保険病院整形外科 

 

田勝広(あいだかつひろ)

 

【対象と方法】

20061月から20088月までに当院受診して神経鞘腫の診断となった18(頚髄部2:胸髄部2:腰髄部14)のうち、腰髄部発生で手術を施行した12(うち2名は砂時計型、平均年齢53.8歳、男:=4:8)を対象として術前の臨床症状・神経学的所見、画像上の腫瘍発生高位と脊柱管狭窄率を測定してその関連と特徴、術後成績を検討した。

 

【結果】

腫瘍高位はL2-4の中位が多い。脊柱管占拠率は9例で90%以上と高い。11例で下肢症状を有し、そのうち9例の下肢痛痛自覚領域は、腫瘍高位に関係なく大腿後面〜下腿痛を示した。60歳以上の6例中4例では術中に頭尾方向に移動性が高く(mobile tumor)、いずれも腫瘍高位以下に狭窄率50%程度の脊柱管狭窄を合併していた。術式は腫瘍の頭尾側in-Outの神経を切断して摘出することを原則とし、手術後に遺残する神経脱落症状は認めなかった。臨床成績:JOAscoreは術前平均13.5点が術後平均25.1点となり平均改善率75.8%であった。

 

29.当科における脊髄神経鞘腫の検討

 

山口大学整形外科 

 

守屋淳詞(もりやあつ)、田口敏彦、加藤圭彦、片岡秀雄、寒竹 司、今城靖明、 鈴木秀典

 

【はじめに】神経鞘腫は脊髄腫瘍の代表的疾患であるが、我が国での脊髄神経鞘腫の多数例の報告は少ない。今回当科で治療を行った48症例の臨床像について検討したので報告する。

【対象】対象は過去15年間(1994-2008)に当科で治療を行った脊髄腫瘍90症例中、神経鞘腫と病理診断された48例を対象とした。基本的には頸椎から腰椎まですべて偏側あるいは両側の骨形成的椎弓切除術を用いて、脊柱管内外の腫瘍を可及的に摘出するようにしている。【結果】年齢は平均49.1(1081)、性別は男性23例女性25例であった。高位レベルは頚椎部が13例、胸椎部13例、腰椎部22例であった。腫瘍摘出後に当該神経のしびれが増強した症例はあったが、当該神経の脱落症状を示す症例はなかった。従来、脊髄神経鞘腫と髄膜腫の発生頻度は同程度とされていたが、我々が同時期に経験した脊髄髄膜腫は16例であり、約3倍の発生頻度であった。神経鞘腫摘出における問題点は、@脊髄腹側にある腫瘍の摘出、A砂時計型腫瘍摘出における問題、B腫瘍が脊柱管を数椎体レベル移動し得るいわゆるmobile tumorの存在、C当該神経根を切断した場合の術後神経脱落症状、C術後髄液漏の問題、D悪性化しているものや他臓器へ転移するもの、などが挙げられ、これらの問題点に対する対策について述べる。