第76回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題1)

1.胸椎良性腫瘍切除脊柱再建術後ロッド折損に 対して再手術を施行した1例

 

島根大学 整形外科*1 浜田医療センター 整形外科*2

 

○松崎雅彦*1(まつざきまさひこ)、河野通快*1、国村大樹*1、 内尾祐司*1、柿丸裕之*2

 

【目的】胸椎良性腫瘍切除脊柱再建術後、両側ロッド折損を生じたが、ロッドを交換すること なく再手術を施行した1例について報告する。

 

【対象および方法】83歳、女性。7年前に対麻痺を生じ、その原因であったsolitary fibrous tumorを切除、脊柱再建術(T5-L1 posterior instrumentation、骨移植術)を行った。術後数年で両側ロッド折損、その後、後彎変形が進行し、対麻痺が再増悪し、歩行不能となり、再手術を行った。手術はロッドを交換することなく、比較的低侵襲に再再建術が可能であった。術後2年の現在、独歩可能であり、経過良好である。

2.頚椎インストルメントが折損した2例

 

鳥取大学 整形外科*1 三朝温泉病院*2 

 

○武田知加子(たけだちかこ)*1、永島英樹*1、三原徳満*1、村上大気*1、谷田 敦*1、

 楠城誉朗*1、豊島良太*1、土海敏幸*2

 

頚椎インストルメンテーション手術後、スクリューが折損した2例を経験したので報告する。

【症例1】56歳男性、アテトーゼ型脳性麻庫。手指巧緻運動障害と左上肢脱力感のため当科に紹介となった。画像検査でAASとC3/4で脊 髄圧迫を認め、C1-T1後方固定術とC3-5椎弓形成術を行った。2か月後に頚部痛が出現し、 単純写真でC2椎間関節貫通スクリューの折損、MRIでC1/2での脊髄圧迫と髄内輝度変化を認めた。O−C2後方固定術、C1後弓切除術を追加 し前回のインストルメントとドミノで連結した。術後3年でO−T1の固定は完成しADLも改善している。 

【症例2】56歳男性、血液透析患者。手指巧緻運動障害と歩行障害のため当科に紹介となった。画像検査でC1骨折後変形治癒とAASとC3/4-5/6で脊髄圧迫を認めた。O−C2後方固定術、C1後弓切除術、C3-7椎弓形成術を行った。術後6か月の単純写真でC2椎弓根スクリューの折損を認めたが、症状がなく経過を観察した。術後1年半で固定は完成しADLも改善している。

3.不安定型仙骨骨折に対して腰椎腸骨固定術を行った1例

 

鳥取県立中央病院 整形外科  

 

○村田雅明(むらたまさあき)、山本哲章

 

垂直方向への高度な不安定性を呈するU-shaped sacral fractureに対して、脊椎インストウルメンテーションを用いて腰椎腸骨固 定術を行った1例を経験したので報告する。症例は37歳男性。既往歴は統合失調症。6mの高 さから飛び降り受傷。左肘頭開放骨折、第1腰椎破裂骨折、仙骨骨折を認めた。画像では仙骨 は両側の仙骨椎間孔に縦方向に走る骨折線とS2-S3間に水平方向に走る骨折線を認め、中枢 骨片は後方に回転しながら転位していた。臨床症状は体動時に激しい両下肢痛を訴えギヤッ ジ座位も不能であった。下肢痛はS1神経根症状と思われ、肛門周囲の知覚は残存していた。 手術はL4、L5に椎弓根スクリューを挿入し、腸骨スクリューとの間で長軸方向に牽引し可及 的に整復し固定した。骨移植は行っていない。S1神経根は骨折部で著明に圧迫されていたが、 椎弓切除と長軸方向への牽引により圧迫は解除された。術後下肢痛は消失した。術後2週よ り歩行開始、排泄もある程度は自力で可能となったが、術直後より右L4、L5,左L5領域の麻痺が出現した。骨折部の固定性は良好で、荷重 によるアライメントの変化は認めなかった。

4.胸腰椎移行部、腰椎に対する後側方固定術の骨癒合成績

 

中部医師会立三朝温泉病院 整形外科  

 

