第75回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題X)

30.高齢者腰部脊柱管狭窄症患者の臨床像と手術成績の検討

 

鳥取大学 整形外科*1

島根県立中央病院 整形外科*2

三朝温泉病院 整形外科*3

山陰労災病院 整形外科*4

松江市立病院 整形外科*5

益田赤十字病院 整形外科*6 

○楠城誉朗(なんじょうよしろう)*1、永島英樹*2、谷田 敦*1、土海敏幸*1、村田雅明*2、

  森尾泰夫*3、石井博之*3、谷島伸二*3、橋口浩一*4、濱本佑樹*5、亀山康弘*6、豊島良太*1

 

高齢者(80歳以上の腰部脊柱管狭窄症患者の患者背景、手術成績を検討した。
関連病院6施設で、2006年〜2010年 に腰部脊柱管狭窄症の診断で、手術を行った468例のうち、腰椎固定術・再手術例、下肢手術の既往者、腰椎ヘルニア・分離症・椎体骨折・不安定症・変性側弯例、血液透析・関節リウマチ例を除いた174例を対象とし、併存疾患、手術椎間数、術中出血量、術前後腰椎JOA score などについて年齢80歳以上の32例(H群)と80歳未満の142例(L群)とで比較検討した。
結果は併存疾患の有病率はH群で71.9%、L群で60.6%だった。平均手術椎間数はH群で1.9椎間、L群で1.7椎間であった。平均術中出血量はH群で210g、L群で114gとH群で有意に多かった。JOA scoreはH群で平均13.2点が術後1.5点に改善し、L群では平均14.8点が22.6点に改善した。
高齢者では多椎間の手術が必要になることが多く、併存疾患も多いため、手術中の循環動態の管理を行い出血に注意する必要がある。

31.腰部脊柱管狭窄症に対して観血的治療を行った80歳以上の症例についての検討

 

熊本整形外科病院 

○平川 敬(ひらかわけい)、内田 仁、矢渡健一、栄 輝已

 

【目的】腰部脊柱管狭窄症(以下LSCS)の診断で観血的治療を行った80歳以上の症例の問題点を明確にし、その対処法について考察を行う。


【方法および結果】当院で平成18年〜23年ま万5年間にLSCSの診断にて除圧術を行った症例は536例(41〜85歳 平均年齢68.2歳)。この内80歳以上の症例は36例6.7%であり、年齢は80〜85歳で平均81.2歳、全例除圧のみで平均除圧椎間は1.5椎間であった。既往歴は高血圧21例、代謝異常11例、心疾患11例、腎疾患3例等であった。術後の症状の改善については悪化した症例はなく、やや改善が12例、改善が24例であった。術後の合併症として不穏症状4例、出血性胃潰瘍1例、創部感染1例、心不全1例、肺炎1例に認めたが全例退院時には回復した。


【考察】高齢者に対するLSCSの観血的治療の適応は本人家族の希望と保存的治療にて改善せず症状の増悪を認める症例に対して 行っている。様々な他科疾患を伴っており、手術侵襲による全身状態の悪化が懸念され、術前に十分な全身状態の把握と症状の責任部位を明確にした上での可及的低侵襲と早期リハビリを目指すべきと考えられた。

32.80歳以上の腰部脊柱管狭窄症に対する手術成績の検討      

 

三朝温泉病院 整形外科 

○谷島伸二(たにしましんじ)、持田 茂、深田 悟、石井博之、森尾泰夫

 

【はじめに】80歳以上の高齢者における腰部脊柱管狭窄症の手術成績を検討したので報告する。


【対象】2006年1月から2010年3月までの間に腰部脊柱管狭窄症(すべり症を含む)で手術を行った80歳以上の症例31例(以下高齢者群:すべり症合併6例。平均年齢52歳、男性12例、女性19例)を対象とした。周術期合併症、術後成績を検討し、同時期に手術を行った80歳未満の症例127例(以下コントロール群:すべり症合併26例。平均年齢69歳、男性65例、女性62例)と比較した。


【結果】高齢者群では27例に除圧術、4例に後方除圧固定術を施行した。最終経過観察時の平林の改善率は高齢者群42%、コントロール群50%であった。周術期の合併症は高齢者群18%、コントロール群17%であった。改善率、周術期合併症の発生頻度にコントロール群と比較して有意差を認めなかった。

