第70回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題U) |
5.胸腰椎移行部の脊髄(硬膜内髄外)腫瘍に対する歩行負荷試験:2例報告 長崎労災病院整形外科 ○森本忠嗣、小西宏昭、稲富健司郎、奥平 毅、山根宏俊、津田圭一
安静時症状は軽度であるが、歩行負荷試験により症状の再現の得られた胸腰椎移行部の脊髄腫瘍の2例を報告する。(症例1)27歳、男性。主訴は夜間や労作時の腰痛・右下腹部痛。(症例2)43歳、男性。主訴は歩行時の右下肢痛。2例とも歩行負荷時に上記症状の再現が得られたが、神経学的所見の変化は認められなかった。2例ともTh12高位の硬膜内髄外腫瘍であり、組織診断は神経鞘腫であった。(考察)胸腰椎移行部の脊髄腫瘍は、多彩な症状を呈するため、診断に長期間を要することも稀ではない。そのため、症候の知見の集積の重要性が認識され、多数の報告があるが、その検討内容の多くは患者の記憶に頼った訴えと安静時の神経学的所見の評価である。今回の結果から、本症において歩行負荷時に症状の再現が得られることが判明した。すなわち、安静時無症状例でも歩行負荷により多様な症状が顕在化し、刻々と病態把握が可能であった。一方、歩行負荷後も神経学的所見の変化は乏しく高位診断には有用とはいえなかった。
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6.硬膜内髄外腫瘍摘出後の癒着性くも膜炎の評価−CISS画像を用いて
鹿児島大学整形外科
○河村、井尻幸成、坂本 光、米 和徳、小宮節郎
硬膜内髄外腫瘍は神経鞘腫、髄膜腫がその中心であり、これらは硬膜切開、全揃が試みられることが殆どである。大きな腫瘍では内減圧してから摘出されることもあり、術後の癒着性くも膜炎は予想される術後合併症の一つである。しかし、その症状が緩徐に進行する神経症状のため、また有効な治療法が無いため、診断も困難な疾患の一つである。最近我々は癒着性くも膜炎を疑った9症に対し、CISS(constructive interference in steady-state) MR imagingを用いて癒着性くも膜炎の診断を試みた。CISS MRIは神経根の癒着や硬膜との関係を描出するのに有効である。我々の症例を供覧し、若干の文献的考察を加えて報告する。
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久留米大学整形外科
○山田 圭、佐藤公昭、朴 珍守、脇岡 徹、井上英豪、猿渡敦子、永田見生
【目的】 脊髄腫瘍手術後に生じる神経合併症を調査しその対策を検討した。【対象と方法】対象は2003年1月から2008年10月まで当科で手術施行した52例(男24例、女28例)であった。これらの腫瘍発生部位、組織型、術後合併症について調査し対策を検討した。
【結果】 発生部位は硬膜外が1例、硬膜内髄外が26例、髄内が12例、砂時計腫が13例であった。手術は全例で椎弓形成ないし椎弓切除後に腫瘍を摘出し、2例で後方固定術を追加した。術後に筋力低下、知覚異常、痺痛などを新たに生じた症例は硬膜内髄外で10例、髄内で6例、砂時計腫で1例であった。術後に硬膜内髄外で2例に頭痛を認め、砂時計腫では痙攣・意識障害を1例、全身性痙攣を1例、頭痛1例、複視を1例に認めた。
【考察】 髄内では術後の神経合併症の発生率が高く術中モニタリングを用いた早期の神経障害の検出が重要である。また砂時計腫では大脳由来の合併症が多い傾向があり、摘出後の硬膜修復が困難な例があることも一因かもしれない。硬膜の修復法の工夫も検討したい。
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広島大学整形外科
○泉文一郎、田中信弘、藤本吉範、中西一義、佐々木浩文、山田清貴、山本りさこ、中前稔生、越智光夫
【はじめに】 当科にて脊髄腫瘍摘出術を施行した症例の治療成績を検討したので報告する。
【対象および方法】 1999年から2008年に脊髄腫瘍摘出術を施行した42名を対象とした.手術時年齢は2〜87歳(平均55歳)で,腫瘍高位は頚椎14例,胸椎18例,腰椎10例であった。病理組織診断は神経鞘腫17例,髄膜腫9例,上衣腫7例,転移性髄内腫瘍3例,星細胞腫1例,その他5例であった。この42例について,術前,術直後,最終調査時の症状とJOAスコア,術前運動誘発電位,術中脊髄モニタリングについて調査検討した。
【結果】 JOAスコアでは神経鞘腫の平均改善率は52.5%,髄膜腫は77.4%,上衣腫は12.6%であった。髄内腫瘍の手術時モニタリングではBr(E)-MsEPの評価困難な症例は術後症状の増悪を認める傾向があった。
【考察】 電気生理学的検査は脊髄腫瘍の治療に有効であったが,治療成績の向上には正確なモニタリング方法の確立が必要と思われた。
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佐田厚生会佐田病院整形外科
○藤原将巳、井口明彦、佐藤 英、秋山美緒、秋山 徹
【はじめに】 硬膜内髄外腫瘍における腫瘍摘出後の硬膜処理は、Water tightに閉鎖し、髄液漏の予防を行うのが一般的である。髄膜腫は硬膜より発生するため、硬膜付着部を処理する必要がある。従来法では腫瘍付着部の硬膜欠損が大きくと、切除後の硬膜形成や髄液漏に難渋することが多い。-一方、斎藤法は腫瘍が接している硬膜内層のみを切除し、硬膜外層を温存するため、外層を連続縫合出来、術後髄液漏などの予防に有利な方法である。
【症例】 当院で2008年6月に手術した胸髄髄膜腫で、手術時年齢は72歳と71歳女性であった。
【結果】 |