第75回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題W)

23.高齢者腰椎変性側弯症(80歳以上)における腰痛と椎体骨髄浮腫の関連性

 

JA 広島総合病院 整形外科 

 

○山田清貴(やまだきよたか)、藤本吉範、高田治彦、平松 武、橋本貴士、宇治郷諭、清水 良、住吉範彦、高澤篤之

 

【目的】腰椎変性側弯症(DLS)では、X線上に側弯凹側部の椎間腔の狭小化、椎間腔バキューム、椎体終板の骨硬化、MRI上の椎体終板周囲の骨髄浮腫などを認める。この骨髄浮腫に注目し、高齢者DLSにおける腰痛との関連性について検討した。


【対象・方法】過去5年間に当科外来を受診した80歳以上の高齢者DLSのうち、6ヶ月以上の保存治療に抵抗するVAS 5/10以上の腰痛群25例(平均82歳)と、6ヶ月以上腰痛のない対照群13例(平均83歳)を対象とした。MRI T2 脂肪抑制像およびT1造影冠状断像にて椎体終板周囲の骨髄浮腫を評価し、腰痛の有無、圧痛高位との関連を調査した。


【結果】骨髄浮腫は、腰痛群では25例(100%)、対照群では5例(38%)に認めた。腰痛群の22例(88%)に棘突起圧迫による腰痛の再現を認め、圧痛高位と骨髄浮腫は22例全例で一致していた。


【結論】高齢者DLSにおける腰痛と、MRI上の終板周囲の骨髄浮腫には関連性があると考える。

24.85歳以上の高齢者の腰椎変性疾患に対する神経根ブロックの治療成績

 

島原整形外科 西村クリニック 

 

○西村行政(にしむらゆきまさ)

 

【目的】脊椎疾患における80歳以上の手術例も増えてきたが、85歳以上となると合併症などのため手術に消極的になることもある。その際は、薬物治療とともに神経根ブロックが行われることも多い。今回85歳以上の腰椎変性疾患に対する神経根ブロックの治療成績を調査した。


【対象および方法】対象は33例で、男性13例、女性20例、平均年齢87.3歳(85〜95歳)であった。ヘルニアが13例で、そのうち4例は外側ヘルニア、狭窄症が20例で、そのうち6例は椎間孔部狭窄、1例は椎間関節嚢腫が合併していた。これらでブロック後、最終調査時までの痛みの改善を調べた。


【結果】ブロックされた神経根は、L2が1例、L3が2例、L4が6例、L5が24例であった。最終的に、1例が手術となり、25例は1年以上の効果があり、2例は効果が半分、5例が効果不十分で内服加療を継続していた。また、外側ヘルニアや椎間孔部狭窄は神経根ブロックの効果があり、1年以上持続していた。しかし、狭窄症のなかの脊柱管内狭窄例では、13例中5例でブロックによる下肢痛の改善は不良であった。

25.高齢者腰椎変性側弯症(80歳以上)に伴う腰痛に対する低侵襲手術      

 

JA 広島総合病院 整形外科 

 

○山田清貴(やまだきよたか)、藤本吉範、高田治彦、平松 武、橋本貴士、宇治郷諭、清水 良、住吉範彦、高澤篤之

 

【目的】高齢者腰椎変性側弯症(DLS)に伴う腰痛に対し、経皮・経椎弓根的に骨セメントを椎間腔バキューム内に注入する手術(percutaneous transpedicular intervertebral Vacuum PMMA injection、PIPL)を施行している。本法の治療成績を、保存療法と比較検討する。


【対象・方法】過去5年間に施行したPIPI 施行群25例(平均83歳)と、同時期に6ヶ月間の保存治療を行った保存療法群15例(平均82歳)に対し、腰痛のVAS、ODI、腰痛と関連する画像所見としてMRI上の終板周囲の骨髄浮腫の変化を比較した。


【結果】平均VAS、ODIは、PIPI群では術前7.9、54%、術後1ヶ月2.4、33%、最終調査3.6、38%、保存療法群では治療前8.2、57%、治療後8.4、52%であり、PIPI群で術後早期から腰痛は改善した。骨髄浮腫はPIPI群では経時的に縮小したが、保存療法群では縮小しなかった。


【結論】PIPIは高齢者DLS腰痛例に有用な低侵襲手術である。

26.80歳以上の高齢者における腰部脊柱管狭窄症に対する低侵襲手術

 

川崎医科大学 整形外科(脊椎・災害)

 

○射場英明(いばひであき)、長谷川徹、三谷 茂、林田武継、安藤則行、加納健司、今野陽介、萩原 弘、牧山公彦

 

【目的】今回われわれは、80歳以上の高齢者における腰部脊柱管狭窄症(LCS)に対し、内視鏡下椎弓切除術(ME-OTT)を行った成績について報吉する。


【方法】2007年12月から2010年11月の期間にME−OTTを行った18例中、80歳以上の高齢者16例(21椎間)を対象とし
た。評価項目は、手術時間、出血量、全入院期間、術後入院期間、術後離床までの期間、JOAスコア改善率(%IP)である。