33.高齢者(80歳以上)腰椎手術の術後成績と合併症の検討

 

京セラ(株) 横浜事業所*1

けいゆう病院 整形外科*2

長崎労災病院 整形外科*3

○山根宏敏(やまねひろとし)*1、日方智宏*2、古川 満*2、小西宏昭*3、鎌田修博*2

 

【目的】高齢者(80歳以上)腰椎手術の術後成績に影響を及ぼす因子について明らかにすること。


【方法】2008年1月から2010年3月までに高齢者(80歳以上)に対し腰椎手術を施行した36例のうち、1年以上経過観察可能であった28例を対象とした。調査項目は、術前診断、術式、術前・後合併症、術前・後のJOAスコア、ADL(介護保険制度の日常生活自立判定基準を用いた)、平林の改善率とした。


【結果】術前内科合併症は、23例(82%)に認めたが、術前合併症が術後に悪化した症例や重大な全身合併症は認めなかった。JOA スコアは術前12.6点が術後22.3点に改善しており、改善率は58.9%であった。術前ADLはJ1群23例、J2以下群5例(J2:2例、A1:3例)であり、J1群の改善率は64%、J2 以下群の改善率は35.7%で有意差を認めた。ADLの低下を5例に認め、4例は改善率が25%以下であった。


【考察】高齢者に対して腰椎手術を施行し、良好な結果を得た。術前内科合併症は高率であったが、他科と連携し全身状態を把捉し管理することで術後の全身合併症は認めなかった。術前ADLは、術後成績における 影響因子の一つと考えられた。

34.高齢者の腰部脊柱管狭窄症の手術成績

 

佐田厚生会佐田病院 整形外科*1

秋山とおる整形外科*2

 

○藤原雅巳(ふじわらまさみ)、佐藤 英*1、宮岡 健*1、烏山和之*1、秋山 徹*2

 

【はじめに】腰部脊柱管狭窄(変性すべりを含める)における低侵襲手術として、棘突起縦割椎弓拡大開窓術を2006年より施行している。同時期におこなった高齢者と壮年者の臨床成績を比較・検討した。


【対象】2006年1月以降2010年12月までに手術治療をおこなった80歳以上の脊柱管狭窄症例61例(うち変性すべり23例)・男性38例・女性23例、手術時年齢は80〜93歳(平均 82.4歳)であった。同時期に同じ手術適応で、同術式で旅行した60歳未満を壮年者として対照群とした。調査項目は除圧椎間数、術前後JOAscore,と改善率(平林法)、1椎間あたりの手術時間、術中出血量、術中合併症、術後在院日数、既存合併症などである。


【結果】既存合併症、術後在院日数は高齢者群で多かった。治療成績の点では、明らかな有意差は無かった。


【結論】高齢者においても、壮年者とほとんど遜色のない良好な術後成績を得られた。翌日よりの早期離床が可能な低侵襲手術である棘突起縦割椎弓拡大開窓術は、有用な手段と考えられた。

35.80歳以上の腰部脊柱管狭窄症患者に対する手術

 

公益社団法人鹿児島共済会 南風病院

 

○川添泰臣(かわそえやすおみ)、富村奈津子、鮫島浩司、川内義久

 

【目的】当院において手術を施行した腰部脊柱管狭窄症患者の手術を調査し、手術法の変遷、80歳以上の高齢者の割合、80歳未満の症例との比較検討を行ったので報告する。


【対象及び方法】1983年から2010年までに当院で手術を行った腰部脊柱管狭窄症患者、男性798例、女性509例の計1307例である。内80歳以上は男性93例、女性92例の185例である。検討項目は、手術時平均年齢の推移、手術件数及び術式の推移、手術時間、出血量および入院期間の比較、周術期合併症である。


【結果】1993年に3.6%であった80歳以上の患者の割合が、近年は20%前後であった。手術時間は除圧術、固定術ともに両群での有意差はなかった。 80歳以上の手術法では有意に除圧術の割合が多かった。出血量及び入院期間には両群に有意差は認められなかった。


