第77回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題2)

4.特発性側弯症の術前評価におけるFulcrumBendmg撮影の有用性

 

熊本大学大学院 整形外科

 

○岡田龍哉(おかだ たつや)、中村孝幸、 砥上若菜、谷脇琢也、藤本 徹、瀬井 章

 

【目的】  特発性側弯症の手術において術前にその矯正角度を予測することは、手術計画の決定および術前説明の際に重要なことである。今回我々は、当科において特発性側弯症の手術を施行した症例に対し、術前のFulcrum Bending 撮影により得られた矯正角度と術後矯正角度との比較検討を行った。

【方法】 2008年より2012年までに当科にて手術を施行した特発性側弯症症例のうち、術前にフルクラム撮影を行った9例を対象とした(平均年齢 15.8±2.9歳)。Major curveにおける術前立位でのCobb角Fulcrum Bending 撮影により得られたCobb角および術後1カ月時の立位での Cobb角を計測し解析を行った。

【結果】 全症例におけるLenke分類は1A(5例)、3A(2例)、4A(1例)、5C(1例)であり、術前の平均 Cobb角は67.1±18.1°であった。Fulcrum Bending撮影にて得られた矯正角度の平均は30.9±27.0°、矯正率の平均は59.3±23.9%、術後の矯正角度の平均は21.1±13.8°、矯正率の平均は70.7±10.6%であり、これらには有意な相関を認めた(r=0.87、p<0.01)。Fulcrum Bending 撮影にて40%以上の矯正が得られた7例では予測矯正率と実際の矯正率との差が20%以内であったのに対し、矯正が30%未満であった2例では30%以上の差があり、これらの症例はいずれも椎間関節切除を要する症例であった。

【考察】 術前のFulcrum Bending撮影は術後の矯正角度の予測に利用できる可能性があり、またFulcrum Bending撮影による矯正率の程度が椎間関節切除を要するか否かの基準となり得ることが示唆された。

5.特発性側弯症における椎弓根スクリュー挿入方向での椎弓根の形態評価

 

呉共済病院 整形外科*1

岡山大学 整形外科*2

 

○三澤治夫(みさわ はるお)*1、中西一夫*1 田中雅人*2、杉本佳久*2、瀧川朋亨*2、 鉄永倫子*2、尾崎敏文*2

 

椎弓根スクリュー(PS)は強固なアンカーであり、よい矯正を得るために有用であるが、側弯症では椎弓根の変形や回旋、脊髄の偏位などPS 挿入の危険性も指摘されている。今回PS挿入方向に合わせた面での椎弓根の形態をMPR-CTで評価した。特発性側弯症手術症例(Lenke type1-3)20例を対象とした。全例女性、平均手術時年齢は17.3歳、術前のコプ角は平均57度、胸椎カーブはすべて右に凸であった。術前のCTデータをZioterm2009で解析、PS挿入方向を垂線とする面で形態の評価を行った。椎弓根の縦径はT3、T6、T7、T8、 横径はT2、T3、T4、T5、T8、T9で有意に左右差を認めた。縦径はPS径に対し十分に大きいが、横径では狭い椎弓根を多数認め、上中位胸椎ではほとんどの椎弓根が4.5o未満であった。海綿骨の連続性の無い椎弓根を8.2%に認めた。PSの精度は、閉塞した椎弓根や横径の小さい椎弓根では有意に逸脱率が高く、椎弓根の形態を考慮した術前計画が重要であると考えた。

6.SRS-22を用いた思春期特発性側弯症後方矯正固定術前後の評価

 

岡山大学病院 整形外科  

 

○鉄永倫子(てつなが ともこ)、田中雅人、杉本佳久、瀧川朋亨、塩崎泰之、馬崎哲朗、尾崎修平、山根健太郎、尾崎敏文

 

