第74回西日本脊椎研究会  抄録 (その他の脊柱靭帯骨化症・症例報告)

21. 黄色靭帯骨化はどの程度存在するか? 〜脊髄造影後CTによる黄色靭帯骨化の高位分布調査〜

 

大分大学 整形外科
○小寺隆三(こでらりゅうぞう)、吉岩豊三、宮崎正志、 津村 弘

 

【はじめに】黄色靭帯骨化を単純X線像にて評価した調査はあるが、脊髄遺影後CT(以下CTM)を用いて詳細に検討した報告は少ない。今回われわれは黄色靭帯骨化の高位分布調査を行ったので報告する。
【対象と方法】2007年1月から2010年8月まで脊椎疾患精査の為にCTMを施行した254例中、後縦靭帯骨化症を除く223例を対象とした。男性118例、女性105例で、平均年齢は68.2歳(22〜87歳)であった。全脊椎CTMにて黄色靭帯骨化の有無をaxial像にて評価した。
【結果】223例中72例(32.3%)に黄色靭帯骨化を認めた。 骨化の高位は胸腰椎移行部に多く、C5/6 :1例、C6/7 : 3例、T1/2 : 2例、T2/3 : 7例、T3/4 : 8例、T4/5 : 9例、T5/6 : 7例、T6/7 : 4 例、 T7/8 : 4 例、 T8/9 : 4 例、T9/ 10 : 23例、T10/11 : 42例、T11/12 : 31例、T12/L1 : 3 例、L1/2 : 1 例であった.  【考察】CTMを施行したなかで、黄色靭帯骨化の合併率は比較的高く、予想外の神経症状の悪化が出現する可能性があり注意が必要である。黄色靭帯骨化は胸腰椎移行部に多く認められ、力学的に負荷がかかりやすい事が要因となっていると考えられた。

22.腰椎病変を合併した胸椎黄色靭帯骨化症の治療成績

 

九州大学医学部整形外科

○松本嘉寛(まつもとよしひろ)、播广谷勝三、土井俊郎、岩本幸英

 

【目的】胸椎黄色靭帯骨化症(OLF)に腰部脊柱管狭窄症(LCS)などの腰椎部病変合併は、治療にしばしば難渋する。今回、腰椎部病変を合併したOLF症例の臨床的特徴、治療成績を検討した。
【対象及び方法】対象は腰椎病変を合併した胸椎OLF(18例)、非合併例18例(非合併例)を対照群とした。臨床所見、JOA score、画像所見、手術方法、合併症について検討した。
【結果】初診時平均年齢は合併群65.4歳、非合併辞58歳。腰椎病変の内訳はLCS 12例、腰椎OLF 2例、両者の合併1例、陳旧性圧迫骨析による狭窄2例、腰椎OPLL 1例であった。全例に胸椎OLF後方除圧術を施行した。合併群8例に腰椎病変の手術を行った。術前JOA scoreは両群聞に有意差を認めなかったが、改善率(平林法)では合併群17.4%、非合併辞30.4%であり有意に合併群で不良であった。合併群のうち腰椎手術施行例が良好な改善率を示す傾向にあった。
【考察】合併例では間歇性跛行や筋力低下を伴う症例が多く、脊髄レベルに加え馬尾、神経根レベルでの障害が症状発生に強く影響していると思われた。

23.保存的に治療を行った強直性脊椎骨増殖症に伴う脊椎椎伴骨折の2例

    

三朝温泉病院 整形外科 

○谷島伸二(たにしましんじ)、持田 茂、深田 悟、 石井博之、森尾泰夫

 

保存的に治療を行った強直性脊椎骨増殖症(以下ASH)に伴う脊椎椎体骨折の2例を経験したので報告する。
【症例1】92歳男性。転倒受傷後、頚部痛を生じた。前医で頚椎捻挫と診断され入院したが、1か月経過しても、頚部痛の改善なく、紹介となった。精査の結果、ASHに伴う第6頚椎椎体骨折と診断した。棘間靭帯損傷もあり手術を検討したが、高齢と糖尿病、肺気腫などの合併症があり、保存的治療を選択した。ハローベスト、頚椎カラーによる外固定を行い治療した。受傷後2年時骨癒合は得られており、受傷前の生活に復帰している。
【症例2】74歳女性。転倒受傷し背部痛が出現、同日当院を受診した。 ASHに伴う第8胸椎椎体骨折を認めた。手術を勧めたが、本人は保存的治療を選択した。硬性コルセットによる外固定と超音波骨折治療を併用し、骨癒合が得られた。ASHに伴う椎体骨折は保存療法が困難で、手術療法が推奨されているが、患者背景により手術を積極的に選択できない場合がある。今回慎重に保存療法を行うことで、骨癒合を得ることができた。

