第71回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題V)

9.頸椎椎間板ヘルニアに対する顕微鏡下後方摘出術の有用性

大分整形外科病院整形外科

○大田秀樹(おおたひでき)、木田浩隆、松本佳之、森下雄一郎、フアン・ジョージ、竹光義治

【はじめに】神経根症状が主体の頸椎椎間板ヘルニアの9割以上は保存療法で改善するが、無効であれば手術療法を薦めている。手術は後方から顕微鏡下に開窓しヘルニアを切除している。【対象および方法】2005年4月から2009年3月までに後方から切除した頸椎椎間板ヘルニア20例を対象とした。男性12例、女性8例。年齢は42才から79才まで、平均52.2才であった。C4/5が1例、C5/6が8例、C6/7が7例、2レベルが4例であった。手術方法は顕微鏡下の小切開でヘルニアを切除するが、静脈叢からの出血対策がポイントとなる。術後は1週間のカラー固定としている。【結果】術前の痺痛はVAS scoreにて術前を10とすると0が16例、1が3例、2が1例であった。シビレは消失が13例、軽度残存が7例であった。ヘルニアの再発はなかった。レ線上術後の後攣変形が出現した症例もなかった。【結語】神経根症状を有する頸椎椎間板ヘルニアの後方切除術は除痛に優れ、後療法も短く有用な手術方法である。

10.頚椎椎間板ヘルニアに対する小切開での顕微鏡下後方ヘルニア摘出術

九州記念病院整形外科 

 

○吉田正一(よしだまさかず)、武内晴明、高良 健、岡山洋二

 
頚椎椎間板ヘルニアに対して、小切開での顕微鏡下後方ヘルニア摘出術を2例に施行した。脊髄の外縁よりも外側のヘルニアを適応としている。症例1は60才の男性で土木作業員。C5/6椎間孔内ヘルニアによる右上肢痛。手術は3cm皮切で椎間孔を開放し、神経根の直下から肩にかけてのヘルニアを摘出した。手術時間 2hr 30min、出血 30g。術後、右上肢痛は消失し2週で退院、4週で職場復帰した。症例2は39才の男性医師。椎間孔入口部のヘルニアによる左上肢痛。手術はC6/7間を10×15mm開窓し、神経根の腋にあったヘルニアを摘出した。皮切3cm手術時間は1時間21分、出血は極少量。術後CTでfacetは完全に温存。術後4週で職場復帰した。低侵襲で理想的な方法だが一般的ではない。その理由は、技術的難易度の高さと手術点数の低さにあると考えている。術前の詳細な計画と、静脈叢からの出血防止、無理をせずForeminotomyのみに切り替えることなどが重要である。

11.頚椎椎間板ヘルニアに対するチュブラーリトラクターを用いた顕微鏡下髄核摘出術

広島大学大学院整形外科学

 

中西一義(なかにしかずよし)、田中信弘、亀井直輔、山本りさこ、泉文一郎、越智光夫

 
【はじめに】頚椎椎間板ヘルニアに対し、我々は従来より手術用顕微鏡を用いた後方髄核摘出術を行ってきた。近年、さらなる低侵襲手術を目指しチュブラーリトラクターによる経筋間アプローチを導入したので、その治療成績について報告する。【対象と方法】2003年から現在までに手術加療を行った頚椎椎間板ヘルニア10例を対象とした(男性6例、女性4例、平均年齢49歳)。チュブラーリトラクターを設置して顕微鏡視下に椎弓を切除し髄核を摘出した。術後は手術日より歩行を許可した。田中らの頚部神経根症治療成績判定基準と、平林法に準じ算出した改善率を用いて治療成績を評価した。【結果】平均手術時間は104分、出血量は41gであった。判定基準は術前平均6.2点から術後18点に改善し、改善率は平均85%であった。また術中、術後合併症はなく、創痛のため鎮痛剤を必要とした症例はなかった。【考察】頚椎椎間板ヘルニアに対するチュブラーリトラクターを用いた顕微鏡視下髄核摘出術は、低侵襲かつ安全に髄核を摘出できる有用な手術法と考える。

12.椎間板切除を行わない内祝鏡下頚椎椎間孔拡大術(Key hole foraminotomy)の小経験

長崎大学整形外科

 

