第72回西日本脊椎研究会  抄録 (パネルディスカッションU)

26.腰椎後方椎体間固定術後の隣接椎間板変性度、可動域変化の検討

 

熊本大学 整形外科 

 

○瀬井 章(せいあきら)、藤本 徹、水溜正也、谷脇琢也、砥上若菜、中村孝幸

 

竹田医師会病院 整形外科 
 大多和聡

 

【はじめに】
自験例を用いて短期における腰椎固定術後の隣接椎間板の変性度進行の有無、可動域の変化を検討したので報告する。

【方法】
平成15年8月より平成20年10月までに施行した経椎間孔的椎体間固定術18例において、固定椎間隣接椎間板のMRIによる椎間板変性度(Schneider分類)と]線機能写での椎間板可動域の術前及び最終調査時の変化を調査した。

【結果】
男性5名女性14名、平均追跡期間は33.1ケ月であった。固定椎間はL3/4/5:2名 L3/4 :1名、L4/5:14名、L5/S1:1名であった。上位隣接椎間板18椎間では術前変性度はintermediate:10、marked: 8、椎間板可動域は平均6.5度であった。最終調査時intermediate、 markedのうちそれぞれ1椎間において1段階ずつ変性が進行していた。最終調査時の平均椎間板可動域は7.6度であった。下位隣接椎間板16椎間では術前変性度はnormal: 2、intermediate: 6、marked: 6、 sever: 4、椎間板可動域は平均5.6度であった。最終調査時normalの1椎間がintermediateに進行していた。最終調査時の平均椎間板可動域は7.6度であった。

【考察】
腰椎固定術後の隣接椎間板障害は比較的早期より進行している可能性があると考えられる。

 

27.Instrumentationを用いた腰椎単椎間後方手術後の隣接椎間評価

 

*大分整形外科病院 **自衛隊別府病院 

 

○*森下雄一郎(もりしたゆういちろう)、*大田秀樹、*松本佳之、*ファンジョージ、**巽 政人、*竹光義治、*木田浩隆

 

はじめに
当院におけるinstrumentationを用いた腰椎後方手術後の腰椎隣接椎間を評価した。

対象と方法
過去2年以上のfollow-upが可能であったL4 - 5単椎間後方手術45例を対象とし、手術時平均61.8歳であった。 24例がTLIFによるrigid fusion (TLIF群:64.1歳)、 21例がSSCS systemを用いたnon-fusion stabilization (SSCS群: 59.1歳)を施行した。臨床評価は平林のrecovery ratio で、隣接椎間評価は術後2週と最終評価時のMRIを腰椎椎間板の輝度と椎間板高を基に5 -point scaleで評価し、 (最終評価時のpoint)−(術後2週時のpoint)で椎間板の変性度をscalingLた。また、各椎間の運動力学的分布: (各椎間angular mobility)× 100/(腰椎total angular mobility)(%)を術前と最終評価時の動態]-Pで評価した。

結果
両群とも手術時年齢、 follow-up期間に有意差は認めなかった。 Recovery ratioは有意にSSCS群が高く、椎間板は各椎間ともPLIF群の変性変化が有意に強かった。術前後の各椎間運動力学的分布変化は、両群とも固定椎間のL4 - 5は有意な可動低下を認め、他椎間ではPLIF群のL2-3およびL 3 - 4椎間のみで有意な可動増加を認めた。

まとめ
SSCS systemを用いたnon-fusion stabilization は、術後の隣接腰椎椎間への運動力学的影響は少なく、 rigid fusionと比較すると隣接椎間障害が少ないことが示唆された。

 

28.腰椎変性すべり症に対して施行したGraf制動術の長期成績

 

東京慈恵会医科大学 整形外科 

 

○木田吉城(きだよしくに)、丸毛啓史

 

大分整形外科病院 
 大田秀樹、木田浩隆

 

【はじめに】腰椎変性疾患に対してGraf制動術が選択される機会は少ない。今回われわれはGraf制動術後、 10年以上経過した腰椎の変性すべり症に対し、隣接椎間障害を中心に検討し、 Graf制動術の存在意義について考察する。

