第77回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題3)

9.脊柱側弯症手術症例の検討:最近の症例から

 

山口大学大学院 医学系研究科 整形外科

 

○寒竹 司(かんちく つかさ)、田口敏彦、加藤圭彦、今城靖明、鈴木秀典、吉田佑一郎

 

【目的】  脊柱側弯症の手術療法は、最近のMultisegmental instrumentationの出現により、矯正率は改善され、術後の外固定が不要となった。今回、最近の脊柱側弯症手術症例の術後成績について検討した。

【対象と方法】 2008年以降当科で手術を行った、脊椎側弯症症例21例(女性18例、男性3例)を対象とした。平均年齢は15才、平均経過観察期間は1年11カ月で、原因は特発性が16例、先天性が2例、神経・筋性が2例、医原性が1例であった。術前後、最終調査時のメインカーブのCobb角の推移、術後矯正率について検討した。

【結果及び考察】 全症例の術前Cobb角は平均61度、術後は平均21度で、矯正率は66%であった。特発性側弯症の平均矯正率は70%と概ね良好な矯正が得られており、調査時も全例矯正損失なく良好に維持されていた。3例で他家血輸血を要し、1例に術後神経根症を認めたが、保存的加療で軽快した。良好な矯正を得るには、症例毎に有効な矯正手技を組み合わせて矯正を行うことが重要と考えられた。

10. 思春期脊柱側弯症に対する後方矯正固定術の術後成績

 

下関市立市民病院 整形外科 

 

○白澤建蔵(しらさわ けんぞう)、山下彰久

 

【はじめに】  当科で2006年から2011年の間に行った思春期側弯症の椎弓根スクリューシステムを用いた後方矯正固定術(以下PS法)の固定範囲と治療成績について検討した。

【対象及び方法】 症例は9例、全例女性。年齢は11歳から33歳 平均17.8歳。Lenke Type 1:5例、Type2:1例、Type3:1例、Type5:2例。Type1ではLIVはTh11:3例、Th12:2例であった。Type5ではLIVは全例L3であった。椎弓根スクリューの刺入はfree handで行い術中イメージで確認した。肋骨切除等の操作は行わなかった。PSをsegmentalに使用した。椎弓根径が小さくPS挿入不可能な2例では椎弓下テープを併用した。 術後経過観察期間は平均2年5ケ月であった。

【結果】 術前Cobb角40−80度 平均53度、術後4−29度 平均16度 矯正率は平均69%であった。全例において肩および骨盤のバランスも改善した。

【結語】 PS法は側弯の良好な矯正とその維持ができた。

11.ロッド強度の特発性側弯症患者手術成績への影響(より強固なロッドを使用することでより良い矯正が得られるか?)

 

呉共済病院 整形外科*1

岡山大学 整形外科*2

 

○三澤治夫(みさわ はるお)*1、中西一夫*1、田中雅人*2、杉本佳久*2、瀧川朋亨*2、鉄永倫子*2、尾崎敏文*2

 

当科ではDirect vertebral rotation deviceとRod rotation techniqueで矯正を行っている。6.35oの純チタンロッド(P群)を使用していたが、2010年7月以降より強固な635oチタン合金ロッド(A群)を使用している。同一施設、同一手術方法でロッドの種類の異なる24例を検討した。P群は13例、Aは11例、患者背景に有意差はなかった。Cobb角は術前61/57度が、術後14/10度であり、矯正率は77/83%であり、A群で有意に矯正率が高かった。後弯角は、術前14/17度が、術後19/21度となった。術前後弯角が20度未満の症例では、術前8.6/7.7度が、術後15.9/17.6度となり、7.3/9.8度の後弯が得られた。頂椎の回旋は、術前26/23度が、術後22/19度に改善した。冠状断の矯正率は有意に高く、矢状断でも症例を選べば矯正率が高い傾向があった。強固なロッドを使用することでロッドの力が及ぶ方向に限り良好な矯正が得られた。

12.Monoaxialscrewを用いた特発性側弯症の治療成績

 

熊本大学大学院 整形外科  

 

○瀬井 章(せい あきら)、岡田龍哉、中村孝幸、砥上若菜、 谷脇琢也、藤本 徹

 

【目的】  特発性側弯症の観血的療法における矯正率向上のためinstrumentの開発はもとより、様々な手術手技の工夫がなされている。我々は特発性側弯症に対してUSS systemを使用し、また頂椎部にはmonoaxial screwを用いた矯正術を行っており今回その手術成績を報告する。

【方法】 2008年より2012年までに当科にて手術を施行した特発性側弯症症例13例を対象とした(平均年齢15.8±2.9歳)。これらの症例に対して側弯矯正率、術中・術後の合併症につき検討した。