【目的】 SRS-22を用いて思春期特発性側弯症(AIS)後方矯正固定術前後の自覚症状および機能評価を行うこと。

【対象と方法】 対象は後方矯正固定術を施行されたAIS30例(男性4例、女性26例)で手術時年齢は平均16歳(13〜23歳)、術後経過観察期間は平均34カ月(12〜72カ月)で、術前後のVAS、Cobb角と矯正率、RDQ、SRS-22を検討した。

【結果】 術前後でVAS、Cobb角、矯正率、RDQ、SRS-22の各ドメインは有意に改善し、painとmental healthの間に弱い相関を認めた(r=0.41、p<0.05)。重回帰分析によると、SRS-22と有意な相関を認めたものは術後経過期間のみで(p<0.05)、術前Cobb角とは有意な相関を認めなかった。

【結論】 後方矯正固定術後のSRS-22に関連する因子として術前後のCobb角等は関連しておらず、術後経過期間のみが関連していた。このことから、AIS術後については患者への丁寧な説明と長期の経過観察が必要であると考えられた。

7.Early onset scoliosisの中期成績

 

鹿児島大学 整形外科  

 

○川畑直也(かわばた なおや)、山元拓哉、井尻幸成、田過 史、d松昌彦、齊藤嘉信、松永俊二、米 和徳、 小宮節郎

 

【はじめに】Early onset scoliosis(以下EOS)は生命予後に影響をあたえる重要な病態であるが、治療に関する問題点も多い。今回中期成績について検討した。

【対象および方法】 対象は8歳未満で加療開始し2005年以降5年以上経過観察した16(男3、女13)例で、先天性6例、特発性4例、神経原性3例、その他3例である。初診時平均年齢は2.9歳で、以後平均9.2年フォローし治療経過を調査した。

【結果】装具や矯正ギプスで対応し得たのは5例、手術施行例は11例であった。初回手術は3例に Instrumentation without fusion、8例に固定術が行われたが、種々の原因による側彎の再悪化に対し3例で追加手術を要した。Cobb角は保存症例で初診時36.7度が最終18.2度、手術例では初診時41.0度が術直前61.1度、最終34.2度であった。

【考察】 EOSは術後合併症も少なくなく、原疾患、肺 や骨の成熟度、変形のタイプ等に応じ保存療法を含めた適切な治療選択が重要と考えられた。

8.胸腰椎・腰椎部特発性側彎症に対する前方固定術における至適固定最上位椎の検討−5年以上経過例での解析一

 

九州大学医学研究院 整形外科  

 

○松本嘉寛(まつもと よしひろ)、 播广谷勝三、川口謙一、岡田誠司、岩本幸英

 

胸腰椎・腰椎特発性側彎症(TI/L-AIS)に対する前方矯正固定術はその大きな矯正力により後方法と比較して固定範囲の短縮が可能であるとされている。今回TL/L-AISに対して前方固定術を行った症例を最上位固定椎(UW)の傾き(UWT)に注目してX線学的に解析した。連続する20症例を対象とした。手術時平均年齢16.3歳、男性1名、女性19名。Curve patternはLenke type5が14例、type6が7例であった。Instrumentは全例TSRH systemを使用した。

major curve、minor curveの平均値(術前/最終時)は(61°/23°)(38°/23°)、Cobb角の改善率(%)は、major curveは61%、minor curve は37%であった。UIVTは術前27°から術後9°と有意に改善した。術前UIVT は minor curveのflexibility と逆相関を示すとともに、最終時C7 plumb line の変位と正の相関を認めた。また最終観察時UIVTもminor curveのflexibility と逆相関を示した。UIVが上位終椎の症例(UW at UEV:UAE群)が10例、上位終椎より遠位の症例(UW below UEV:UBE 群)が10例であった。UBE群ではUAE群に比して有意に高度の最終時C7 plumb line 変位を認めた。UIVの選択に際しては、minor curveの柔軟性を考慮することで、術後成績の改善が得られる可能性があり、今後 prospectiveな検討が必要であると思われた。