第71 回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題W)

20.頸椎椎間板ヘルニアに対するMED法の小経験

唐津赤十字病院整形外科

生田光(いくたこう)、志田原 哲、仙波英之、北村貴弘 

【はじめに】頸椎椎間板ヘルニアに対して内視鏡下ヘルニア摘出術を施行した小経験を報告する。【対象と方法】2008年4月?2009年3月の期間、当科にて手術的治療を行った頸椎椎間板ヘルニア症例5例中、後外側ヘルニアに対して内視鏡下ヘルニア摘出術(MED)を施行した3例を対象とした。全例男性であり、手術時年齢は44、59、61歳であった。羅患高位はC4/5、5/6、6/7各1例であった。【結果】全例で後方からのヘルニア摘出が可能であった。手術時間は平均110分、術中出血量は1例で硬膜外静脈叢からの出血により300mlであったが、他2例は計測不能であった。全例、術翌日に離床し、術後10?12日で退院した。全例で術直後より症状は改善した。術後3ケ月時、1例で右上肢筋力低下の残存を認めたものの全例で満足いく成績が得られていた。【考察】頚部神経根症を呈する頸椎椎間板ヘルニア例に対するMED法は有用な低侵襲手術法のひとつであると考えられた。

21.外傷性頚椎ヘルニアを合併した頚椎椎間関節亜脱臼の1例 

琉球大学整形外科 

 

米嵩 理(よねたけただし)、金谷文則

南部徳洲会病院 整形外科 
金城幸雄

 53歳男性。息子に首投げをされ後頭部を打撲した。1週間後、頚椎前屈位のまま独歩で近医を受診。単純X線像でC5の前方脱臼を認め、当院へ紹介された。当院初診時、筋力、知覚の低下は認めず、明らかな脊髄症状は認めなかった。カラー装着後の単純X線像では亜脱臼が整復されていた。MRIでC5/6頚椎ヘルニアを認め、脊髄を前方から軽度圧迫していた。CTではC5/6椎間関節は完全に整復されていた。同日、ハローベスト固定を行った。固定後も両上下肢の麻痺は認めなかった。入院後4日目、C5、6の麻突起ワイヤリング+腸骨移植による後方固定術を施行した。術後2日目、ハローベストを外した数時間後よりC7髄節以下の不全麻痺を認め、h朋Tは上腕三頭筋の筋力が右3、左0、手関節伸展が右4、左3、屈曲が右3、左2となった。MRIでC5/6椎間板ヘルニアの増大を認めたため、術後4日目、C5/6の前方除圧固定術を施行した。麻痔は徐々に改善し、術後6週、両上肢筋力はMMT 4-5、両下肢筋力はMMT5と回復し、独歩で退院となった。

22.自然縮小を認めた頚椎椎間板ヘルニアの1例

島根大学整形外科

 

柿丸裕之(かきまるひろゆき)、河野通快、松崎雅彦、内尾祐司

 

脊髄症状を呈した頸椎椎間板ヘルニア(以下CI柵が自然縮小すると共に症状が軽快した症例を報告する。【症例】45歳、男性、約2年前から誘因なく左優位の両手のしびれと左下肢の脱力感を自覚していた。症状が増悪したため約1年前に当科受診した。左上下肢はMMT4、左中指から小指、体幹、左下肢に軽度の感覚障害を認め、下肢腱反射は元進し、足clonusも認めた。JOAスコアは11点(17点法)であった。MRIではC5/C6椎間板ヘルニアを認め、C5椎体後面にupper migrationL、脊髄を高度に圧迫していた。CDHによる脊髄症と診断し、手術的治療を予定したが、しびれや歩行障害などの自覚症状の改善傾向を認めたため経過観察を行った。受診後半年のMRIではヘルニアの縮小を認め、脊髄の圧迫は軽減していた。受診後1年の現在、左手にしびれと知覚障害、下肢腱反射元進はあるが、日常生活に支障なく、JOAスコアは14点と改善した。【考察】頸椎においても椎間板の頭尾側に広がる脱出型のヘルニアでは自然縮小が期待され、脊髄症状が重度でなければまずは保存療法の適応であると考える。

23.Brown-Sequard様の症状を呈した頚椎椎間板ヘルニアの2例

山口大学大学院整形外科

 

今城靖明(いまじょうやすあき)、加藤圭彦、寒竹 司、鈴木秀典、田口敏彦

【目的】Brown-Sequard様の症状を呈した頚椎椎間板ヘルニアの2例を経験したので報告する。【症例1】85歳女性、主訴は左上肢下肢の運動麻痔、起立困難である。現病歴は平成18年項部痛出現、その後、左上下肢に筋力低下を認め起立困難となった。DTRはBTR以下両側で低下しMMTは右上下肢が正常、左三角筋以下Pであった。位置覚は両側足址で低下し、温痛覚は右頚部以下で低下し触覚は正常であった。JOAは2点であった。MRIではC3/4に椎間板ヘルニアを認め前方除圧固定術を施行した。術後6カ月で一本杖歩行可能となった。【症例2】48歳女性、主訴は左手巧緻運動障害と歩行障害である。現病歴は平成13年左肩甲上部に疫病出現、その後歩行障害を認めるようになった。DTRは左がTTR以下元進、右が正常で、MMTは右上下肢が正常、左三角筋以下Gであった。位置覚は正常、温痛覚は右上腕横側以下で低下していた。JOAは9点であった。MRIではC4/5に椎間板ヘルニアを認め、前方固定除圧術施行し術後経過良好であった。【考察】頚椎椎間板ヘルニアが原因のBrown-Sequard syndromeは非常に稀である。手術治療で予後良好とされており手術治療を第一選択とすべきである。

24.頚椎前方除圧固定術後に侵入側と反対側にHorner症候群を生じた一例

宇和島社会保険病院整形外科

 

藤田 勝(ふじたまさる)、松田芳郎、冨永康治、大西慶生、日野雅之、藤井 充

 
【症例】43歳女性 介護職員【主訴】右手のしびれ 脱力 歩行障害【既往歴】うつ(内服中) 家族歴:息子が先天性の眼瞼下垂【現病歴】2008年6月頃から右手のしびれ脱力が出現した。TTR以下の腱反射元進を認め、徐々に歩行障害出現し2009年1月 C5/6頸椎椎間板ヘルニアに対して頚椎前方除圧固定術を左側侵入で行った。術後より右眼瞼下垂、右瞳孔の縮瞳を認めたが、右顔面の発汗障害は認めなかった。眼科受診し、ネオシネジン点眼試験で散瞳と眼瞼下垂の改善を認め節前障害によるHorner症候群と診断した。症状は軽快傾向であるために経過観察中である。【考察】頚椎前方手術の際にHorner症候群が生じる頻度は0.1%と報告されているが、頚椎侵入側に生じることが一般的である。頚部交感神経節は頚長筋よりもかなり外側を走行し通常損傷することは少ないが、今回の症例では侵入側の反対側に眼瞼下垂が生じた。稀な合併症であるために文献的考察を含め報告する。