○谷島伸二(たにしましんじ)、土海敏幸、深田 悟、 石井博之、森尾泰夫

 

【はじめに】胸腰椎移行部、 腰椎にinstrumentationを使用した後側方固定術を行った症例に対して骨癒合成績を検討したので報告する。                                                            

 

【対象】平成17年4月から平成22年3月までの間に腰椎後側方固定術を行い半年以上経過観察が可能であった61例である。腰部脊柱管 狭窄症24例、偽関節15例、腰椎すべり症15例、分離症2例、腰椎椎間板ヘルニア5例であった。移植骨として自家腸骨を34例、同種骨20例、局所骨十β-TCPを7例に使用した。単純レントゲン、CTにて骨癒合の有無を調査し、合併症についても検討した。 

 

【結果】骨癒合率は78.7%であった。Screw周囲のradiolucent lineは13例に認めた。偽関節の症例で1例にcut outを生じ、1例に椎体に充填した人工骨の大量の逸脱を認めた。偽関節の発生率は年齢、疾患別による有意差を認めなかった。他家骨移植例、3椎間以上の固定例の骨癒合率は有位に低下していた。

 

【考察】他家骨使用例、多椎間固定例で骨癒合 が不良であり注意が必要である。

5.腰椎変性すべり症に対する固定術の術後成績と問題点

 

山口大学 整形外科  

 

○末冨 裕(すえとみゆたか)、加藤圭彦、寒竹 司、鈴木秀典、今城靖明、吉田佑一郎、田口敏彦

 

【目的及び方法】腰椎変性すべり症に対し非固定の腰椎椎間拡大術を施行し、10年以上の術後成績を検討し、% of slip15%以上の症例で治療成績が劣っていたことを報告した(中部整災誌51:981-982,2008)。その結果2008年以降% of slip15%以上の症例にはPLIF+instrumentationを行っている。今回PLIF+instrumentation 17例と、2001年以前に拡大術を施行した8例を対象とした。治療成績は他覚所見を除くJOAscore23点満点、自覚症状(9点)、日常生活動作(14点)を評価した。X線学的には、罹患椎間のすべり実測値、前後屈での差、% of slip、隣接上位椎間の可動域、椎間板高の変化を検討した。                                                         

 

【結果】JOAscoreは術前平均PLIF群10点、拡大術群11.6点、改善率は45.9%、26.3%と有意差はないがPLIF群に成績良好の傾向がみ られた。自覚症状改善率は有意差ないが、改善点数はPLIF群2.83点、拡大術群1点であり、前者によい傾向がみられた。罹患椎間のすべり実測値の差(調査時-術前)ではPLIF群が有意に小さかった。隣接上位椎間の可動域および椎間板高の変化はPLIF群で有意に大きかったが、臨床症状への明らかな影響は認められなかった。Pedicle screwの緩みを3例に認めた。

6.80歳以上の脊椎固定術患者に対する手術

 

公益社団法人鹿児島共済会 南風病院  

 

○川添泰臣(かわそえやすおみ)、富村奈津子、鮫島浩司、川内義久

 

【目的】当院において脊椎固定手術を施行した80才以上の患者ついて調査し、手術成績と周術期合併症について検討する。   

 

【対象及び方法】対象は2008年から2011年までに当院で脊椎固定手術を行った80歳以上の症例,男性11例、女性11例の22例である。検討項目は、手術時間と出血量、JOAスコアと改善率、入院期間、周術期合併症である。    

 

【結果】手術時間の平均は187分(115分〜290分)、出血量の平均は387g(50g〜2730g)であった。術前JOAスコアの平均は10.8、術後の平均は16.1であり,平林の改善率は平均31.2%(0%〜61.5%)であった。平均在院日数は32.7日間であり、80歳未満の平均31.5日との有意差は認めなかった。周術期の合併症に敗血症性ショックによる死亡例が1例、術後硬膜外血腫が2例、感染による創離開を1例に認めた。

【考察】手術によるJOAスコア改善率は高齢になるほど減少する傾向にあるものの、自覚症状の改善は得られている症例が認められる。侵襲の大きい固定手術では周術期の合併症も重篤であり、正しい診断と的確な術式の選択が重要と考えられる。