田上敦士(たがみあつし)、馬場秀夫、日浦 健、進藤 裕幸

【目的】椎間板切除を行わない内視鏡下頸椎椎間孔拡大術の治療成績を検討し報告する。【対象および方法】頚椎神経根症に対する椎間板切除を行わない内祝鏡下椎間孔拡大術を施行した14例(16椎間)を対象とした。男性10例、女性4例、手術時平均年齢は52。9歳で、手術高位はC4/5 3例、C5/6 8例、C6/7 4例、C7/Thll例であった。この14例に対し、手術時間、術中出血量、術中合併症、術前後血清CPK,CRP値、術前後田中らの頚部神経根症治療判定基準、また術後CTにて椎間関節切除量を調査した。【結果】平均手術時間は120(100〜160)分、平均術中出血量は64(少量〜400)g、術中術後合併症は特に認めなかった。田中らの判定基準は改善率81%(術前平均5。3点、術後平均17。4点)であった。平均椎間関節切除量は38%であったが、2例50%以上切除していた。【考察】頸椎椎間板ヘルニアに対する椎間板切除を行わない内視鏡下頸椎内視鏡下椎間孔拡大術は比較的安全で良好な成績が得られた。

13.頚椎椎間板ヘルニアに対する後方進入内視鏡視下ヘルニア摘出術の小経験

今給黎総合病院整形外科

 

宮口文宏(みやぐちふみひろ)

 
頚椎椎間板ヘルニアの神経根症に対しては保存的加療が第1選択であるが、保存的加療に抵抗性であったり、筋力低下をきたす場合は手術が選択される。手術方法は椎間孔拡大術や前方固定術が施行されているがその合併症として隣接椎間障害や軸性痔痛などが列挙されている。今回我々は当院でH18年以降、頚椎症性神経根症に対してMETR x一microendoscopicTdescectomy system(Medtronic Sofamor Danek社、以下MED)を用いて椎間孔形成術を施行した11例中、実際ヘルニア摘出術を施行した3例を提示する。症例は男性3例で、年齢は34,39,50歳であった。責任高位は2例はC5/6レベルで他1例はC6/7レベルであった。ヘルニアと神経根との解剖学的位置関係は3例すべてaxillary typeであった。術後経過良好にて1週間で退院した。術後平均2.5年経過しているが再発例はない。手術適応を厳格に選択し内視鏡視下手術に熟練したものが施行すれば、低侵襲で術後疾病が少なく、早期職場復帰が可能な有効な手術方法である。

14.頚部神経根症の保存的治療成績の検討

山口県立総合医療センター整形外科

豊田耕一郎(とよだこういちろう)

【はじめに】当科での頚部神経根症に対する保存的治療の治療成績について検討した。【対象、方法】過去3年間に治療し、3か月以上経過観察可能であった26例を対象とした。男性22例、女性4例、平均年齢50歳(38-64歳)であった。羅患神経根はC6:2例、C6+7:2例、C7:10例、C8:3例であり、羅患側は右13例、左13例であった。治療内容は頚椎カラー固定、消炎鎮痛剤に加えて、必要に応じて星状神経節ブロック、頚部硬膜外ブロックを行った。ブロックはペインクリニックにて行った。 検討項目として、ヘルニアか骨勅か、羅病期間、入院か外来か、休職期間、復職までに要した期間を調査し、治療成績は田中の評価法(100点法)を用いた。【結果】最終的に3例は手術を要した。保存的治療の限界についても検討して報告する。

15.80歳以上の高齢者における頚椎椎間板ヘルニアの特徴

高知大学医学部整形外科

 

谷口愼一郎(たにぐちしんいちろう)、谷 俊一、武政龍一、永野靖典、田所伸朗

 高齢者における頚椎椎間板ヘルニアの特徴を知るために、80歳以上の症例(高齢群)と50歳以下の症例(若年群)を比較検討した。【対象・方法】対象は、頚椎椎間板ヘルニアと診断され手術を施行した症例のうち高齢群21例と若年群24例である。検討項目は、JOAスコア一、脊柱管前後径、ヘルニアのレベル、脊髄前方および後方圧迫数、などである。【結果】改善率は高齢群42%、若年群70.9%であった(p〈0.01)。高齢群の平均前後径は15.1mm、最小前後径は12.9mmであった(p〉0.05)。高齢群でC34レベルより頭側にヘルニアを認めたのは40.9%であった(p〈0.001)。前方圧迫数は高齢群3.6椎間、若年群2.1椎間(p〈 0.001)、後方圧迫数は3.4椎問、0.3椎間であった(p〈0.001)。【まとめ】高齢群ではC34より上位のヘルニアの割合が多かった。ヘルニア数に差はなかったが、脊髄前方・後方圧迫数は若年群より多かった。高齢群の改善率は若年群より有意に低かった。

16.頚椎椎間板ヘルニアに対する顕微鏡下後方摘出術一術中に観察される神経根形態一

島原整形外科 西村クリニック

 

西村行政(にしむらゆきまさ)


