第73回西日本脊椎研究会  抄録 (脊椎外傷(胸・腰・仙椎))

6.胸腰椎損傷に対する後方固定術の成績

 

琉球大学 整形外科  

〇我謝猛次(がじゃたけつぐ)、野原博和、黒島 聡、根間直人、金谷文則

中部徳洲会病院 

仲村 一郎

【目的】2004年以降、骨粗鬆症合併を除く胸腰椎損傷の全例に対して後方固定術を行った。手術成績を報告する。
【対象および方法】対象は16例(男10例、女6例)で、手術時年齢は19〜57歳(平均36.4歳)、観察期間は6カ月〜3年1カ月(平均1年3カ月)、損傷椎体はLl、L2、L3が各4例、Th12が2例、ThlOとL4が各1例であった。損傷形態はAO分類でA:9例、B:2例、C:5例、load sharing classificationは3〜9点で、7点以上が6例であった。術前後の麻痩(改良Frankel分類)と後弯角、術後合併症、調査時の腰背部痛の有無について検討した。
【結果】術前麻痺は、なし:11例、DO:2例、C:1例、 A:2例であった。術後に麻痺が増悪した例はなく、術前DOとClの3例はD3に改善し、Aの2例は不変であった。後弯角は術前平均ll°が、術直後0.7°となり、最終観察時には4.5°であった。術後合併症は無かったが、調査時に軽度の腰背部痛を13例に認めた。

7.シートベルト外傷による腸管損傷を伴った第2腰椎Chance型骨折の一例

 

大分整形外科病院*、別府自衛隊病院** 

○中山美数(なかやまよしかず)*、大田秀樹*、松本佳之*、 酒井 翼*、巽 政人**、木田浩隆*、竹光義治*

 

【目的】Chance型骨折の受傷機転に関しては依然不明瞭な点が多い。また、内臓器損傷を伴うChance型骨折の報告もまれである。今回、シートベルト外傷による腸管穿孔を伴ったL2 Chance型骨折の治療を経験したので報告する。
【症例】40歳男性。交通外傷(3点式シートベルト固定)にて某院救命救急センターへ搬送され、腸管穿孔の診断にて緊急手術施行。術後、腰背部痛と右下肢痛が持続するため、当院紹介受診となった。 
初診時、右L3領域の知覚異常を認め、Frankel分類Dであった。単純]-P上、L2-3椎間板の後方開大とL2棘突起骨折を認めた。更に、MRI上、右側L2椎体後面にT2high、Tl-lowの血腫と思われる所見を認めたが、CTMでは椎体、椎弓根の損傷は認めなかった。 
以上より、棘突起からL2-3椎間板、腹部へのhyperflexion forceによる腸管穿孔を伴うChance型骨折と診断した。受傷3ケ月後にL2-3 PSFとfacet fusionを施行し、その後の経過は良好である。

8.胸腰椎破裂骨折に対する椎体形成術による前方支柱再建を併用した後方short fusionの成績

 

幡多けんみん病院 

○井上真輔(いのうえしんすけ)、木田和伸、武村泰司、秋山義人、小松 誠

今回我々は、外傷性胸腰椎破裂骨折に対して、リン酸カルシウム骨ペースト(以下CPC)を用いた椎体形成術を併用して、後方かshort segmental fusionで治療したので報告する。症例は外傷性胸腰椎破裂骨折の13例で、年齢は平均48歳、経過観察期間は平均304日である。 AO分類で不全破裂骨折が3例、破裂一分割骨折が1例、 10例が完全破裂骨折(A3.3)であった。手術は後方からschantz screwで庄潰した椎体を整復し、経椎弓根的に椎体内を掻爬した後CPCを充填した。罹患椎体の上下終板のなす角を椎体楔状率、罹患上下椎体の終板がなす角を局所後弯角、罹患椎体の椎体前線の高さを上下の椎体前縁の高さの平均で除した椎体前縁高比として、術前、術後1週、術後3ケ月、最終経過観察時に計測した。椎体楔状率は術前平均26.3°が最終経過観察時10.2°、局所後弯角は術前平均15.1°が最終経過観察時6.1°、椎体前縁高比は術前平均51.3%が最終経過観察時89.8%と良好な整復位を保持できていた。従来は前方除圧固定術や後方long fusionを要したAO分類A3.3骨折のような不安定な胸腰椎破裂骨折に対しても、CPCを用いた椎体形成術でanterior column supportを再建すれば、後方short segment fusionにより良好な整復位を保持することができると考える。

