第77回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題6)

25.腰椎後弯症に対する矯正骨切り術(PSO)の経験

 

愛媛大学医学部附属病院脊椎センター*1 愛媛大学大学院 運動器学*2

 

○森野忠夫(もりの ただお)*1、尾形直則*1、堀内秀樹*1、山岡豪大朗*1石丸泰光*2、三浦裕正*2

 

【はじめに】人口の高齢化に伴い、背筋力低下や圧迫骨折に起因する脊柱後弯症は増加している。後方侵入による矯正骨切り術(PSO)はこの病態に対する手術法の一つである。

【方法と対象】2009年から現在まで、当科で行った脊柱後弯に対するPSO手術12例(女性10例、男性2例、平均年齢66歳)について検討を行った。手術手技は後弯の頂椎で骨切りを行い、原則として上下2椎体の椎弓根スクリューを用いた矯正固定を行った。

【結果】術前の主訴は、歩行不能が2例、歩行困難6例、姿勢保持困難2例、下肢痛2例であった。術後は全例でADLの改善を認め、術前に高度の麻痺のあった1例を除き、自立した生活が可能となった。半数の6例はリハビリも終え、発症前の ADL(仕事や家事)レベルに戻っている。後弯角は術前・術後で平均36度改善していた。

【考察】腰椎後弯症は高度になると強い腰痛を伴い、時間とともに悪化していく。PSOは1椎体の骨切りで30度以上の矯正が可能であり、高度な後弯症には有用な術式と考えられた。

26.脊柱後弯変形に対するPedicle Subtraction Osteotomyの当院での手術成績

 

下関市立市民病院 整形外科

 

○石原康平(いしはら こうへい)、白澤建蔵、山下彰久、渡邊哲也

 

【はじめに】当院で施行したPedicle Subtraction Osteotomy(以下PSO)症例に関し、後ろ向きに検討を行った。

【対象と方法】平成12年以降に施行した5症例(すべて女性、手術時平均年齢79歳)を対象とした。経過観察は平均3年7ヶ月(3ヶ月−8年5ヶ月)で、骨粗鬆症性椎体骨折後(破裂骨折や狭窄症の合併を含む)の後弯変形が3例、後方固定術後の隣接椎体障害による後弯変形が2例であった。術前、術直後、最終調査時での局所後弯角、腰椎前弯角の推移を調査した。

【結果】局所後弯角は術前45度、術直後-5度、最終2度、腰椎前弯角は術前-2度、術直後19度、最終0度であった。3例に螺子の弛みが生じたが、骨切り部での矯正損失なく、骨癒合が得られた。

【考察】PSOは術前術直後での著明な後弯矯正が可能である。臨床的な予後規定因子として腰椎前弯角(lumbar lordosis:LL)、骨盤回旋角(pelvic tilt: PT)などの重要性が報告されており、自験例に関し文献的考察を含め報告する。

27.脊椎後弯症に対する手術療法

 

大分整形外科病院  

 

○井口洋平(いぐち ようへい)、大田秀樹、松本佳之、中山美数、酒井 翼、木田浩隆、竹光義治

 

 2010年7月から2012年2月までの間に、脊椎後彎症に対し後彎矯正を目的として手術療法を行った9例の手術成績について報告する。術式は@多椎間TLIF3例、APSO単独1例、BPSO/TLIF2例、BTLIFとPSO/TLIFの組み合わせ2例、CVCR 1例であった。多椎間TLIF例では前方への十分な骨移植とともに台形のケージを使用し矯正を行った。PSO/TLIFでは当該椎体上半分を椎弓根を含め骨切りし、さらに頭側の椎間板を切除しTLIF用のケージを前方に置き、後方を短縮させるopening-closing osteotomyとした。VCRは骨片が突出を伴う高度な楔状変形を起こした後彎症例を適応とした。結果として固定した範囲での後弯矯正角度は、TLIF1椎間あたり 約12度、PSO25度、PSO/TLIF 約30度、VCR57度であった。矯正角度はVCR、PSO/TLIF、TLIFの順に良好であったが、逆に手術侵襲、 手術時間、出血量等は増加する傾向にあった。術式、目標矯正角度の選択については、後弯症の重症度、合併症の有無、年齢、手術に対する患者の意欲等を総合的に判断して、これらを組み合わせて選択することが重要と思われる。

28.骨粗鬆性椎体圧迫骨折に対するBKPによる圧潰椎体矯正

 

中村整形外科  

 

○中村孝文(なかむら たかふみ)

 

【はじめに】Balloon Kyphoplasty(BKP)は1998年より米国を中心に広がった手技で骨折した椎体を補強するのみならず椎体高を再獲得できるという長所を有するが骨折後長期間経過した症例や脊柱後彎変形が進行したものに対する矯正には限界がある。今回骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対するBKP前後での椎体圧潰の矯正効果について検討した。

【方法、対象】平成23年2月から平成24年3月までに単椎体に対しBKPを施行した31例、(女性24名、男性7名)、年齢は64歳から81歳。術後翌日より歩行を許可し1ヶ月間硬性コルセットを装着した。術前後の椎体高獲得をA群:X-P上椎体内のcleftが明らかな例B群:MRIで骨癒合は得られてないがX-Pにてcleftはみられない例C群:BKPを使用する以前のvertebroplastyの3 群間で比較した

【結果】A群:9.4±2.4o B群:4.1±1.3o C群:2.8±1.2oと偽関節で椎体内cleftを有する群での矯正効果が優位に大きかった