第74回西日本脊椎研究会  抄録 (胸椎後縦靭帯骨化症の手術治療)

15.胸椎後縦靭帯骨化症に対するインストル−メンテ−ション併用後方侵入前方除圧法の4例

 

愛媛大学医学部附属病院脊椎センター 

○堀内秀樹(ほりうちひでき)、尾形直則、森野忠夫、 鴨川淳二、森実 圭、山岡豪大朗、 愛媛大学大学院 運動器学  三浦裕正

 

脊椎インストル−メンテ−ションの併用により、胸椎後縦靭帯骨化症(胸椎OPLL)は後方の除圧・固定のみで対応できるケースが増えたが、骨化が大きかったり、嘴状である症例では、前方の骨化巣を切除する必要が生じる場合もある。我々も原則として後方除圧固定を行っているが、今回は前方除圧を必要とした4例について報告する。

 症例は41−59歳で、全例に両下肢筋力低下、歩行障害が認められた。骨化巣が大きく、嘴状で、高度の脊髄圧迫が見られたためにインストル−メンテ−ションを併用した後方除圧に加え、後方侵入前方除圧を行った。術前JOA scoreはO−7.5点(11点法)であった。3例はOPLLを摘出し、1例は前方に浮遊させた。術後仝例症状の改善を認めた。 後方から一期的にOPLLを切除する方法は手術時間も長くなり、それに伴う出血も多く、侵襲の大きな手術であるが、術中のモニタリングや超音波検査を併用し注意深く行えば、ほとんどが直視下で行えるのでリスクの高い手技ではないと考えられる。

16.胸椎後縦靭帯骨化症の術後成績

 

長崎労災病院整形外科

○久芳昭一(くばしょういち)、小西宏昭、奥平 毅、 前田和政、吉居啓幸

 

【目的】胸椎後縦靭帯骨化症に対する術式別の術後成績について検討した。
【対象】対象は1989年以降に手術を行った18例(男性1例、女性17例)で、後方除圧固定術6例、前方固定術5例、椎弓切除術5例、大塚法1例、後方前方固定術1例である。平均観察期間は5年8ヵ月(3ヵ月〜19年)である。
【方法】術式別の治療成績(平林の改善率を用いた)、後弯進行度、合併症、追加手術の有無を検討した。
【結果】平均改善率は後方除圧固定術53%、前方固定術20%、椎弓切除術−1%、後方前方固定術100%であった。椎弓切除術は他の術式より後弯が進行した。前方固定術の1例に髄液漏、大塚法の1例に術後感染を合併した。椎弓切除術の1例と前方固定術の1例は症状悪化し追加手術を要した。

【考察】後方除圧固定術は比較的侵襲が少なく、広範囲病変にも対応できる。 instru-mentを用いて若干の後弯矯正と維持が可能である。短〜中期的には良好な治療成績が得られ有用な術式であった。

17.胸椎後縦靭帯骨化症に対する手術治療方針の検討

    

久留米大学 整形外科

○渡邊琢也(わたなべたくや)、山田 圭、佐藤公昭、 密川 守、山下 勝、佐々木威治、猿渡敦子、永田見生

 

【はじめに】胸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)はさまざまな手術方法が検討されているが、確立されていない。今回我々は胸椎OPLLに施行した術式別に成績を評価し、治療方針を検討した。
【対象と方法】対象は1991年5月から2009年10月まで手術を施行した24例(男10例、女14例)であった。手術時年齢は平均55.8歳(27〜74歳)であった。施行術式は後方進入前方除圧術(大塚法;○群)を4例、椎弓形成術(LP群)を13例、椎弓切除術(LN群)を4例、後方除圧固定術(PF群)を3例に施行した。この4群で、治療成績、術後合併症を調査した。治療成績はJOAスコアで評価を行った。
【結果】治療成績は各群間に有意差はなかった。O群で術後2例に下肢の運動機能の悪化を認めた。LN群の1例、LP群の3例で術後経過中に脊髄症の悪化を認め追加手術を要していた。 【考察】大塚法は前方の圧迫因子を除去する有用な術式であるが、神経に与えるリスクも高い。後方からの除圧は短期間には良好な例もあるが、脊髄症が再発した例もあり、報告にあるように後方除圧固定術が最も安定した方法であると考えられた。

