第73回西日本脊椎研究会  抄録 (頸椎Pedicle Screw)

12.頚椎損傷患者のpedicle screw挿入時における椎体回旋度の測定

岡山大学病院 整形外科1)

神戸赤十字病院 整形外科2)

○杉本佳久(すぎもとよしひさ)1)、伊藤康夫2)、田中雅人1)、越宗幸一郎2)、瀧川朋亨2)

【目的】頸椎pedicle screw (以下PS)は外側に逸脱する傾向がある。その理由の一つとして、 PS挿入時のストレスで椎体が回旋することがあげられる。今回、PS挿入時の椎体回旋度をNavigationにて計測したので報告する。
【対象および方法】頸椎損傷の治療に、76本のPSを17例38椎体(C2〜C7)に挿入した。術中にIso-C3Dで取得したNavigation画像をもとにして、PS挿入前とPS挿入時(awlで最大のストレスが加わった状態)の椎体の回旋度を計測し、検討した。
【結果および考察】PS挿入時の平均回旋度は、C2で10.6° (6〜17°)、C3で9.1°(5〜13°)、C4で7.8°(6〜9°)、 C5で6.7°(4〜ll°)、C6で4.9° (2〜8°)、C7で2.8°(0〜4°)であった。 PS挿入時の椎体回旋度は、頸椎の高位が上がる程、大きくなる傾向を認めた。頸椎のPSが外側に逸脱する理由として、術中のストレスで椎体が回旋している点も関与していることが明らかになった。

13.高齢者頚椎脱臼骨折に対してPSによる整復固定を行った1例 

 

医療法人 綮愛会 石川病院 整形外科1) 

北海道中央労災病院 せき損センター2) 

○飯本誠治(いいもとせいじ)1)、宮脇城二1)、須田浩太2)、石川綮一1)

 

【はじめに】高齢者頚椎脱臼骨折に対し椎弓根スクリュー(以下PS)を用いて整復固定した症例を経験したので報告する。
【症例】81歳男性。3m高位から転落受傷。C6/7脱臼骨折と右上肢C7以遠でMMT3の筋力低下を認めた。須田らの片側PS法に準じC6-Tl後方整復固定を行った。右片側PS固定と棘突起ワイヤリングを追加した。術直後より麻痺は改善し、カラー固定のみで体動フリ-とした。術翌日より歩行可能となった。
【考察】本格的な高齢化社会を迎えるとともに、高齢者の脊椎外傷が増加しつつある。高齢者では骨粗鬆症・骨脆弱性が背景にあり、固定アンカーに苦慮することが少なくない。PSは骨脆弱性を伴う病態でも有効な固定アンカーとなる。安全性が確保できる症例に限るが、PSは高齢者脱臼骨折に対する有効な選択肢の一つとなりえる。

14.新たな頚椎椎弓根スクリュー刺入用デバイスの紹介

 

北海道中央労災病院せき損センター 

○須田浩太(すだこうた)、楫野知道、森平 泰、上田明希、笹沢史生、中野宏昭、東條泰明、中尾弥起

 

【目的】頚椎椎弓根スクリュー(以下CPS)は独力な脊椎再建ツールであるが神経・椎骨動脈損傷の潜在的リスクの克服が課題である。演者はCPS刺入精度向上のための新たなデバイスを開発し,特許を取得したので紹介する。
【対象】本デバイスは2006年に演者が発案し,改案の上で2008年に特許申請を行った。2009年に特許取得し,国際特許優先権を取得した。本デバイスは脊髄と椎骨動脈を如何に避けるかを目的に作られており,その基本構造と使用法についての詳細は発表の際に報告する。
【結果】デバイスの不具合はなく,安全に使用できた。デバイスを用いて刺入したCPS は全てが正確に刺入されておりスクリュー半径以上の逸脱は0本・0%であった。神経・血管合併症は皆無であった。
【考察】ハーフタッピング法やコンピュータナビゲーションシステムの他に本デバイスは第3の安全策としての活用を望む。今後は適応と限界につき検討を重ねる予定である。

15.頚椎外傷に対する頚椎椎弓根スクリユーの逸脱率:同一術者による連続100例の解析

 

北海道中央労災病院せき損センター 

○須田浩太(すだこうた)、楫野知道、森平 泰、上田明希、笹沢史生、中野宏昭、東條泰明、中尾弥起

 

【目的】椎骨動脈損傷と神経損傷の回避は頚椎椎弓根スクリュー(以下CPS)の至上命題であり,正確なスクリュー刺入が必須である。本報告ではナビゲーションを用いずにCPS刺入を行なった外傷例を解析した。
【対象と方法】CPSを用いて再建術を行なった頚椎外傷のうち,同一術者(筆頭演者)による連続100例を対象とした。術中透視(側面像)と「ハーフタッピング法」を用いた。また,椎弓根径が細い例や椎弓根の骨硬化が著しい例では刺入回避した。誤刺入の評価は,スクリュー半径以上を逸脱とした。
【結果】男87例,女13例,平均年齢57歳であった。CPSの使用総数は365本,スクリューの半径以上の逸脱は1本(0.27%)であった.CPSに起困する神経合併症,血管合併症は皆無であった。
【考察】技量や手技だけでナビゲーションを凌駕するはないし,逆にナビゲーションが免罪符でもない。 100%の安全を保証できない限り,技術習得,手技工夫,支援ツール導入など多角的努力が重要と考える。