第72回西日本脊椎研究会  抄録 (パネルディスカッションT)

13.腰椎外側病変の臨床的検討

 

岡山医療センター整形外科 

 

○高橋雅也(たかはしまさや)、中原進之介、竹内一裕、荒瀧慎也

 

近年、 CT、 MRIなどの画像診断技術の進歩、普及により椎間孔〜外側部での神経根障害が注目されるようになってきた。一方、外側病変は適切に診断、治療が行われないと多数回手術になる可能性があり臨床的には問題となりやすい病態といわれている。
今回当科で手術治療を行った腰椎外側病変について、その臨床像を中心に検討を行ったので報告する。対象は2002年1月から2009年7月までに当科にて腰椎外側病変と診断し、骨形成的椎弓形成術を行った41例である。内訳は男性26例、女性15例、手術時平均年齢は61.7歳であった。疾患の内訳は椎間孔狭窄が11例、外側型椎間板ヘルニアが30例であった。
これらの症例について、術前診断、手術成績を検討し、診断と手術治療の問題点について考察する。

 

14.外側神経根障害に対する当科における診断と治療

 

広島市立安佐市民病院 整形外科 

 

○土井一義(どいかずよし)

 

【はじめに】腰椎外側神経根障害の診断には難渋することが多い。今回、当科で手術を行った外側神経根障害の症例の特徴を検討したので報告する。

【対象】平成19年と20年の2年間に当科で外側開窓術を施行した51例の内、椎間板ヘルニア症例を除いた27例(男10例、女17例、平均年齢69.7歳)を対象とした。罹患高位はL5/Sが13例、 L4/5が9例であった。

【方法】 ]-p、 MRI所見等を検討した。

【結果】罹患高位で患側3°以上の凹変形を10例37%に認めた。神経根傾斜角は健側平均54.4°患側平均68.6°であり、 18例で患側が健側に比べて10°以上大きく、横走化の程度が強かった。 MRI傍矢状断像で椎間孔閉塞を13例54.2%に認めた。

【考察】外側神経根障害の画像所見は多彩であり、変性に伴う側背や回旋が複合的に関与している症例が多かった。術中所見でも椎体の回旋に伴う上関節突起の陥入や椎体辺縁の骨棘や椎間板の膨隆、靱帯の変性肥厚などが様々に関与しており、画像診断は多角的に行う必要があると思われた。

 

15.腰椎外側部神経根障害に対する内視鏡下手術の治療成績

 

長崎大学整形外科 

 

○田上敦士(たがみあつし)、馬場秀夫、日浦 健、進藤裕幸

 

長崎三菱病院整形外科 
 矢部嘉浩、瀬良敬祐

 

長崎労災病院整形外科 
 小西宏昭

 

目的)腰椎外側病変に対する内視鏡下手術の治療成績を報告する。
対象及び方法)上記施行した55例のうち、術後6カ月以上経過観察可能であった41例を対象とした。男性26例、女性15例、平均年齢は59.5歳であった。これらの症例に対し、手術高位、手術時間、術中出血量、術前後JOA scoreについて調査した。

結果)手術高位はL3/4外側 3例、 L4/5外側 8例、L5/S外側 24例、L4/5外側+L3/4内側 1例、L5/S外側+L4/5内側 4例であった。平均手術時間は109分(L3/4外側 40分、 L4/5外側 101分 L5/S外側 102分)、平均術中出血量は32g、平均術前JOA scoreは11.2点、術後は26.9点であった。神経症状増悪は認めなかったが、再手術を1例で要した。
考察)初期には椎間孔出孔部で神経根を同定した後、尾側へ展開し、ヘルニアを摘出していたが、現在はsafety triangle (extra foraminal triangle)にてヘルニアを確認した後にルートを同定し、ヘルニアを摘出している。このほうに切り替えたことによりルート同定が容易となり手術時間短縮にもつながっている。
まとめ)内祝鏡下腰椎外側部手術は安全で、良好な成績であった。

