第73回西日本脊椎研究会  抄録 (Ankylosing Spine)

16.強直性脊椎骨増殖症(ASH)に合併した脊椎骨折の4症例

 

宮崎大学 整形外科  

○福嶋秀一郎(ふくしましゅういちろう)、黒木浩史、濱中秀昭、猪俣尚規、黒木修司、比嘉 聖、帖佐悦男

 

野崎東病院 整形外科

 

久保紳一郎

 

【目的】今回我々は強直性骨増殖症(以下ASH)に脊椎骨折を合併した4症例を経験したので報告する。
【対象と方法】対象は2005年12月〜2009年3月にASHに合併した椎体骨折に対し当院で入院加療を行った4症例(男性2例、女性2例:平均年齢72.5歳)である。これらに対して受傷機転、麻痺の状態、受傷レベル、治療及び経過について検討した。
【結果】受傷機転は交通外傷1例、転倒2例、体幹の背屈1例であった。麻痺の状態はFrankelA:1例 C:1例、D:2例であった。受傷レベルは頚椎1例(C5)、胸椎3例(ThlO、ThlO/11、Thl2)であった。1例は後方固定術、2例は後方除圧固定術を行った。Frankel Aの1例は手術を検討したが全身状態の悪化のため保存的に加療を行った。保存的加療を行った1例を除いて症状の改善を認めた。
【考察】 ASHに伴う椎体骨折に対してはCT、MRI、動態]-p撮影で評価を行い、強固な固定が得られる観血的治療を考慮すべきである。

17.強直性脊椎炎、強直性脊椎骨増殖症患者の脊椎・脊髄損傷の特徴と治療成績 

 

鳥取大学 整形外科  

○土海敏幸(どかいとしゆき)、永島英樹、楠城誉朗、谷田 敦、豊島 良太 

 

松江市立病院 整形外科 

 

谷島伸二

 

【目的】強直性脊椎炎(AS)/強直性脊椎骨増殖症患者(ASH)における脊椎・脊髄損傷について検討した。
【方法】2003年10月から2009年5月までの脊椎・脊髄損傷手術症例は82例で、AS合併例は2例、ASH合併例は5例だった。この7例について背景、臨床症状、手術方法を調査した。追跡期間は平均13.7か月だった。
【結果】男性3例、女性4例で、受傷時年齢は平均79.1歳だった。受傷機転は転倒が6例、交通事故が1例だった。損傷高位は頚椎が3例、胸椎移行部が3例、腰椎が1例だった。受傷時Frankel分類はBが1例、Cが2例、Dが1例、Eが3例だった。全例に後方固定術を行い、2例で椎体形成術、1例で椎弓形成術を併用した。最終調査時の麻痺改善例は6例で、不変は4例だった。
【結語】 AS/ASHを合併した脊椎・脊髄損傷は軽微な外傷による受傷が多く、全例がthree column injuryであった。高齢であっても早期手術により機能回復・維持が可能である。

18.強直脊椎に合併した脊椎・脊髄損傷(胸腰移行部)の検討

 

岡山医療センター 整形外科 

○荒(あら)瀧(たき)慎也(しんや)、中原進之介、竹内一裕、高橋雅也

 

【目的】強直性脊椎炎(AS)・びまん性特発性骨増殖症(DISH)に合併した脊椎骨折は、長管骨に似た骨折形態をとる。レバーアームが長くなることにより、骨折部に応力が集中するため、保存療法では遅発性神経麻痺が問題となる。当院では原則として手術加療を行っている。その治療成績・問題点を検討した。
【対象と方法】2006年以降、AS/DISHに脊椎骨折を合併した5例を対象とした。男性3例、女性2例で、平均年齢は78.8歳、追跡機関は平均20.8カ月であった。受傷機序、損傷高位、受傷から手術までの待機期間、麻痺の程度(改良Frankel分類)、手術方法、治療成練を調査した。

【結果】受傷機序は転落1例、転倒4例、損傷高位はThlO(2例)、Thll(l例)、Thl2(2例)、待機期間は平均8.6日であった。受傷時改良Frankel分類はB2(l例)、 Cl(l例)、C2(3例)であり、手術は全例で後方固定術を施行した。明らかな麻痺の改善を認めた症例は1例のみであった。                    

【考察】強直脊椎に合併した胸腰移行部脊椎損傷で、前方に生じやすいギャップを最小限とするために当科では手術体位に小工夫を行っている。