第74回西日本脊椎研究会  抄録 (頸椎後縦靭帯骨化症の手術治療

7.当科における頚椎OPLLに対する棘突起縦割式脊柱管拡大術の術後成績

 

宮崎大学整形外科 
○濱中秀(はまなかひであき)、黒木浩史、猪俣尚規、増田 寛、福嶋秀一郎、樋口誠二、比嘉 聖、帖佐悦男

 

当科では頚椎OPLLに対して黒川法に黒川法 に準じた棘突起縦割式脊柱管拡大術を用いて きた。今回はその臨床成績、術後アライメン ト変化、術術後可動域変化などについて評価 した。
【対象】平成14年1月から平成18年7月ま でに当科にて棘突起縦割式脊柱管拡大術を施 行した30例中、経過観察可能であった25例 (男性20例、女性5例)を対象とした。手術 時平均年齢は63.3歳、術後平均経過観察期 間は6年10ヶ月であった。
【結果】平均手術時間は3時間19分、出血 量は平均435mlであった。術前平均JOAス コア8.6点が術後1年で14.5点となり最終 経過観察時には13.8点であった。術後1年 時と最終経過観察時において減少傾向を認め るも有意差は認めず最終的に改善率は64% であった。画像的検討において術前後で頚椎 前彎指数、頚椎前彎角、可動域とも有意に減 少していた。術後重篤な合併症の発生はなく、 C5麻廊は1例に認めたが自然に軽快した。
【考察】OPLLに対する棘突起縦割式脊柱管拡大術は改善率64%と概ね良好な成績を得た。

8.頚椎後縦靭帯骨化症に対する椎弓形成術の後成績の検討

 

岡山医療センタ−

○高橋雅也(たかはしまさや)、中原進之介、竹内一裕、 橋本敏行、寺本亜留美

 

頚椎後縦靭帯骨化症に対する手術方法は前方法と後方法があり、その適応については広範囲の靭帯骨化症例には後方法が選択されることが多く、後方法の治療成績はおおむね良好であると報告されている。今回、我々は頚椎後縦靭帯骨化症に対して椎弓形成術を行った症例の手術成績を調査した。
2004年〜2008年に当科で手術を行い、術後1年以上経過観察可能であった頚椎後縦靭帯骨化症74例を対象とした。男性56例、女性18例、手術時平均年齢は63.9歳で前例に片開き式椎弓形成術を行った。術後平均経過観察期間は2年6ヶ月間であった。
これらの症例について、JOA score、改善率、術前後での頚椎中間位のalignment、脊柱管内の骨化占拠率について調査した。また、成績不良症例について、その原因を検討した。

9.頚椎後縦靭帯骨化症に対する椎弓形成術の治療成績

    

鳥取大学整形外科 

○楠城誉朗(なんじょうよしろう)、永島英樹、谷田 敦、 土海敏幸、豊島良太

 

2002年から2009年までに頚椎後縦靭帯骨化症(頚椎OPLL)に対して棘突起縦割式 椎弓形成術を行い、1年以上経過観察が可能 だった35例の手術成績を調査した。男性25 例、女性10例で、手術時平均年齢は64.8歳 (47〜81歳)であった。発症から手術までの 期間は平均1年9か月であった。骨化分類は 連続型16例、分節型8例、混合型9例、そ の他2例であった。以上の症例に対して、術 前と術後1年の旧頚椎JOA scoreを調査し、 改善率を算出した。また骨化占拠率、術前後 の前弯角(C2-7角)、術前後の頚椎可動域を 調査して、改善率に影響する因子を検討した。 結果はJOA scoreは術前平均11.4点が術後 1年で平均13.3点に改善し、改善率は平均 33.6%であった。改善率25%以上の可の群  は24例で、25%未満の不可の群は11例で  あった。改善率不可の群は可の群と比べ、手 術時年齢が高く、また手術までの期間が長い 傾向にあった。また不可の群は頚椎のアライ メントが術後にやや後弯に進む傾向にあった。

10.頚椎後縦靭帯骨化症重症例に対する宮崎式頚椎椎弓形成術の治療成績

 

山口大学大学院医学系研究科整形外科

○鈴木秀典(すずきひでのり)、田口敏彦、加藤圭彦、 寒竹 司、今城靖明、船場真裕

 

【はじめに】当科では2005年から頚椎OPLL重症例対しては、宮崎式頚椎椎弓形成術(以下、宮崎式)を施行している。その手術成績について報告する。
【対象及び方法】当科で頚椎OPLLに対して手術を施行し、詳細な追跡調査が可能であった106例を対象とした。そのうち術前JOAscoreにて6/17点以下の重症症例に対して 宮崎式を施行した8例(男性6例、女性2例、 手術時平均年齢74歳、術後平均経過観察期 間は4.2年)について検討した。術前X線 所見としてOPLLの病型、MRI所見と術後 成績、術前罹病期間、JOA scoreおよび平林法による術後改善率を術前・術後及び最終 調査時に検討した。
 【結果】JOA scoreは術前平均4.3から調 査時平均10.3に改善し、平林の改善率では 平均46.9%であった。OPLLの形態は分節 型3例、連続型2例、混合型3例であり全 例MRIにて脊髄髄内の輝度変化を認めた。 術前のアライメントは保たれており、術中・ 術後の合併症も認めなかった。

11.当院における頚椎後縦靭帯骨化症に対する手術治療成績

 