24. 頚椎後縦靭帯骨化が自然消失したと思われる一症例

 

今給黎総合病院整形外科       整形外科酒匂クリニック     鹿児島赤十字病院整形外科

○松永俊二(まつながしゅんじ)    酒匂 崇               武富栄二

 

【はじめに】頚椎後縦靭帯骨化症の骨化進展については多くの報告があるが骨化が消失したという報告はない。今回我々は短期間で頚椎部の後縦靭帯骨化がレントゲン上消失したと思われる症例を経験したので報告する。
【症例】症例は73歳の女性であり乗用車同士の正面衝突事故にて他医救急搬送された。神経症状なく頚部痛のみで頚椎捻挫と診断され2週後リハビリ目的で発表施設を紹介受診した。受診時の頚椎レントゲンでは後縦靭帯は認められなかったが自賠責保険の資料提出目的で紹介元の受傷時の頚椎レントゲンを取り寄せたところ明らかな頸椎後縦靭帯骨化を認めた。頚椎部CTとMRIでは後縦靭帯の肥厚が認められるのみで初診時のレントゲンでみられたような骨化は認められなかった。

【考察およびまとめ】頚椎の外傷後にCT上の後縦靭帯肥厚とそれに続く骨化が出現したとする報告はあるが後縦靭帯骨化の出現過程は未だ不明である。いったん出現した骨化が短期間に消失したと思われる本症例は骨化の発現機序にとっても貴重であると考えるので報告する。

25. 椎弓形成術後約20年で移植骨により脊髄圧迫をきたした頚椎後縦靭帯骨化症の1例

 

県立広島病院 整形外科

○西田幸司(にしだこうじ)、森重真奈美、林 聖樹、井上博幸、村上祐司、延藤博朗、望月 由

 

【目的】片開き式椎弓形成術施行後、約20年で移植骨と椎弓との間に偽関節を生じ、脊髄症をきたした頚椎後縦靭帯骨化症症例を経験したので報告する。
【症例】66歳、女性、主訴は歩行障害であった。約20年前、頚椎後縦靭帯骨化症による歩行障害のため他院にて椎弓形成術施行され、経過は良好であった。術後19年で歩行時のふらつきを自覚、当科紹介初診となった。CI椎弓切除およびC2-7片開き式椎弓形成術が施行されていたが、MRIではC6/7高位で前方の後縦靭帯骨化巣と左背側腫瘤により頚髄は圧迫されていた。 CTではC6拡大椎弓の移横骨とC7椎弓とが接触し、左C6/7で偽関節を形成、後方の圧迫因子となっていた。
深部腱反射の充進も認めたためC6/7高位の脊髄症と診断し、左C6、7の部分椎弓切除を施行した。術後、歩行障害は改善し、経過は良好である。  【まとめ】頚椎後縦靭帯骨化症に対する椎弓形成術後、移植骨による脊髄症をきたした症例を経験した。長期経過良好症例でも脊髄症をきたす可能性があるため注意が必要である。

26.術後17年の経過観察ができた先端巨大症に合併した脊柱管内靭帯骨化症の1例

 

島原整形外科・西村クリニック

○西村行政(にしむらゆきまさ)

 

演者は、1995年“整形外科”に先端巨大症に合併した脊柱管内靭帯骨化症の1例という論文を発表した。今回手術から17年の経過を追うことができたので報告する。
症例は、初回手術時36歳の女性で、C5〜Th9、Th12/L1にOPLL、C7/Th1〜Th12/L1にOYLを認めた。Th1/2での著明な脊髄圧迫のため両下肢麻痺を呈し、歩行不能であった。Th9/10ではOYLによる脊髄圧迫が著明であった。 1993年6月、C3〜C7の椎弓形成術とTh1〜4の椎弓切除術を行い、10月にTh7下〜Th12上までの椎弓切除術を行った。術後は支持なし歩行が可能となり、仕事も普通にできていた。先端巨大症という病態での広範な椎弓切除術が、脊椎の構築学的変化を生じないかが心配であったが、現在まで明らかなアライメントの変化はなく、除圧の再狭窄もみられていない。ただ、2005年4月より両下肢痛としびれ、筋力低下が出現し、歩行障害が生じた。精査の結果、Th12/L1でのOPLLとOYLによる脊柱管狭窄が強く、同年6月に手術した。その後の経過は良好で、両下肢痛としびれは軽減し、両膝OAのために1本杖を使用しているが、歩行は安定し日常生活には支障はみられていない。