9.仙骨骨折の手術治療

山口大学整形外科

○小笠博義(おがさひろよし)、鈴木秀典、田口敏彦 

脊椎損傷の中で、仙骨骨折は骨盤輪の破綻を意味し、後方不安定性要素のため手術適応となることが多いが、適切な時期に手術困難なことも多い。当科での仙骨骨折の手術治療について検討し、今後の治療指針について考察する。
対象は当院救命救急センターに搬送され、手術治療を行った仙骨骨折を含む骨盤輪骨折、男性4例・女性5例である。受傷時年齢は25歳〜64歳で、受傷原因は交通事故5例・高所からの墜落3例・その他1例であった。骨折型はAO分類TypeC l・7例、 C 2・2例で、仙骨骨折はDenis分類のZoneT・7例、 ZoneU・ 2例であった。 
手術方法は主として後方進入でのiliosacral screw同定を行った後に、前方進入で骨盤輪をプレート固定している。仙骨骨折の患者は多発外傷であることも多く、下肢外傷を伴う場合、術前の神経症状の評価が困難なことも少なくない。治療結果として神経根症状の悪化は認めなかったが、 iliosacral screw固定は手技的に難しいこともあり、今後は症例によりtransiliac plateによる固定方法も検討している。

10.脊椎固定システムを用いた仙骨骨折の治療経験

神戸赤十字病院整形外科  

○水野正一郎(みずのしょういちろう)、伊藤康夫、戸田一潔、越宗幸一郎、森田卓也


骨盤輪後方組織の破綻に伴う不安定型骨盤輪骨折の手術に関してはこれまで、種々の固定方法が報告されている。我々は、片側の仙骨骨折或いは、片側仙腸関節脱臼を伴った不安定骨盤輪骨折に対して、脊椎固定システムを用い両側腸骨スクリューを2本のロッドで連結固定する比較的低侵襲な固定を行ってきた。その治療成績を報告する。
【対象】平成17年11月より21年12月までに上記手術を行った仙骨骨折、および仙腸関節脱臼例は16例(男性8例、女性8例)、受傷時平均年齢40歳(19歳〜67歳)。術式は全麻下、腹臥位で行う。両側腸骨稜直上に5-6cmの皮切を加え、深さ2cmほど腸骨稜を切除し、 6.5または7.5mm椎弓根スクリューを2本腸骨に挿入する。両側のスクリューをそれぞれ、皮切部位から傍脊柱筋内をくぐらせたロッドで連結、ロッド間も連結し固定を完成する。
【結果】平均手術時間114分、平均出血量180ml。術直後より、疼痛は軽減し、全例、創は感染なく治癒した。早期離床が可能となり、本術式は本疾患に対する有効な手術法である。

11.腰仙椎骨折に対する経皮的Galveston法による治療経験

神戸赤十字病院 整形外科  

○越宗幸一郎(こしむねこういちろう)、伊藤康夫、森田卓也、水野正一郎

【目的】骨盤輪骨折の後方成分が破綻するTile分類のtypeCは最も不安定性が高度で,確実な整復固定は困難なことが多い。Galveston絵は腰仙部の最も強固な固定術式の一つであるが,本疾患に対しては,腰仙部軟部組織損傷に起因する創感染が大きな問題となる。我々は腰仙椎不安定損傷に対し強固な整復固定と低侵襲を目的に経皮的Galveston法を行ったのでその経験を報告する。
【対象】2009年12月から2010年3月までに上記手術を行った4例(男性2例,女性2例),平均年齢41歳(30〜58歳),受傷機転は,飛び降り1例,交通事故3例であった。手術はSynthes社製USS-2,SpiRitを用いナビゲーション下に経皮的にscrew,rodを挿入し整復固定した。平均手術時間213分(175〜268分).平均出血量205ml(50〜325ml)であった。全例早期より離床可能となり創感染は認めなかった。