第76回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

24.脊柱側弯症に対する後方矯正固定術におけるInstrumentation failureの検討

 

宮崎大学 整形外科

 

○黒木浩史(くろきひろし)、猪俣尚規、濱中秀昭、増田 寛、樋口誠二、川野啓介、李 徳哲、帖佐悦男

 

【目的】側弯症手術におけるinstrumentation failure(IF)に関しその背景ならびに対策について検討を行った。

 

【対象と方法】平成11年8月から平成23年7月の12年間に脊柱側弯症に対しISOLA法による後方矯正固定術を施行した40例中、IFが認められた7例(17.5%)を対象とした。性別は男3例、女4例、平均年齢は14歳11ヶ月であった。以上の症例についてIFの内容、発生時期、臨床症状、Cobb角の変化、IF後の対応について調査した。

 

【結果】IFの内訳はhookの脱転4例、wireの切損、cross linkの破損、 pedicle screwのback outが各々1例ずつであった。 hook脱転は術後早期に発生し全例で皮膚の膨隆が認められた。その他のIFは無症状で術後1年以上経過後に発見されていた。IF後、抜釘を施行したhook脱転例の1例とwire切損例で矯正損失が認められた。

 

【結論】側弯症手術では術後早期にhookの脱転を来しやすく手術での工夫と厳密な後療法で予防に努めなければならない。

25.Pedicle screwを用いた胸椎側弯症手術における術後flat back対策

 

鹿児島大学 整形外科

 

○山元拓哉(やまもとたくや)、井尻幸成、川畑直也、田邊 史、d松昌彦、永田政仁、中川路愛弓、

  米 和徳、小宮節郎

 

(はじめに)側弯症手術においてpedicle screw(以下PS)の使用は冠状面、横断面の矯正に優れる一方、胸椎後弯の低下が問題とされてきた。 我々は、一貫としてconnector typeのPSを用いてきたが、頂椎凹側のアンカーやrod径は適宜変化させながら対応してきた。今回胸椎後弯の観点から評価したので報告する。

(対象および方法)症例は2006年7月以降に特発性側弯症の胸椎カーブに対し後方固定施行 し術後6ヶ月以上経過観察した31例(全例女性)で、手術時平均年齢は15(12-22)歳、平均術後観察期間は2.1(0.5-4.5)年である。後弯(T5-12)のCobb角を計測し、アンカーとして主にPSを用いたPS群(13例)と頂椎凹側付近にsublaminar wireを用いたHybrid群(17例)にわけ比較した。

(結果)後弯角は13.2士7.4度が22.6士7.4度と有意に増加し(p<0.005)、hybrid群に比べPS群で大きかった(p<0.05)。

(考察)後弯獲得を意識したcontouringを生かす上で本システムは有用であり、頂椎凹側部でのPSの使用は後弯獲得にも有利であると考えられた。

(まとめ) 1.特発性側弯症のconnector typeのPSを用いた後方固定術施行例の胸椎後弯角について検討した。

2.術後後弯角の増大がみられ、PS群でより良好であった。

26.脊椎ナビゲーションと3次元立体模型を併用した脊柱変形矯正手術

 

岡山大学 整形外科  

 

○杉本佳久(すぎもとよしひさ)、田中雅人、三澤治夫、瀧川朋亨、鉄永倫子

 

今回我々は,先天性側弯に対して、術中ナビゲーションと3次元立体模型を併用した手術で、それぞれの利点について検討したので報告す る。

 

【対象および方法】当科で手術を行った奇形椎を有する先天性側弯症10例11手術について検討を行った。手術時平均年齢は11歳(6〜16歳)であった。半椎に対する手術が3件、癒合椎が4件、胸腰椎移行部の後側弯が3件、骨性斜頸が1件であった。

 

【結果】プランニングにおいては、3次元立体模型の使用頻度が最も高かった。pedicle screw holeの決定には、ナビゲーションを使用 することが多かったが、3次元立体模型を併用 することもあった。screwの太さ、長さ、挿入 角度の決定は、全例ナビゲーションを参考にした。骨切りについては、棘突起、椎弓、pedicle といった後方要素に関しては、3次元立体模型を参考にしたが、椎体の骨切りにはナビゲーションを使用した。

 

【考察】3次元立体模型は、術前のプランニング、術中のpedicle screwholeの決定および椎体後方要素の骨きりの際に有用であった。ナビゲーションは、術中に直視することのできない、screw挿入方向の決定、椎体骨切りの決定において有用であった。

27.脊椎手術における3次元立体模型の有用

 

鹿児島大学 整形外科  

 

○d松昌彦(あべまつまさひこ)、山元拓哉、斉藤嘉信、川畑直也、永田政仁、中川路愛弓、田邊 史、

 井尻幸成、米 和徳、小宮節郎

 

脊柱の先天性分節・形成障害や後天性の形態異常に対する手術においては、術中のオリエンテーションの把握が困難となる事も少なくない。近年このような症例に対する3次元立体模型の有用性が報告され、我々も活用してきた。従来は外注で石膏モデルを作成していたが、今回我々は樹脂製のモデル作成機を導入し、その特性や利点について検討したので報告する。

 

【対象及び方法】対象は6例で手術時平均年齢は14.3歳(8〜22歳)であった。半椎切除が4件、二分脊髄に対する骨性中隔切除術と、神経線維腫症に対する仙腸関節のdystrophicchangeに対する再建術が各1件であった。米国Stratasys社Dimension elite 3D Printerを機材として用いた。CTから得られたDICOM dataをLEXI社製ソフトZed Viewにて3D化し、模型作成に用いた。ABS樹脂を材料として用いた。

 

【結果】手術プランニングにおいて、3次元立体模型を用いることで、あらかじめ刺入点と、スクリューの太さ・長さを計測することができ、挿入角度を容易にイメージすることができた。

 

【考察】3次元立体模型は、術前のプランニングや術中の手術手技をより正確にするのに役立った。若手脊椎外科医のトレーニングや重度の骨欠損を伴う人工関節手術への応用、患者への説明等多方面での有用性も高い。今後は症例数を増やすとともに、更なる検討を加えたいと考えている。