第77回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

20.Marfan症候群による側弯症の術後長期経過後の癒合塊骨折

 

香川大学 整形外科*1 おか整形リハビリクリニック*2

 

○有馬信男(ありま のぶお)*1、小松原悟史*1、岡 史朗*2、山本哲司*1

 

Marfan症候群による側弯症に対して後方固定術を行い、術後14年でインストウルメント折損と癒合塊骨折を認めた1例を報告する。

【症例】28歳、女。14歳時にMarfan症候群による側弯に対して後方矯正固定術(T10-S1)を受けた。術後10年に第1子を出産し、固定椎凹側のロッドの折損(L4高位右側)を認めたが特に症状はなかった。術後12年に第2子を出産後も、固定椎凹側のロッドの折損には変化がなく、腰椎部後弯の増強もなかった。術後14年に適応障害、うつ病で精神科入院した際に腰痛が出現し立位保持、坐位保持が困難となった。画像では固定椎凸側のロッドも折損(L4高位左側)し、ロッド折損高位とほぼ同じ椎弓部に癒合塊の横骨折が認められた。治療は硬性体幹装具による保存治療を行い、骨折後4カ月で骨折部の仮骨が認められた。 しかし、骨折後6カ月では骨折部の間隙が拡大した。骨折後11カ月で癒合が得られたが、後弯が増強した。

【まとめ】インストウルメントの金属疲労折損とその後の癒合塊の疲労骨折と考えられた。

21.Growing rod法にて治療したvon Recklinghausen病による症候群性側弯症の1例

 

宮崎大学医学部 整形外科

 

○ 黒木浩史(くろき ひろし)、猪俣尚規、濱中秀昭、増田 寛、帖佐悦男

 

【目的】von Recklinghausen病による症候群性側弯症をGrowing rod法にて治療した症例を経験したので文献的考察を加え報告する。

【症例】10歳9か月、男児。内科検診にて脊柱側弯症が発見され当科紹介となった。Cobb角は初診時57°であったが一旦受診が途絶え、2年後の再診時には92°に達していた。未成熟であったため Growing rod法の適応と判断し、初回手術で Cobb角は55°に矯正され、以後計6回の延長術を施行した。最終手術前に抜釘ならびに新たな anchor設置を行い、その3か月後に最終的な後方矯正固定術を施行しCobb角は60°となった。この3年8か月の間、hookの移動や脱転などの合併症が発生したが身長約30p(脊椎長約10p)を獲得できた。最終手術後1年6か月現在、Cobb角は63°に維持されimplantの問題もなく経過している。

【結論】Growing rod法は未成熟な進行性側弯症の治療に有効な方法である。ただしimplantの破損や脱転など合併症の頻度は高く、その成功のためには綴密な手術計画のもとでの適切な手術操作や厳格な生活指導を含む注意深い術後観察が不可欠である。

22.高度側弯症を呈した猫なき症候群の1例

 

総合せき損センター 整形外科  

 

○高尾恒彰(たかお つねあき)、前田 健、植田尊善、森 英治、弓削 至、河野 修、坂井宏旭、益田宗彰、林 哲生、森下雄一郎、芝啓一郎

 

猫なき症候群は5番染色体の短腕部分欠損による常染色体異常疾患であり、発生頻度は新生児5000人に対して1人である。臨床的特徴は小頭などの特異顔貌、乳児期の子猫様泣き声、精神発達遅滞、低出生体重が挙げられ、脊柱側弯症の合併は10%程度と報告されるもその臨床像の詳細や治療に関しての記載は少ない。今回我々は、高度側弯症を合併した猫なき症候群に対し術中直達牽引下に手術加療を行ったので報告する。  

症例:13歳女児。主訴は脊柱変形である。現病歴:出生時より泣き声が弱く、小児科にて猫なき症候群の確定診断を受けた。精神発達遅滞、てんかんあり。2歳時に初めて脊柱側弯症を指摘された。5歳時胸椎部主彎曲Cobb角60度で装具療法を開始するも、7歳時に79度と進行した。13歳時に当院紹介初診され、左凸の胸椎部主彎曲Cobb角138度であった。小頭症、耳介低位、 眼間開離、内眼角贅皮など特徴的所見を認めた。 神経学的所見:四肢腱反射の亢進あり。筋力低下は明らかでないが、精神発達遅滞と著明なバランス不良に伴う歩行障害を認めた。染色体異常疾患に合併した進行性の症候性側弯の診断で、術中直達牽引下に第1胸椎から第4腰椎までの矯正固定術を行いCobb角65度に改善し、歩容も良好となった。猫なき症候群の側弯症の病態は不明な点が多く、今後とも厳重な経過観察が必要である。

23.胸腰椎移行部に高度後側弯変形を来した軟骨無形成症の1例

 

JA広島総合病院 整形外科  

 

○高澤篤之(たかざわ あつし)、藤本吉範、高田治彦、山田清貴、橋本貴士、清水 良、住吉範彦

 

【はじめに】高度後側弯変形を来した軟骨無形成症の1例に対し手術を施行したのでこれを報告する。

【症例】9歳、男児。出生時より四肢の変形と短縮を認め、軟骨無形成症と診断されていた。胸腰椎移行部の高度後側弯変形を認めたため手術を行った。術前にかえるとび方式で1400mlの自己血貯血を行った。T10、T11の椎体切除とT7からL4高位に椎弓根スクリュー、フックを用いた後方固定術を施行し、後弯角は術前83度から34度、側弯角は術前34度から9度に改善した。しかし、術後1年8カ月で腰痛と矯正損失が出現したため、再手術を行った。再度自己血貯血を行った後に、右L2、L3の椎弓根スクリューの入れ替えと、自家骨移植および母親からの同種骨移植を行った。後弯角は術前43度のまま、側弯角は術前32度が18度に改善した。術後24カ月で腰背部痛はなく矯正損失は認めない。

【考察】軟骨無形成症に高度後側弯変形を伴った症例では強固な内固定が必要となる。小児であり同種骨移植と自己血貯血が必要だった。

24.胸腰椎移行部後弯変形を伴ったpseudoachondroplasiaの1手術例

 

琉球大学 整形外科  

 

○大城義竹(おおしろ よしたけ)、我謝猛次、三好晋爾、米嵩 理、金谷文則

 

pseudoachondroplasiaは四肢短縮型の低身長でachondroplasiaと類似し、頭部、顔面は正常で関節および靭帯の弛緩を特徴とする。脊椎では環軸椎亜脱臼の報告が散見されるが、脊柱後弯は稀である。我々は、胸腰椎移行部後弯変形を伴ったpseudoachondroplasiaに対して手術を施行したので報告する。症例は16歳男性、主訴は腰痛による座位・歩行困難である。4歳時にpseudoachondroplasiaと診断され、10歳時より脊柱後弯に対し装具療法が行われた。15歳時より腰痛を自覚し、徐々に長時間の座位や歩行が困難となり当院へ紹介された。胸腰椎X線像でTh11、Th12、L1の椎体楔状変形とTh11-L1後弯角90度の変形を認め、手術適応と判断した。手術は前方進入でTh12椎体を亜全摘、伸延ケージを用いて後弯を矯正し、一期的にTh10-L2の後方固定術を行った。術後の後弯角は40度に矯正された。腰痛は軽減し、術後2年7カ月での後弯変形の矯正損失は認めなかった。