第76回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題1)

1.総合せき損センターにおける高齢脊椎変性疾患手術の変遷

 

総合せき損センター

 

○森下雄一郎(もりしたゆういちろう)、前田 健、森 英治、弓削 至、河野 修、高尾恒彰、坂井宏旭、益田宗彰

 林 哲生、植田尊善、芝啓一郎

 

【はじめに】当センターにおける過去30年間にわたる高齢脊椎変性疾患手術の変遷について報告する。


【対象と方法】1981年から2010年の30年間に当センターにて手術を施行された12283例の脊椎変性疾患症例(靭帯骨化症および骨粗鬆症性椎体骨析後偽関節症例を含む)を対象とした。外傷および腫瘍性病変、感染性病変症例は除外した。 1981-1990年および1991-2000年、2001-2010年の各10年間での、80歳以上の高齢手術症例数および症例内容変遷について検討した。


【結果】80歳以上の高齢者手術症例数は、各年代2例(0.14%)、86例(1.68%)、352例(6.02%)と有意に増加していた。手術部位内訳は、各年代:頸椎1-37-97例、胸椎/胸腰椎0-4-47例、腰椎1-45-97例で、各部位とも増加傾向にあった。


【まとめ】経時的に高齢脊椎変性疾患手術症例の有意な増加を認めた。平均寿命の延長に伴い、社会復帰およびADL 拡大を目的とした積極的な手術療法が選択される傾向にあった。

2.当院における80歳以上の脊椎手術例に対する検討

 

成尾整形外科病院 

 

○辻 王成(つじ おうせい)、篠原道雄、久重雅由、小柳英一、浦門 操、成尾政一郎、成尾政圀

 

近年、高齢者の脊椎手術の割合は平均寿命の延びとともに増加傾向にあり。当院においても同様の傾向があり、手術例は2005年より明らかに増加を認めている。今回われわれは当院における80歳以上の超高齢者の脊椎手術症例の検討をしたので報告する。
対象は1977年1月から2010年12月まで当院にて80歳以降に手術療法を施行した384例である。男性202例、女性182例、手術時平均年齢は82.0歳(80歳から95歳)であった。手術部位の内訳は頚椎24例(再手術1例)、胸椎6例、腰椎354例(再手術77例)であった。再手術例は頚椎に関しては他院術後であり、腰椎に関しては当院術後が66例、他院術後が11例であった。ほとんどの症例が高齢のため併存症を有していたが、周術期に重篤な合併症は認めなかった。また、男女別の手術時平均年齢は男性81.9歳、女性82.2歳と平均寿命ほどの差がなく、活動性の高い男性が手術療法 を選択される傾向がみられた。

3.高齢者に対する脊椎手術術式と術後経過の検討

 

岡山大学大学大学院医歯薬学総合研究科

運動器知能化システム開発講座*1

岡山大学 整形外科*2  

 

○三澤治夫(みさわはるお)*1、田中雅人*2、杉本佳久*2、塩崎泰之*2、尾崎修平*2、馬崎哲郎*2、尾崎敏文*2

 

高齢者に対し脊椎手術を行うことも少なくない。過去2年間の脊椎手術347例を対象とし、手術時年齢により、70歳未満(235例)、70代(85例)、80歳以上(27例)の3群に分け検討を行った。主病巣の高位(頚椎:胸椎:腰椎(%)は、それぞれ30:36:34%、26:20:54%、33:11:56%であった。内固定手術はそれぞれ54%、40%、33%であった。平均術後臥床期間は70代、80歳以上でそれぞれ4.0日、2.9日、平均入院日数はそれぞれ22.2日、21.8日であった。自宅への退院はそれぞれ51%、41%であり、その他の患者は転院を要した。頚椎と腰椎の除圧術に限れば、平均臥床期間はそれぞれ2.8
日、2.4日、平均入院日数はそれぞれ19.0日、21.5日であった。高齢な群では侵襲の大きな手術の割合が少なかった。 70代と80歳以上の比較では、臥床や入院日数に有意な差は認めなかったが、年齢や全身状態を考慮し術式を選択した結果と考えられた。