 

16.腰部外側神経根障害に対する外側進入内視鏡視下除圧術を施行した治療経験

 

今給黎総合病院 鹿児島脊椎脊髄研究班 

 

○宮口文宏、中條正英、内山田桜、中村俊介、古賀公明、松永俊二、今給黎尚典

 

鹿児島大学病院 運動機能修復学講座 整形外科 
 石堂康弘、米 和徳、小宮節郎

 

鹿児島赤十字病院 整形外科 
 富永博之、武冨榮二

 

橋口整形外科 
 橋口兼久

 

南風病院 整形外科 
 鮫島浩司、川内義久

 

【はじめに】腰部外側神経根障害は下肢痛が著明にて保存的加療に抵抗する場合が多い。いざ手術となると展開困難で出血が多く、通常の開窓と比較して術野が深く解剖学的位置の把握も困難である。今回我々はH18年以降腰部外側神経根障害に対して外側進入内視鏡視下除圧術を施行した13例を経験したので報告する。

【対象】保存的加療に抵抗し、手術を施行した13例を対象とした。症例は男性7例、女性6例であり、平均手術時年齢は56.3歳であった。責任高位はL3/4 レベルで4例、L2/3、L5/Slレベルでそれぞれ3例、 L 4/5レベルで2例、 L1/2レベルで1例であった。この13例に対し、手術時間、術中出血量、術中合併症、JOA scoreを用いた手術成績から比較検討した。

【結果】平均手術時間146分、平均術中出血量98gであり、術中合併症は特に認めなかったJOA scoreは術前11.5点が術後22.3点に改善した。

【考察】手術適応を厳格に選択し内視鏡視下手術に熟練したものが施行すれば、内視鏡を用いて奥深い術野に到達し、さらに斜視鏡にて椎間孔内が確認可能であり、腰部外側神経根障害に対して有効な手術方法である。

 

17.腰椎椎間孔、外側病変に対する内視鏡下除圧術の成績−骨形成的椎弓切除術との比較

 

長崎労災病院整形外科 

 

○奥平 毅((おくだいらたけし)、小西宏昭、山根宏敏、古矢丈夫、久芳昭一、津田圭一

 

【対象】 2006年9月より2009年6月まで当院で内視鏡下除圧術(MED)を行った腰椎椎間孔外側病変の15例(男性10例 女性5例)、平均年齢54.3歳を対象とした。罹患高位はL 3/4 1例、 L4/5 2例、 L5/S IO例、 L5/6 1例であった。 1例が内視鏡下内外側開窓術を施行していた。平均経過観察期間は347.5日。その対象群として2004年4月から2009年4月まで片側骨形成的椎弓切除(OPHL)を施行した16例(男性12例、女性4例)を調査した。平均年齢65歳、罹患高位はLI/2 1例 L2/3 1例 L3/4 3例 L4/5 3例 L5/S 8例であった。平均経過観察期間606.9日

【方法】検討項目は手術時間、出血量、入院期間、 JOA score、術中術後合併症とした。

【結果】手術時間はMEDが126分、OPHL が147.3分 出血量はMED28.67g  OPHL は228.8gであった。入院期間はMED20.4日、OPHLは31.3日であった。JOAの平均改善率はMED83.5% OPHLが57.8%であった。MEDの4例、OPHLの3例に術後一過性の下肢痛増悪を認め、 OPHLの1例は下垂足となった。

【考察】 OPHLは2根障害等一度に広く病態把握が可能であるが、今回の結果では病態が絞れるのであればMEDの低侵襲性が優れ、臨床成績も良かった。

 

18.腰椎椎間板外側ヘルニアに対する骨形成的椎弓切除術の治療成績

 

山口大学大学院整形外科 

 

○今城靖明(いまじょうやすあき)、加藤圭彦、寒竹 司、鈴木秀典、田口敏彦

 

