第77回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

16.非侵襲的な発育性脊柱側彎症モデルマウスの確立一発症・進行メカニズムの力学的解析一

 

九州大学大学院 医学研究院臨床医学部門 整形外科学分野*1 九州大学先端医療医学部門 神経再生分野*2 九州大学病院 別府病院 整形外科*3

 

○久保田健介(くぼた けんすけ)*1.2、岡田誠司*1.2、小早川和*1.2、松本嘉寛*1、播广谷勝三*1、土井俊郎*3、岩本幸英*1

 

【目的】特発性思春期側彎の発症・増悪因子は不明であるが、我々は過去に患者の画像から、胸郭前後径の減少が胸腔左側に偏在する心臓の影響で椎体への力学的不均衡を生み、側彎を発症するのではないかと仮説を立てた。そこで、若年マウスの胸郭に体外装具を装着し、胸郭前後方向の発育異常と側彎の発症および進行について解析を行った。

【方法】装具装着後、毎週XpとCTを撮影し側彎発症の有無を評価し、胸郭前後径と側彎の程度の相関を検討した。

【結果】装具装着直後、胸郭前後径の短縮を認めたが側彎は生じなかった。成長と共にT7レベルを頂椎とする右側凸の側彎を発症し、胸郭前後径とCobb角、回旋角はそれぞれ統計学的に有意な相関を認めた。尚、片側の肋骨を切断すると脊柱は切断側に偏倚し、装具装着にて側彎の程度が増強されたが、両側を切断すると側彎は発症しなかった。

【結語】無侵襲で再現性の高い特発性発育性側彎症の動物モデルを確立した。胸郭の前後方向の発育異常が椎体への力学的不均衡を生み、側彎の発症および進行に関与していることが示唆された。

17.鹿児島県におけるTISの発生状況調査

 

鹿児島大学 整形外科

 

○齋藤嘉信(さいとう よしのぶ)、 山元拓哉、井尻幸成、川畑直也、田邊 史、 d松昌彦、米 和徳、小宮節郎

 

【はじめに】Campbellらの提唱した胸郭不全症候群(Thoracic insufficiency syndrome以下TIS)は、種々の胸郭の障害により正常な呼吸や肺の発育をサポートし得ない病態を指すが、本邦での認知度も低く不明な点も多い。今回鹿児島県でのTISの発生率調査を行ったので報告する。

【対象・方法】鹿児島県内の小児病床を有する施設を中心にアンケートを行い2008年−2010年に出生した患者をピックアップしX線で確認した。出生数から発生率を調査した。また原疾患、変形の種類、呼吸状態を調査した。

【結果】7例で該当し、発生率は0.0176%であった。2例は先天性側彎症による胸椎側彎、5例で二分脊椎による後彎を認め、Thoracic volume Depletion Deformityはtype1とtype2が各1例、Type Vaが5例であったが、調査時に呼吸器症状を有しているものは無かった。

【考察。まとめ】今回の結果では全例が先天性の脊柱変形の患者であり、実際の症例はさらに大きい可能性が考えられた。

18.頸椎の固定を要した症候性側彎症4例の経験

 

岡山大学 整形外科  

 

○山根健太郎(やまね けんたろう)、田中雅人、杉本佳久、瀧川朋亨、 塩崎泰之、馬崎哲朗、尾崎修平、尾崎敏文

 

【目的】症候性側彎症に対して頸椎の固定を要した4例を経験したので報告する。

【症例】 Klippel-Feil症候群(KFS)に伴う側彎症が2例、神経線維腫症1型(NF-1)に伴う側彎症が2例であった。KFS2例は、T2半椎による右凸48度(C5-T3)の側彎に、C6-T4後方固定を施行した症例とC1-3及びC5-6椎体癒合があり、右凸55度(C7-T6)の側彎に対してC5-7後方固定を施行した症例であった。NF-12例はともに dystmphic typeの頸椎後弯による前方注視困難を認めた。2例とも術後骨形成不良であり追加骨移植を施行、その後は良好な骨形成を認めた。

【考察】KFSでは、癒合椎や奇形椎、側弯の合併が認められる。NFに伴うdystrophic typeの側彎症では一般的に手術加療が選択される。それぞれ矯正のために頸椎固定を必要とする症例がある。頸椎までの固定を行うにはその適応に難渋することが多いが、時期を逸することなく手術を行うことが肝要である。

19.McCune-Albright症候群に側弯症を合併した2例の治療経験

 

岡山大学 整形外科  

 

○山根健太郎(やまね けんたろう)、田中雅人、杉本佳久、鉄永倫子、塩崎泰之、馬崎哲朗、尾崎修平、尾崎敏文

 

【目的】McCune-Albright症候群(以下MAS)は、polyostotic fibrous dysplasia、皮膚色素沈着、内分泌学的異常を呈する疾患である。MASに側弯症を合併した2例を経験したので報告する。

【症例1】12歳女性。装具療法を開始されたが、徐々にCobb角の増大を認めた。術前Cobb角58°(Th7‐L2)で脊椎後方固定術(Th4‐L3)を施行した。術後0°で改善率100%であった。

【症例2】26歳女性。装具療法で経過観察していたが、徐々にCobb角の増大を認めた。術前Cobb角87°(Th8‐L2)で脊椎後方固定術(Th8‐Pelvis)を施行した。術後34°で改善率61%であった。

【考察】MASに合併した側弯症2例に対して手術加療を施行し、術後短期ではあるが側弯の進行もなく経過良好である。MASに合併する高度側弯症に対して、保存加療に抵抗する場合、手術加療は有効な治療と考えられた。今後はさらに長期的な術後経過を評価する必要があると考える。