【考察】高齢者に対する下痢患者数は増加傾向にあり、より侵襲のある術式も選択されている。今後さらに高齢者に対する手術が増えることが予想され、個々の症例ごとに適切な治療を選択することが重要と考える。

36.高齢者(85歳以上)における腰椎手術の適応、術式選択と問題点

 

九州厚生年金病院 整形外科  

○土屋邦喜(つちやくによし)、川口謙一、冨田和孝

 

【目的】85歳以上の高齢者における腰椎手術の術式、術後経過および問題点を検討した。


【対象および方法】当科における2006年以降の腰椎手術中85歳以上は18例で年齢は85-97歳であった。脊柱管狭窄症が16例、椎間板ヘルニアが2例であった。


【結果】1椎間手術7例、2椎間6例、3椎間5例と多椎間除圧となる例が多かった。固定術は一例のみに施行された。内視鏡手術の適応は2例であった。全例術前の下肢症状は軽減した。平均在院日数は13.6日で自宅退院率は89%であった。周術間の重篤な合併症は認めなかった。2例に経過中下肢痛の再燃を認めたが再手術となった症例はなかった。


【考察】高齢者における脊椎手術の問題点として高度な変性、多椎間病変、骨粗鬆症等が挙げられる。回復自体は比較的良好であるが、術後意欲の低下によりリハビリの遅延が見られた症例が存在し、骨、軟部組織双方に対し侵襲を抑えた手術とともに早期リハビリテーション開始が重要であると考えられた。多椎間手術となった症例が自覚症の改善がやや不良であった。

37.高齢者の腰椎変性すべり症に対する後方固定術の検討

 

長崎労災病院 整形外科  

○久芳昭一(くばしょういち)、小西宏昭、奥平 毅、前田和政、吉居啓幸

 

高齢者の腰椎変性すべり症に対する後方固定術の問題点について検討したので報告する。

方法は2009〜2010年に後側方固定術(PLF)と後方進入椎体間固定術(PLIF)を行った80歳以上の高齢者15例(高齢
群)と60歳代の37例(非高齢群)を対象とし比較検討した。検討項目は術中出血量、手術時間、術後輸血の有無、術後合併症とせん妄発生の有無、クリニカルパス使用の有無、離床期間、術後入院期間と転帰について比較検討した。

術中出血量と手術時間、輸血の有無は2群間で有意差はなかった。高齢者群の3例に合併症(創感染1例、胆嚢炎1例、神経障害1例)が発生し、4例にせん妄が発生し非高齢群より有意に多かった。クリニカルパスを使用した例は非高齢者群に多かった。離床期間と術後入院期間は高齢者群が長かった。他施設への転院は高齢者群に多い傾向であった。高齢者に対し後方固定術を行う場合は合併症、せん妄の発生に注意し、クリニカルパスを活用し離床期間と入院期間の短縮に努める必要があると思われた。

38.高齢者の腰椎変性疾患における後方経路腰椎椎体間固定術の検討

 

国立病院機構 岡山医療センター 整形外科  

○橋本敏行(はしもととしゆき)、中原進之介、竹内一裕、高橋雅也

 

我々は、高齢者の腰椎変性疾患においても全身状態に問題が無く適応があれば後方経路腰椎椎体間固定術(以下PLIF)を施行してきた。今回はその有効性と安全性を検討した。
2008〜2009年に腰椎変性疾患でPLIFを施行した80歳以上の24 名(以下A群)を対象とし、2009年に同疾患でPLIFを施行した70〜79歳以下の55 名(以下B群)を比較とした。これらの症例のJOA Scoreとその改善率、骨癒合率、出血量、手術時間と術後合併症を検討項目とした。


【結果】術前平均JOA ScoreはA群が13.1点、B群が13.7点。平均JOA改善率はA群で26.9%、B群で48.0%。骨癒合率はA群で86.4%、B群で88.5%。平均手術時間はA群で141.2分、B群で140.2分。平均出血量はA群で302.7mlB群で339.1ml。術後合併症は、脳梗塞の発症が両群で1名ずつ、術後感染がB群で1名、頚髄症の出現がA群で3名、B群で1名であった。

 

【考察】A群では腰椎部以外の要因が改善の 妨げになる可能性が考えられた。