18.胸椎靭帯骨化症に対する手術治療の検討

 

九州厚生年金病院 整形外科

○土屋邦喜(つちやくによし)、川口謙一、原 大介、 屋良卓郎

 

胸椎靭帯骨化症に対する手術の適応、手術成績を検討した。
【対象および方法】2006年以降、靭帯骨化性病変に対する手術は8例で全胸椎手術の約13%であった。内容は後縦靭帯骨化症2例、黄色靭帯骨化症5例、全周性の高度狭窄1例であった。手術は椎弓切除5例、除圧固定術3例であった。
【結果】術前歩行不能例は3例であった。最終的に脊髄症は全例改善が見られたが一例が術後完全麻蝉となり経過とともに回復した。3例がBMI30以上の高度肥満であった。上位椎不安定性に伴う脊髄症の増悪が1例に見られ再手術を施行し改善した。

【考察】胸部脊髄症は一旦発症した場合は保存療法は無効で手術加療を選択する割合は高い。また血行上の脆弱性により手術施行の際に術後神経障害を生じる率は高く、さらに靭帯骨化症例は一般に軟部組織、神経組織の可塑性も悪いことより術後の悪化の率が高く手術の適応および術式選択、術後の管理に関しては十分な検討が必要と思われる。肥満は胸椎レベルの靭帯骨化症の発生に関与している可能性が考えられた。

19.胸椎後縦靭帯骨化症に対するインストゥルメ ント併用後方除圧固定術の手術成績

 

琉球大学 整形外科

○根間直人(ねまなおと)、野原博和、黒島 聡、 我謝猛次、比嘉浩太郎、金谷文則

 

【目的】脊髄症を来たした胸椎後縦靭帯骨化 症に対するインストゥルメント併用後方除圧 固定術の手術成績を報告する。
【対象と方法】対象は12例(男性4例、女 性8例)、手術時年齢は35〜68歳(平均49 歳)、観察期間は6ヵ月〜11年9ヵ月(平均 4年3ヵ月)であった。検討項目は、手術前 後のJOAスコア(頚髄スコアから上肢の項 目を除いた11点満点)、骨化形態と範囲、除 圧と固定範囲、手術前後の後弯角の変化、術 後合併症とした。
【結果】JOAスコアは術前平均4.9点が術後平均7.9点に改善した。骨化形態は連続棒状が5例、連続波状が5例、嘴状が2例で、 骨化範囲は平均6椎体であった。除圧範囲は平均6.1椎体、固定範囲は平均8.5椎体であった。後弯角は術前平均20.6°、術直後平均 20.9゜、調査時26°であった。術後合併症は2 例で、1例で隣接椎間の後弯を発症、1例で髄液漏後に感染を発症したが、複数回の手術 で治癒した。 

20.胸椎後縦靭帯骨化症に対する後方除圧固定術の治療成績一後背矯正の意義について−

 

大分整形外科病院 整形外科

○大田秀樹(おおたひでき)、松本佳之、佐々木伸一、 酒井 翼、中山美数、園田康男、 清田光一、木田浩隆、竹光義治

 

【目的】胸椎OPLL手術は難易度が高く手術成績も良好とは言えない。われわれは椎弓切除とinstrumentationによるdekyphosisを行っている。今回は胸椎OPLLに対する後方除圧固定術の手術成績を検討し後背矯正の意義について報告する。
【対象】過去5年間の6例で4例はOLFも伴っていた。男性3例、女性3例。手術時年齢は平均50才。全例に後方除圧術を行いinstrumentationによる矯正固定を行った。
【結果】術前JOA score (下肢のみの11点)は平均3.9点が術後7.9点に改善し、改善率は56.4%。6例中4例は歩行不能であったが術後可能となった。術前Cobb角は平均17.4°が8.6°に矯正されたが、統計学的有意差は認めなかった。
【考察】胸椎OPLLの後方除圧は胸椎の後弯のため除圧効果が期待しにくいが、術中体位による矯正とcompression forceによりdekyphosisが得られ、脊髄が間接的に除圧されたと思われる。