【結果】Lenke分類は1A(7例)、3A(3例)、4A(2例)、 5C(1例)であった。術前のMajor curve平均 Cobb角は67.1±18.1°であった。術後の矯正角度の平均は21.1±13.8°、矯正率の平均は70.7±10.6%であった。出血に対しては術前貯血、術中回収血により対応しており、2例に輸血を行った。術中の誘発電位(Br-MEP)の変化は認められなかった。また術後感染を発症した例は認めなかった。

【考察】 monoaxial screwを用いた矯正術は、特に大がかりな装置を必要とせず十分な矯正率を得ることができ、術後大きな合併症の発生も認めず有用な術式と考えた。

13.DVRを用いた思春期特発性側弯症における椎体回旋変形の矯正

 

岡山大学 整形外科  

 

○田中雅人(たなか まさと)、杉本佳久、瀧川朋亨、鉄永倫子、塩崎泰之、尾崎修平、馬崎哲朗、山根健太郎、尾崎敏文

 

【目的】 PS法による矢状面のアライメントとDVRによる椎体回旋変形の矯正について検討することである。

【方法】 対象は男性6例、女性48例、平均年齢は16歳(13-23歳)である。Pedicle screwが50%以下のHybrid群(16例)、PS法で固定した群をPS群(38例)の2群に分けて評価した。

【結果】 Hybrid群の術前、術後の平均冠状面Cobb 角はそれぞれ69度、27度で、矯正率は60%であった。一方、PS群の主カーブの術前、術後の平均冠状面Cobb角はそれぞれ59度、15度で、矯正率は75%であった。矢状面アライメントでは術後T4-l2角がHybrid群で21度、PS群で16度であった。術後に10度以下のflat backは Hybrid群が3例、PS群が10例であった。椎体 回旋の矯正はHybrid群が4%、PS群が20%であった。

【結論】 PS群はHybrid群に比較して冠状面と椎体回旋の矯正に優れていたが、矢状面アライメントはflat backになりやすい傾向があった。

14.Direct Vertebral Rotationを用いた特発性側弯症の矯正効果

 

高知大学医学部 整形外科  

 

○喜安克仁(きやす かつひと)、武政龍一、木田和伸、公文雅士、田所伸朗、谷 俊一

 

特発性側弯症における後方矯正固定術において、当院ではPedicle screwを使用したRod rotation maneuver(RRM)にて矯正を行っている。近年、Pedicle screwを介して椎体に直接矯正力をかけるDirect veltebral rotation(DVR)を併用して矯正しているので、今回その成績を報告する。 対象患者は、RRMにDVRを併用して手術をした19例(男2例、女17例)、手術時平均年齢15.4歳であった。RRMのみで手術をした19例を比較対象とした。胸椎カーブ矯正率(Cobb角)は71.1%、腰椎カーブ矯正率(Cobb角)は82.3%であった。胸椎後弯(Th5-12)は術前18.9度から術後16.9度、腰椎前弯(Thl2-S1)は術前51.7度から術後50.3度であった。DVRを併用した矯正は、矯正率が良く、特に腰椎の矯 正率が上昇していた。DVRは頂椎の細い椎弓根にPedicle screwを挿入する手技的な問題はあるが、有用な矯正方法の一つと思われた。

15.思春期特発性側彎症の胸椎シングルカーブ手術例における腰椎カーブの再悪化因子に関する検討

 

鹿児島大学 整形外科  

 

○山元拓哉(やまもと たくや)、井尻幸成、川畑直也、田邊 史、d松昌彦、齋藤嘉信、米 和徳、小宮節郎

 

【はじめに】思春期特発性側彎症の胸椎カーブに対する矯正術では、術後の腰椎カーブの再悪化も散見される。今回その因子を求めるべく検討を加えた。

【対象】2006年以降に後方固定術を施行したLenke type1の連続する22例(全例女児、手術時平均年齢14歳)を対象とした。術後2か月および1年のCobb角の進行に影響を与える因子に関し、各Lumbar modifier(以下LM)により検討した。

【結果】LMAではL4tilt、Pelvic obliquityと相関を示した(R=0.64,0.58)。LMBでは固定最尾側椎体のtilt(以下LIVT)、L4 tiltと(R=-0.82,-0.72)、LMCでは初潮後経過時間およびL4 tiltと相関を認めた(R=-0.74,-0.67)。

【考察およびまとめ】L4 tiltはすべてのLMで影響を与える事が判明した。LIVT初潮の時期も重要であり、固定範囲の決定や術後の腰椎矯正装具の採択に関し参考になる因子と考えられた。