【目的】頚椎の神経根形態については腰椎とは異なったものがあり、手術に際しては注意を要する。今回頚椎椎間板ヘルニアに対する後方摘出術時に観察された神経根形態について検討した。【対象および方法】対象は頚椎椎間板ヘルニアにて顕微鏡下後方摘出術を行った36例で、男性22例、女性14例である。ヘルニア椎間はC4/5が3例、C5/6が11例、C6/7が19例、C7/Thlが3例であった。これらにおいて、その神経根形態を検討した。【結果】椎間孔に沿って前根と後根と思われる2本の神経根がみられたものが9例、前根と後根との間に明らかな分離できる境界がみられたのが10例、後根の尾側に膨らみがみられたのが6例であった。腰椎と同様に1本の神経根にみえたのは15例であった。また、2本の根のうち尾側の根とヘルニアとの鑑別が判りにくかったのが5例であった。このように、頸椎の後方手術時に観察される神経根形態にはかなりのvariationがあり、手術時にはこのことをしっかり認識しておく必要がある。

17.頚髄症を呈した頚椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡下椎弓切除術

高松赤十字病院整形外科

 

八木省次(やぎしょうじ)、三代卓哉、小林 大、高田洋一郎、古泉智文、西岡 孝、 三橋 雅

【目的】頚椎椎間板ヘルニアによる頚髄症に対して、内視鏡下椎弓切除術を試みたので、その手技、手術成績を報告する。【手術手技】腹臥位で、後方からヘルニアの優位側から進入し、同一皮切で内視鏡下に進入側と反対側の椎弓を硬膜の拍動が得られるまで切除した。ヘルニアは摘出しなかった。【対象】2002年9月から2009年1月までに本術式を行った頚髄症を呈する頚椎椎間板ヘルニア11例で、平均年齢50.5歳(30-65歳)であった。正中ヘルニア、脊柱管狭窄を伴うものは除外した。【結果】JOA scoreの改善率は71%(43-100%)で、硬膜損傷、術後血腫などの合併症はなかった。また軸性疫病を訴える症例もなかった。【考察】頚椎椎間板ヘルニアによる頚髄症の手術は、頚椎前方固定術や広範囲の椎弓形成術が行われているが、前方からの圧迫が主因である病変に対して内視鏡下で小範囲の除圧術には異論のあるところと思われる。後側方のヘルニアに対しては、内視鏡下で椎弓切除によって、満足できる結果が得られた。本術式は適応を選べば有用な低侵襲手術になりうると思われた。

18.頚椎椎間板ヘルニアに対する経硬膜的髄核摘出術

今給黎総合病院整形外科

 

宮口文宏(みやぐちふみひろ)

 
頚椎椎間板ヘルニアの神経根症に対しては保存的加療が第1選択であるが、保存的加療に抵抗性であったり、筋力低下をきたす場合は手術が選択される。手術方法は椎間孔拡大術や前方固定術が施行されているがその合併症として隣接椎間障害や軸性痔痛などが列挙されている。今回我々は当院でH18年以降、頚椎症性神経根症に対してMETR x一microendoscopicTdescectomy system(Medtronic Sofamor Danek社、以下MED)を用いて椎間孔形成術を施行した11例中、実際ヘルニア摘出術を施行した3例を提示する。症例は男性3例で、年齢は34,39,50歳であった。責任高位は2例はC5/6レベルで他1例はC6/7レベルであった。ヘルニアと神経根との解剖学的位置関係は3例すべてaxillary typeであった。術後経過良好にて1週間で退院した。術後平均2.5年経過しているが再発例はない。手術適応を厳格に選択し内視鏡視下手術に熟練したものが施行すれば、低侵襲で術後疾病が少なく、早期職場復帰が可能な有効な手術方法である。

19.頚椎椎間板ヘルニアに伴う神経根症に対する後方からのforaminotomyと前方固定術の比較検討

岡山大学病院整形外科

杉本佳久(すぎもとよしひさ)、田中雅人、三澤治夫、中原啓行、高畑智宏、林 隆宏、塩崎泰之

【はじめに】頚椎椎間板ヘルニアによる神経根症に対する術式は、従来前方固定術が一般的であった。近年、顕微鏡もしくは内祝鏡下に後方からの除圧を試みた報告が散見されており、良好な成績が報告されている。今回、頚椎椎間板ヘルニアに対して当科で施行した前方法と後方法の成績を比較したので報告する。【対象および方法】対象は、年齢をマッチングした前方法10症例と後方法10症例で、平均年齢は57歳であった。頸椎後方法においては、内視鏡または顕微鏡下に除圧術を施行し、除圧にはエアトームまたは骨用ソノペットを使用した。頚椎前方固定術は直視下に行い、全例プレートを併用した。【結果および考察】前方法、後方法ともに術中に椎骨動脈損傷や硬膜損傷などの合併症を生じることなく安全に手術を施行可能であった。両群ともに術後感染、麻痔の悪化はなかった。頚椎後方法は、前方法と比較して短期成績は同等であった。後方法においては、固定を行わないメリットがあるが、椎間不安定性による神経症状再発などの可能性があり、今後長期フォローを行う方針である。