第76回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

18.頸椎椎弓根スクリュー(PS)の刺入精度の検討

 

南部徳洲会病院 整形外科*1 琉球大学 整形外科*2

 

○金城幸雄(きんじょうゆきお)*1、砂川秀之*2、新垣宜貞*1、根間直人*2

 

【はじめに】PSは他のスクリューに比し、固定性が強固ですが、椎骨動脈(VA)、神経損傷の危険性を伴います。私たちは原則、径3.5mmのPSを椎骨動脈未発達側の片側のみに刺入して、危険性の防止に努めています。

 

【対象および方法】対象は11例(男性7例、女性4例)、年齢は25〜90歳(平均63.3歳)で、使用PSは32本でした。併用スクリューは外側塊スクリュー7本(2例)、椎間関節スクリュー3本(2例)、後頭骨スクリュー15本(3例)でした。疾患の内訳はCSM4例、脊椎腫瘍3例、外傷2例、RA1例、歯突起骨1例。検討項目は椎弓根径および椎間関節変形の有無とPS逸脱程度・頻度、合併症です。

 

【結果】PS逸脱率は5/32本(15.6%)でした。椎弓根径4mm以下の症例と4.5mm以上でも椎間関節変形を有する例で逸脱を認めました。合併症は硬膜外血腫1例(スクリュー刺入以外の部位)、深部感染1例、外側塊入れ替え1例でした。 

 

【考察】PS安全刺入のために、椎弓根径が4.5mm以上で椎間関節変形のない症例に刺入を限定することが必要と考えられました。

19.頚椎椎弓根スクリューの逸脱と合併症に対する対策一椎骨動脈損傷を中心に−

 

高知医療センター 整形外科

 

○時岡孝光(ときおかたかみつ)、土井英之

 

頚椎椎弓根スクリュー(PS)の逸脱による合併症を検討した。                               

<対象>2005年から2011年8月までに当院で施行した中下位頚椎のPS固定術は89例で、463本のPSを挿入した。術後CTでPSの逸脱を評価し、根尾分類のGrade2:スクリュー径1/2以上の逸脱、Grade3:完全逸脱を臨床的逸脱とした。

<結果>PS逸脱はGrade2が10本、Grade3が11本、計21本(逸脱率4.5%)で、逸脱方向は外側(横突孔)が6本、内側(脊柱管)が15本であった。ナビ機種では前半のCT basedでは207本中15本が逸脱(6.3%)、後半のIso-Cでは256本中6本(2.3%)であった。合併症としてVA損傷は3例(3.4%)で、動脈性出血1例、内膜解離による遅発性小脳梗塞1例、無症候性小脳梗塞1例であった。外側逸脱6本中3本(50%)でVA損傷となっていた。一方15本の内側逸脱があったが神経根脊髄損傷はなかった。

<考察>PS挿入は脊柱管内壁を穿破すべく、ナビで内壁を狙って掘削するのが安全である。

20.後頭骨頚椎固定術後に気道閉塞をきたした2症例

 

県立広島病院 整形外科  

 

○西田幸司(にしだこうじ)、林 聖樹、松下亮介、井上博幸、 村上祐司、延藤博朗、望月 由

 

近年、後頭骨頚椎固定術に気道閉塞をきたした症例の報告が散見される。我々は後頭骨頚椎固定術後に気道閉塞をきたした2症例を経験したので報告する。

 

【症例1】84歳、男性。バイクで転倒しC1,2骨折受傷し当科紹介入院。ハローベスト固定したが骨癒合得られず後頭骨頚椎固定術を施行。抜管後呼吸障害出現したため、気管切開しICU入室となった。

 

【症例2】58歳、男性。関節リウマチによる環軸椎亜脱臼に対しMagerl法施行したが、偽関節となったため後頭骨頚椎固定術を施行。術後、麻酔科医が抜管困難と判断、ICU入室となった。

 

【考察】近年、後頭骨頚椎固定術後の気道閉塞の原因として後頭軸椎角(O−C2角)が注目されている。症例1ではO−C2角が術前より10°以上屈曲しており、屈曲位固定が原因と考えられた。症例2ではO−C2角は術前とほぼ同等であった。関節リウマチの既往があり、挿管困難であったことが原因と考えられた。

 

【まとめ】後頭頚椎固定術後に気道閉塞をきたす可能性があるため、術後抜管時には慎重な評価が必要である。

21.RA上位頚椎病変に対する脊椎後方再建術の周術期合併症の検討

 

鹿児島赤十字病院 整形外科  

 