【対象】腰椎変性疾患に対して、当院で行ったGraf制動術のうち10年以上経過した68例中、腰椎変性すべり症31例(全例I度)の]線、 CTおよび治療成績を検討した。男性9例、女性22例、手術時平均年齢は59.8歳であった。

【結果】 31例中、隣接椎間障害は15例(48.4%)に認められた。臨床治療成績では術前平均JOA scoreは13.1点、最終観察時平均JOA scoreは22.2点で改善率は60.9%であった。

【考察】以前われわれが報告した腰椎変性疾患に対する10年以上経過したGraf制動術の隣接椎間障害の結果は35.3%であり固定術と比較すると少ない傾向にあった。しかし変性すべり症に限定すると48.4%でありGraf制動術の隣接椎間障害が有意に少ないとは言えなかった。

 

29.腰椎PLIF手術にネスプロンテープを用いた頭側隣接椎間制動術の成績

 

熊本市民病院整形外科 

 

○相良孝昭(さがらたかあき)、赤崎幸二、木村 真、福本 巧、時吉聡介、渡邉弘之、中原潤之輔、上原悠輔

 

【目的】腰椎PLIF術後の頭側隣接椎間障害を予防するため、 cross link connectorと頭側棘突起間をネスプロンテープで締結する制動術を行っている。今回その短期成績について報告する。

【対象と方法】 2005年12月から腰椎変性すべり症に対しPLIF手術と上記制動術を行い、1年以上経過観察可能であった9例(男性3例、女性6例)を対象とした。固定椎間数は1椎間6例、 2椎間2例、 3椎間1例であった。手術時平均年齢は62.4歳、経過観察期間は27.2ケ月であった。レントゲンとJOA scoreによる評価を行った。

【結果】 JOA scoreは術前12.7点から26.3点に改善していた。隣接椎間板高は術前9.0mm から術後8.5mm、隣接椎間局所前彎角が術前7.6度から術後7.3度、腰椎前彎角は術前40.9度から術後37度であった。 3例に2 - 3mmの後方すべりを生じた。

【考察】本術式は安全で簡便な方法であり、隣接椎間障害に有用な手技となりうると思われた。

 

30.固定隣接高位再手術率からみた腰椎1椎間後方除圧固定+固定隣接高位除圧術併用の検討

 

総合せき損センター整形外科 

 

○森 英治(もりえいじ)、芝啓一郎、植田尊善、前田 健、弓削 至、河野 修、高尾恒彰、坂井宏旭、宿利知之、久保勝裕、益田宗彰、林 哲生、樽角清志

 

腰椎変性疾患に対し後方固定術を適応とする際、脊柱管狭窄椎間が複数ある場合固定範囲に苦慮することが多く、除圧固定は1椎間としその隣接高位においては除圧術のみ施行することも多い。しかしこの固定隣接除圧高位での再障害が稀でもないため、固定隣接除圧術を併用しなかった群との間で再手術頻度を指標として固定隣接障害について検討した。対象はpedicle screw併用後方除圧固定術を施行した腰椎変性すべり症(DS)、腰部脊柱管狭窄症(LCS)とした。 1椎間固定+固定隣接高位除圧術施行119例(DS ; 75、LCS;44)中、固定隣接除圧高位での再手術例は6例(5.0%)であった。 1椎間除圧固定術のみ施行658例(DS;475、LCS;183)中、固定隣接高位での再手術例は55例(8.4%)であり、 2椎間除圧固定術のみ施行374例(DS:227, LCS ; 147)では同様に再手術例は34例(9.1%)であった。各群間における固定隣接高位再手術頻度には有意差はみられなかった。

 

31.腰椎固定術後の上位隣接障害〜前方・後方固定の比較〜

 

熊本中央病院整形外科 

 

○岡嶋(おかじま)啓一郎(けいいちろう)、村上直也、森信太郎

 