【結果】男性9例と女性7例、平均年齢は82.3歳(80〜86歳)、全入院期間は平均20.8日(12〜48日)、術後入院期間は平均18.2日(11〜41日)、離床までの期間は平均2.3日(1〜5日)、術後のJOAスコアは平均16.2点(6〜29点)、改善例 は11例で、%IPは平均39.5%(8〜100%)であった。


【考察】高齢者は、術後にベッド上での制約がある場合、約1週間で廃用症候群をきたす可能性がある。今回の結果から、内視鏡を用いた低侵襲手術は早期離床が可能であり、高齢者のLCSに対する治療法として有用である。

27.80歳以上の高齢者に対する内視鏡下椎弓切除術

 

九州記念病院 整形外科

 

○吉田正一(よしだまさかず)、武内晴明、高良 健、岡山洋二

 

【はじめに】高齢者の手術では周術期の内科的合併症が問題になる。手術侵襲を最小限にする為、平成20年からは内視鏡下椎弓切除術(MEL)を第一選択としてきた。80歳以上の高齢手術患者におけるMELの成績を検討した。


【対象と方法】平成20年からの全手術患者319例中、80歳以上は49例(15.4%)で、内19例(38.8%)がMELだった。平均年齢は84.6歳(81〜89)、男性10例女性9例であった。術前の全身状態・手術時間と出血量・術後合併症・JOA scoreの改善率・歩行能の変化などを求めた。


【結果】ASA Physical Status はRisk2が12例、Risk3が7例で、様々な既往があったが、特になしも3例あった。手術時間は60〜192分(平均73分/椎間)、出血は少量〜100 gであった。術後の内科的合併症はなかった。改善率は平均53.8%(12.5〜82.6)。歩行困難が11例あったが全例歩行自立し、18例が自宅へ退院となった。


【まとめ】症例数は少ないが、術後合併症の発生なく、Risk3までならば高齢でも安全性の高い手術と考えられる。 MELでは多椎間になると2倍3倍と手術時間が延長する為、現在のところ2椎間までを適応とし、難易度が高い再手術例も除外している。適応の拡大には手術手技の向上と手術時間の短縮が課題である。

28.当院における超高齢者の腰椎手術成績

 

呉共済病院 整形外科 

 

○中西一夫(なかにしかずお)、山根健太郎、楢崎慎二、内田圭治、寺元秀文

 

【はじめに】2008年から2010年に当院で手術を施行した80歳以上の超高齢者の腰椎手術成績について検討した。


【対象および方法】脊柱変形が主訴ではない腰部脊柱管狭窄症患者19例を対象とした。男性9例、女性10例、平均年齢は84歳、平均術後経過観察期間は9ヶ月である。2つ以上の既往症を持った患者は16例、認知症患者は2例であった。手術方法は従来法6例、内視鏡・顕微鏡視下手術13例であった。

 

【結果】術後経過観察中に2名の患者が亡くなっていた。平均手術時間149分、平均出血量43ml、平均在院日数20日。 VASは腰痛・下肢痛とも優位に改善し、JOAスコアは6.9→13.4点で平均改善率は80%であった。RDQは17.6→7.4、自己評価抑うつ尺度(SDSスコア)も47→38と有意に改善していた。


【考察】高齢社会の現在、さまざまな既往症をもった高齢者に対して手術する機会が増えてきている。大きな切開を加える従来法に比べ、低侵襲手術は術後疼痛や出血量が 少なく適応を選べば超高齢者に対しても有用な手術である。

29.80歳以上の高齢者腰部脊柱管狭窄症に対する手術的治療の経験

 

広島大学大学院 整形外科学 

 

○大田 亮(おおたりょう)、田中信弘、中西一義、亀井直輔、中前稔生、泉文一郎、藤岡悠樹、越智光夫

 

【目的】高齢者は全身予備能が低下していたり多くの既往歴を持つことが多いが、手術的治療が必要な高齢者は増加してきており、侵襲の少ない手術方法が必要とされる。この度我々は、80歳以上の高齢者腰部脊柱管狭窄症に対する治療成績を検討したので報告する。


【対象及び方法】2003年から2010年までに手術を施行した80歳以上の腰部脊柱管狭窄症の患者39例(男性21例、女性18例、手術時平均年齢83歳)を対象とした。腰部脊柱管狭窄症例33例、腰椎変性すべり症が4例であった。手術椎間は単椎間が13例、2椎間が18例、3椎間以上が8例であった。37例に顕微鏡視下除圧術を、2例に内視鏡下除圧術を施行した。固定術は併用しなかった。


【結果】JOAスコアは術前平均10.0点(-3〜21点)から調査時平均17.7点(3〜26点)へ改善し平均改善率は45.2%であった。術後の麻痺の悪化や生命に関わる重篤な合併症などは認めなかった。

【考察】高齢者に対する後方除圧術は低侵襲な術式であり、高齢者に対しても有用な術式と考える。