○坂本 光(さかもとひかる)、武冨栄二、斎藤嘉信、土持兼之、有島善也、砂原伸彦

 

当院では、RA上位頚椎病変に対し主として環軸関節前方亜脱臼の整復性脱臼に対しては環軸椎固定術を、環軸関節垂直亜脱臼を中心とした非整復性脱臼には後頭頚椎固定術を選択し手術を行っている。今回我々は、RA上位頚椎病変に対する後方脊柱再建術を行った症例の周術期の合併症について検討したので報告する。

 

対象は、1999年以降RA上位頚椎病変に対し、環軸椎固定術を施行した51例、後頭頚椎固定術を施行した44例、計95例とした。術後深部感染を2例に認め、1例はインストウルメントを残し持続洗浄にて治癒し、1例はインストウルメントを抜去により治癒した。その他の術後早期合併症は22例に認め、術後創部離開が8例、尿路感染が4例、せん妄が3例、胃潰傷が2例、小脳梗塞、急性口頭蓋炎、逆流性食道炎、水頭症を1例ずつ認めた。また術前合併症は59例に認め、リウマチ内科医、麻酔科医との緊密な連携が必要であった。

 

RA患者は周術期の合併症の頻度が高く、インストウルメントを用いた脊柱再建術には可能な限り手術侵襲を小さく、手術時間の短縮が必要と考えられる。

22.頚椎後方固定におけるInstrument surgeryの問題点とその対策

 

徳島市民病院 整形外科  

 

○千川隆志(ちかわたかし)、遠藤 哲、中川偉文、中村 勝、中野俊次、島川建明、湊 省

 

(目的)頚椎後方固定を要した症例において、Instrument surgeryの問題点についてRetrospectiveに調査したので報告する。     

 

(方法)2007年以降、頚椎後方固定が必要であった27例を対象とした。EnhancementしたReconstruction 3D・CTを用いて、C1 Lateralmass screw、C2 pedicle screw or interlaminar screw C3〜C6 Lateral mass screw、C7 Pedicle screwが椎骨動脈、頚髄に安全に挿入可能かどうか、刺入点、刺入角度、スクリュー径を綿密に術前計画を行った。術後3D-CTにてその正確性とInstrument failureを評価した。

 

(結果)疾患の内訳は、頚椎後弯位のCSM 13例、OPLL 5例、環軸椎関節亜脱臼2例、DSA2例、RA、軸椎後方偽腫傷、C2/3頚椎椎間板ヘルニア、頚椎外傷、化膿性頚椎椎間板炎が各1例であった。C1 Lateral mass screw:8本、C2 Pedicle screw:7本、C2 Interlaminarscrew:17本、C3〜C6 Lateral mass screw:184 本、C7 Pedicle screw:26本、C7 Lateral mass screw:2本、T1〜T4 pedicle screw:20本、合計264本であった。この内誤刺入はC2 pedicle screwの1例で幸い神経合併症は認めなかった。 術後Screw looseningが10本、Screwの折損がC7 pedicle screwで1本認めたが再手術を要した症例はなかった。

23.Instrumentation使用頸椎後方手術に対する再手術例の検討

 

鹿児島大学 整形外科  

 

○井尻幸成(いじりこうせい)、山元拓哉、川畑直也、d松昌彦、米 和徳、小宮節郎

 

【目的】2006年4月以降当科でInstrumentation使用した頸椎後方手術における再手術例を調査検討した。

【対象】症例の内訳は、9歳〜79歳(平均59歳)で非RA性ASS15例、RA性ASS7例、腫 傷4例、アテトーゼ型CSM3例、歯突起骨2 例、Down症候群2例、その他3例であった。このうち、再手術に至った例は、4例(11%)であった。

      

【結果および考察】症例1.12歳女児。Down 症候群による環軸椎亜脱臼に対し、O−C2固定施行、深部感染併発しInstrumentation抜去、Halo固定、最終的にO−C4固定を行ない感染の沈静化を得た。症例2.50歳男性。アテトー ゼ型CSM。O−C6固定施行、後頭骨Screw脱転し、再固定を行った。症例3.65歳男性。 歯突起後方偽腫傷を伴う非整復性のAAS。O−C2固定を行うもC2 screw 折損、Laminar screwにて再固定した。症例4.ASに伴う非整復性のASS。O-C2固定を行うも後頭骨 Screw脱転し、再固定を行った。後頭骨固定に関するFailureが3例あった。Instrumentationの選択方法などについて考察する。