【目的】下位腰椎固定術式による上位隣接障害の差異を調べること。

【対象と方法】前方固定術(以下ASF) 43例(男29例、女14例)、平均年齢46.9歳、後方固定術(以下PF) 45例(男21例、女24例)、平均年齢46.9歳。 ASFは全例L45単椎間、 PF は多椎間12例を含み、経過観察期間はASF が平均6.9年、 PFが平均6.4年であった。これらの症例につき術後成績と上位椎間の]-P 評価をおこなった。

【結果】術式間での臨床成績に差はなかった。上位隣接椎間変性はPFでASFのおよそ2倍にみられた。上位隣接椎間の新規不安定性により臨床成績が約10%低下した。上位隣接椎間の新規すべりは臨床成績に影響しなかった。上位隣接権開高の減少により臨床成績が約15%低下した。最終全腰椎前弯は臨床成績に影響しなかった。このシリーズ中のPFにおけるinstrumentation failureは10例あり、13例にscrew周囲の透亮像がみられ、 4例に再手術をおこなった。

 

【考察】当院ではできるだけ固定をしない方針(昨年の固定率14%)であるが、固定が是非必要な症例もある。固定術後の隣接障害は避けられない問題であり、仕事を含めた10年間のQOLのための固定術と考えた方が良い。

 

32.腰椎変性すべり症に対する後方固定術式別に見た隣接椎間障害の検討

 

久留米大学 整形外科 

 

○山田 圭(やまだけい)、佐藤公昭、密川 守、脇岡 徹、吉田龍弘、石橋千直、永田見生

 

【目的】異なる腰椎後方固定術式による隣接椎間障害について検討した。

【対象および方法】対象は2004年から2007年までL4/L5単椎間の除圧固定術を施行した21例(男9例、女12例)で、手術時年齢は平均61.6歳(41〜76歳)、経過観察期間は平均1年6か月(12か月〜61か月)であった。後側方固定術はpedicle screwを使用した群(PLF群)が8例、棘間スペーサーを使用した群(H-graft群)が9例で、自家骨を使用して椎体間固定術を施行した群(PLIF 秤)が4例であった。【結果】 L3/4の変性はPLF群で7例、H-graft群で6例、 PLIF群で2例に、 L5/Slの変性はPLF群で4例、 H-graft群で4例、 PLIF群で1例に認め、各椎間レベルの隣接障害の出現頻度は術式別で有意差はなかった。

【考察】 H-graft群はPLF群、 PLIF群に比較して固定性は強固ではないと考えられたが、隣接障害は同様に起こっていた。術式によらず固定により隣接椎間障害が発生する事が示唆された。

 

33.腰椎変性すべり症に対する後側方固定術と後方椎体間固定術の長期成績−主に隣接障害について−

 

長崎労災病院整形外科

 

○久芳昭一(くばしょういち)、小西宏昭、奥平 毅、山根宏敏、古矢丈雄、津田圭一

 

目的
腰椎変性すべり症に対する後側方固定術(PLF)と後方椎体間固定術(PLIF)後の長期成績と問題点について検討すること。


対象と方法
1985年から1999年までにPLFまたはPLIF を行った症例で10年以上経過観察可能であった32例(男性11例、女性21例)、平均年齢は57歳(44〜73歳)、平均観察期間は11年6カ月(10年〜16年9カ月)である。固定椎間数は1椎間27例、 2椎間5例であった。固定椎間の矯正損失を術後と最終観察時の固定椎間角、固定椎間%Slipの差により調査した。隣接障害は上下隣接椎間の不安定性(すべり、後方開大)、椎間狭小化、椎体骨折の有無を調査した。

結果
矯正損失を9例(28%)に認めた。隣接椎体の圧迫骨折が2例(6%)、隣接椎間不安定を11例(34%)認めた。隣接椎間狭小化例を含め、隣接椎間障害は24例(75%)であった。5例に再手術が施行され、内訳は椎体圧潰が1例、上位隣接椎間の脊柱管狭窄症が4例であった。以上の結果について文献的考察を含めて問題点を報告する。