【目的】昭和62年以降、当教室では腰椎椎間板外側ヘルニアに対し一貫して骨形成的椎弓切除術を施行してきた。今回その術後成績について検討した。

【対象】術後6カ月以上経過観察可能であった56例で男35例、女21例であった。手術時年齢は平均54歳で、ヘルニア高位はL2/3 :3例、L3/4:4例、L4/5 :13例、L5/ S:35例、 L5/6 : 1例で、経過観察期間は平均44カ月であった。術式は骨形成的椎弓切除で偏側45例、両側11例であった。評価は日本整形外科腰痛疾患治療成績判定基準(以下JOA)を用いた。

【結果および考察】術前JOAscoreの平均は13点であった。 56例中3例に再手術を施行した。調査時JOA scoreの平均は24点であった。骨形成的椎弓切除術の最大の利点は、硬膜管から分枝した神経根の椎管内、椎間孔内、椎間孔外すべてにおいてその走行を確認できることである。特に原因が椎間孔外だけに絞り切れない症例に有用である。本術式は安全にヘルニア塊を摘出可能で長期成績も安定しているものと思われた。

 

19.腰椎椎間孔内外病変に対する骨形成的偏側椎弓切除術の手術成績

 

鳥取大学整形外科 

 

○楠城誉朗(なんじょうよしろう)、永島英樹、谷田 敦、土海敏幸、豊島良太

 

当院では椎間孔内外病変に対する手術方法として骨形成的偏側椎弓切除術を行ってきた。今回その手術成績について報告する。

【対象と方法】対象は1997年から2008年までに同手術を行った28例である。男性16例、女性12例で平均年齢は58.6歳(20-86歳)、平均観察期間は2年3か月(1年-7年)であった。疾患をA群:椎間孔内または外側ヘルニア(16例)とB群:椎間孔内狭窄とに分けて患者背景、病態、手術前後の腰痛疾患治療成績判定基準(旧JOA score)などを検討した。

【結果】平均年齢はA群51.9歳、B群67.5歳とA群で有意に低かった。 (P<0.05)手術椎体はA群でL3:2例 L4:6 L5:8例  B群でL5 :12例だった。旧JOAscore はA群で10.7点が22.5点にまたB群で16.3点が22.0点にどちらも有意に改善したが、術前の旧JOA scoreはA群がB群より有意に低かった。(P<0.01)術後下肢痛が残存か再発した症例はA群で1例、 B群で5例とB群で多かった。

【結論】骨形成的偏側椎弓切除術は椎間孔内または椎間孔外ヘルニアに対して良好な成績を示した。

 

20.腰椎椎間孔狭窄症の術後成績についての検討

 

熊本中央病院整形外科 

 

○森信太郎(もりしんたろう)、岡嶋啓一郎、村上直也

 

はじめに:最近のMRI画像の精度向上は腰椎外側部病変の診断、治療の一助となっている。今回我々は2006年1月から2009年8月までに明らかな外側ヘルニアをのぞく腰椎椎間孔狭窄(以下FS)で手術を行った72例について術後成績を中心とした検討を行ったので報告する。
対象: 72例(男性37例、女性35例、平均年齢69.6歳)

方法:単純]線写真、 MRIなどの画像所見と臨床症状からFSを診断し、その術式および術後経過について考察をおこなった。

結果:手術は内外開窓術2例で固定術59例、内側からの除圧のみで対処した症例が11例だった。

考察:実際にFSと診断し手術をおこなう際、一番頭を悩ませるのがdouble crush type の神経根障害をどう捉えるかである。画像所見と神経根ブロックでFSが疑われた場合、今までは多くの症例で外側までの除圧と固定術で対処してきたが、最近では症状によって内側からの除圧のみで対処する症例も増えてきている。今回はこれらの術後成績や再手術に至った症例の割合などについて検討していく。