第76回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題3

13.胸椎後縦靭帯骨化症の後方除圧固定術後に固 定最下位椎体で骨折し麻痺増悪した2例

 

独立行政法人労働者健康福祉機構 総合せき損センター 整形外科

 

○林 哲生(はやしてつお)、前田健、弓削 至、植田尊善、森 英治、河野修、高尾恒彰、坂井宏旭、

 益田宗彰、森下雄一郎、芝啓一郎

 

胸椎後縦靭帯骨化症(以下OPLL)に対する手術治療は、後方除圧固定術が主流になりつつあるが、多椎間にOPLLが存在することが多い為、long fusionになることも少なくない。今回、胸椎OPLLに対する除圧固定術後に固定最下位椎体で骨折し麻痺増悪した症例を経験した為、報告する。

 

症例1:55歳 女性。4年前に胸椎OPLLにてT8-11除圧固定術を施行した。経過良好であったが、歩行障害にて上位椎でのOPLLおよび黄色靭帯骨化症にてT2−7除圧固定術施行した。術後1ヵ月にて突然両下肢麻痺増悪した。脊髄造影・CTMにてT7椎体骨折と造影剤の途絶を認めた。

 

症例2:69歳 女性。10年前にL3−S固定術施行した。術後経過良好であったが、歩行障害出現し、胸椎OPLLの診断にてT1−9除圧固定術施行。術後1ヵ月にて突然、両下肢麻痺増悪した。CT・MRIにてT9椎体骨折を認めた。

14.骨粗鬆症性脊椎椎体に対する椎弓根スクリュー脱転予防の工夫〜ポリエチレンテープによる椎弓下ワイヤリングの補強強度〜

 

独立行政法人国立病院機構 呉医療センター*1

Emory Spine Center*2 

 

○濱崎貴彦(はまさきたかひこ)*1*2、安本正徳*1、蜂須賀裕己*1、泉田泰典*1、仁井谷学*1、好川真弘*1、

 濱田宜和*1、杉田孝*1、William C.Hutton*2

 

頚椎インストルメンテーション手術後、スクリューが折損した2例を経験したので報告する。

【目的】骨粗鬆症性脊椎椎体に挿入した椎弓根スクリューをポリエチレンテープにより椎弓下ワイヤリングで補強することで、スクリューの脱転を予防する可能性がある。本研究の目的はこの補強強度について新鮮屍体標本を用い運動力学的に検討することである。

【方法】胸腰椎移行部新鮮屍体標本(24椎体(T10-L2)、平均81歳)を用い、分離した各椎 体をポットの中でセメント固定後、両椎弓根に椎弓根スクリューを挿入しロッドと連結した。 一方は椎弓根スクリューのみ、他方は椎弓根スクリュー+テープによる椎弓下ワイヤリング で補強し、ポットごと測定器具に設置してロッドに25Nずつ増加させる力をかけ、スクリューがゆるみをきたすまでの強度を測定した。

【結果】補強強度を比較すると2.00倍で2群間に有意差を認めた。またゆるみを来すまでの強度はスクリューのみでは骨密度と正の相関 を示したのに対し、椎弓下に補強したスクリューは骨密度との有意な相関がなかった。よってワイヤリングによる補強は特に骨密度の低い 症例に対して有用であると思われた。

15.インスツルメントを用いた腰椎固定術後の隣接椎間障害対策としての制動術の問題点

 

大分整形外科病院  

 

○大田秀樹(おおたひでき)、松本佳之、中山美数、酒井 翼、小林達樹、井口洋平、木田浩隆、竹光義治

 

【目的】われわれが行ったGraf bandとSSCの制動術の手術成績を検討し、その問題点について述べる。

 

【方法】Graf bandは10年以上経過し直接検診できた68例、SSCSは3年以上経過した51例を調査した。

 

【結果】Grafbandは術前JOA score12.9が術後22.6、改善率は59.8%。32.4%に椎間関節の自然癒合が確認され、隣接障害による再手術率は7.4%、当該椎間の破綻による再手術率は2.9%であった。SSCSは術前JOA score14.6が術後26.1、改善率は79%。椎間関節癒合を1例に認め、隣接障害による再手術を1例(1.9%)に要した。

【考察】Graf bandの2.9%に当該椎間の破綻のため再手術を要し、制動力に問題があった。SSCSは隣接障害による再手術率は1.9%であり、これは同時期のTLIF症例8.5%に隣接障害で再手術がなされていたのと比較して低率であった。

 

【結語】制動術は固定術に比較し隣接椎間障害は少ないが、予期せぬ椎間関節癒合もある。

16.腰椎変性疾患に対する多椎間制動術は多椎間固定術の問題点を解消できるか?

 

大分整形外科病院  

 

○酒井 翼(さかいつばさ)、大田秀樹、松本佳之、中山美数、井口洋平、小林達樹、木田浩隆、竹光義治

 

〔はじめに〕腰椎変性疾患に対する多椎間インストウルメンテーション手術は侵襲が大きく、それに伴う問題も少なくない。今回腰椎変性疾患に対しrigid fusionとしての2椎間TLIFを施行した症例と、dynamic non-fusionstabilizationとしてのSSCSを用いた2椎間制動術を施行した症例で比較検討を行った。

 

〔対象・方法〕対象は2005年4月より2010年9月の間に2椎間の腰椎後方インストウルメンテーション手術を行い、1年以上経過観察可能であった症例で、2椎間TLIFを施行した13例(以下TLIF群)と2椎間SSCSでの制動術を行った12例(以下SSCS群)である。評価項目は、手術時間、術中術後出血量、JOAスコア及びその改善率(平林法)、隣接椎間障害の有無、再手術の有無、椎弓根スクリューのルーズニングの有無である。

 

〔結果〕手術時間、出血量ともにSSCS群が有意に少なかった。JOAスコア改善率に有意差は なかったが、隣接椎間障害の発生はTLIF群が 有意に高頻度で2例に再手術を要した。椎弓根スクリューのルーズニングは共に1例ずつ認めた。

 

〔まとめ〕SSCSを用いた腰椎制動術はより低侵襲で、隣接椎間障害の発生も抑制しうる。

17.脊椎外傷における後方固定術の出血合併症への対策〜経皮的椎弓根スクリュー固定を用いて〜

 

高知医療センター 整形外科  

 

○土井英之(どいひでゆき)、時岡孝光

 

【はじめに】脊椎外傷のインプラントを用いた後方固定術の有用性は既知の通りである。しかし、受傷直後の手術は軟部組織損傷や凝固系のバランスなどから出血の合併症が問題となる。今回我々は経皮的スクリュー固定を通じて比較的早期に固定術を行った多発外傷の症例を経験したので報告する。

 

【対象】経皮的スクリュー固定を行った6例を対象とした。固定インプラントはDepuy Spine社製VIPERを用いた。合併損傷は外傷性血気胸が3例、頭蓋内出血が2例などであった。全例にナビゲーションシステムを併用して行った。

【結果】手術までの日数は平均3.3日(0-8日)、 出血量は平均89(50-180)ml、手術時間は平均118(88-155)分であった。                                                                         【考察】Conventionalな手術では出血量は多く、その出血により手術時間の延長も生じていたが、今回の経皮的椎弓根スクリュー固定法ではそのいずれも短縮でき特に多発外傷を伴った症例では効果が大きいと考えられた。しかし骨移植が後方に行えないなど検討が必要な問題点もある。