佐田厚生会佐田病院 整形外科
○藤原将巳(ふじわらまさみ)、佐藤 英、矢津田圭、 大崎幹二

 

【目的】当院では頚椎OPLLに対する術式は柳田―宮崎法による椎弓形成術を中心に施行している。今回1年以上経過観察が可能だっ た症例に対して、術後成績と術前画像、術中エコーとの関連を中心に検討を加えたので報告する。
【対象及び方法】当院で頚椎OPLLに対して後方手術をおこなった22例(男性 20例、女性 2例)を対象とした。年齢は48〜78歳(平均64.7歳)、経過観察期間は1年〜6.2年であった。これらの症例に対して、骨化占拠率、頚椎アライメント、MRIによる頚髄信号変化、K-line、術中エコー所見とJOA score及び平林法による改善率を検討した。
【結果】JOA scoreは平均9.4点が12,7点に改善し、改善率は平均42.1%であった。骨化占拠率が60%を越える症例、K-line(−)、術中エコーでは硬膜拍動がはっきりせず、扁平化の改善が少ない症例で改善率が悪い傾向にあった。
【考察及び結語】術前骨化占拠率、K-lineなどは後方除圧術の限界の指標となりえる。

12.軸椎の椎弓形成を要した頚椎後縦靭帯骨化症の検討

 

宇和島社会保険病院 整形外科

○藤田勝(ふじたまさる)、日野雅之、大西慶生、 冨永康浩、松田芳郎、藤井 充

 

【はじめに】頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)では上位頚椎の椎弓形成を要することがある。当院で軸椎の椎弓形成を必要とした症例について検討したので報告する。
【対象】当院で椎弓形成術を行ったOPLL患者53例のうち軸椎の椎弓形成を要したのは9例(男個7例、女性2例、平均年齢67.4歳)であった。片開き式が7例、観音式が2例で、母権の根弓切除を追加した症例は2例であった。
【結果】術前平均JOA scoreは9.7点(2.5-12)で、術後は11.9点であった。術後合併症は1例に一過性のC5麻痺を生じた。C1-2角は術前平均30.4度、術後28.6度で、C3-7角は術前平均11.2度、術後8.4度であり、後弯変形を生じた症例はなかった。軸椎の棘突起を縦割して再縫着した5例のうち3例は遠位方向に転位し、そのうちの2例は骨片が癒合せず離開したままであった。  【考察】軸椎の椎弓形成後に有意な後弯の進行は認めなかったが、再縫着した骨片は転位、離開していた症例が散見された。今後、より強固な再縫着が大切と考えられた。

13.頚椎後縦靭帯骨化症に対する前方除圧固定術の中長期成績

 

高知大学医学部 整形外科

○葛西雄介(かさいゆうすけ)、谷口愼一郎、武政龍一、 永野靖典、喜安克仁、田所伸朗、 谷 俊一

 

頚椎後縦靭帯骨化症に対する前方除圧固定術は脊柱管内前方から脊髄組織を圧迫する後縦靭帯骨化巣を前方より切除し圧迫因子を直接除去する術式である。私たちの施設では移植骨として腸骨を使用してきたが、腸管は採取可能な長さに限界があり、骨化巣が3椎体以上におよぶ場合には連続3椎体以上の亜全摘を避け脊髄圧迫程度が強く脊髄症の原因となっている骨化巣を選択的に切除し腸管移植を行ってきた。このように骨化巣を一部残した症例では除圧不良による成績不良や遺残骨化巣の肥厚や伸展による術後中長期成績悪化が危惧される。今回、1991年以降頚椎OPLLに対して前方除圧固定術を施行し5年以上経過観察し得た26症例(経過観察期間:平均9年3ヶ月、最長17年)を対象として遺残骨化巣の肥厚や伸展の有無、術後中長期成績、術後成績低下例の原因について調査し、遺残骨化巣の有無、あるいは、遺残骨化巣の肥厚や伸展の有無が術後中長期成績に影響を及ぼすか否か、検討したので報告する。

14.占拠率が50%以上の頚椎後縦靭帯骨化症に対する椎弓根スクリューを用いた手術法の検討

 

高知医療センター 整形外科

○時岡孝光(ときおかたかみつ)、土井英之、田村竜也

 

占拠率が50%以上の頚椎OPLLに対する椎弓根スクリュー(PS)の意義を検討した。2005年以来、頚椎OPLLのPS施行例は14例で、手術時年齢は47−81歳(平均65歳)、骨化は連続型11例、分節型3例、占拠率は50%から77%(平均62.6%)であった。 PSによる固定椎問は5椎間3例、4椎間5例、4椎間4例、4椎間2例、平均3.6椎間で、併用した除圧術は椎弓形成術が10例(片開き成6例、縦割式4例)、除圧なしが4例(二期的前方除圧が1例)であった。術前の頚椎可動域は5°から49°(平均25.9°)であり、OPLLがあっても25°以上の可動域は8例に存在した。JOAスコアは術前8.9点から術後12.6点、平均改善率は50.5%で、PS固定のみの4例でも平均51.3%の改善率が得られていた。巨大OPLLでは菲薄化した脊髄を除圧する操作は前方、後方ともに麻痺悪化の危険性がある。PSにより矯正と固定を加えることで後方法の弱点を補い、除圧を省略または範囲縮小したり、二期的前方除圧を選択できる。