第78回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題1)

1.骨粗鬆症性椎体骨折の早期MRI分類による予後予測

 

山口大学大学院医学系研究科整形外科


寒竹 司(かんちく つかさ)、田口敏彦、今城靖明、鈴木秀典、吉田佑一郎

 

【はじめに】
骨粗鬆症性椎体骨折後の圧潰進行・偽関節が予測できれば、早期から積極的な治療の選択も可能となる。今回、椎体骨折後早期MRI分類により画像的予後が予測可能か否かについて検討した。
【対象及び方法】
対象は保存的加療を行った胸腰椎椎体骨折症例のうち、受傷後6ヶ月以上追跡が可能であった109例129椎体(女88、男21、平均年齢79歳)とした。初回MRI分類を行い、各タイプの椎体圧潰率、偽関節発生率について検討した。MRI T1分類は全体型、上・下方型、前方型、中心型の5型に分類し、T2分類は中村らの分類を用い、低輝度限局型・広範型、高輝度限局型・広範型の4型に分類した。
【結果及び考察】偽関節は20例(18.3%)に認めた。T1分類では全体型が74椎体(57%)を占め、偽関節例は全例が全体型であった。一方、T2分類では高輝度広範型が69椎体(53%)と最も多く、低輝度広範型で有意に偽関節例が多かった。さらに、両分類を組み合わせて検討することで、ある程度偽関節に移行し易いタイプを同定できた。

2.脊椎椎体骨折におけるMRI経時的変化について

 

小郡第一総合病院 整形外科*1 山口大学大学院 医学系研究科整形外科*2

 

米村 浩(よねむら  ひろし)*1、田口敏彦*2、寒竹 司*2、今城靖明*2、鈴木秀典*2、土井一輝*1

 

【目的】
脊椎椎体骨折は高齢化が進むに伴い増加傾向にあり、受傷早期には単純X線での診断が困難な症例も多く、早期診断にはMRIが有用である。椎体骨折のMRI信号変化はいつ消失するか?をoutcomeとして、椎体骨折症例のRI信号変化をprospectiveに検討した。
【方法】
保存的加療を行った胸腰椎椎体骨折症例のうち、受傷後3ヶ月以上を経過した時点で、MRI撮影による追跡が可能であった49例65椎体を対象とした。MRIにおける椎体内信号回復例と非回復例について、T1強調画像における矢状断像の 低輝度領域の分類、圧潰進行の有無などで比較し検討を行った。
【結果】
信号が回復したのは45椎体で、3ヶ月以内が14椎体、4〜6ケ月が20椎体、7ヶ月以上かかったものが16椎体、平均期間は約6ヶ月であった。
【考察】

今調査では信号回復までの期間において7ヶ月以上要したものが回復例の約30%を占めた。このことから、回復遅延が必ずしも予後不良すなわち偽関節などの兆候とはいいきれないということ、信号変化があっても実際には陳旧例の可能性があり、MRI診断のピットフォールとなると考察した。 

3.動態CTMを用いた骨粗鬆症性椎体骨折の麻痺発生機序の解析〜後壁癒合不全例での検討〜

 

独立行政法人労働者健康福祉機構、総合せき損センター 整形外科


林 哲生(はやし てつお)、前田 健、田中 潤、植田尊善、森英治、弓削 至、河野 修、高尾恒彰、坂井宏旭、益田宗彰、森下雄一郎、松下昌史、斉藤武恭、芝啓一郎

 

【目的】
骨粗鬆症性椎体骨折(OVF)の後壁癒合不全例における麻痺発生機序を、動態CTミエログラフィー(CTM)を用いて検討した。
【対象と方法】
OVFによる椎体後壁の骨癒合不全で、動態CTM 施行した17例を対象とした。動態撮影は仰臥位と半座位の体位で行った。各体位で、骨片占拠率・硬膜管狭窄率・後壁圧潰率を計測した。また各体位間での骨片占拠率の差・後壁圧潰率の差・Cobb角の差についても相関関係を調査した。
【結果】
仰臥位/半座位で、骨片占拠率は平均33.9%/47.9%、硬膜管狭窄率は33.3%/48.6%、後壁圧潰率は76.3%/67.8%で、いずれも体位間で有意差があった。骨片占拠率の差・後壁圧潰率の差・Cobb角の差は平均13.9%・8.5%・13°で、骨片占拠率の差と後壁圧潰率の差のみ有意な相関関係を認めた。
【結論】

荷重により、椎体圧潰・後壁の短縮・後壁骨片の脊柱管内突出が同時におこり、硬膜圧迫を引き起こしていた。したがって、神経障害は仰臥位よりも、荷重位で増悪すると考えられた。

4.脊椎椎体骨折に対する地域連携パスの活用

 

鹿児島共済会 南風病院 整形外科*1
リハビリテーション病院吉村*2

 

鮫島浩司(さめしまこうじ)、川内義久*1、富村奈津子*1、中原真二*2

 

【はじめに】
平成23年8月より脊椎椎体骨折に対し地域連携パスを運用し、その効果を検証した。目的は@急性期病院にてMRI等にて正確な診断をし、適切な治療方針をたてる。A回復期病院への転院をスムースに運び、均一な質の医療の提供をめざす。B治療結果をフィードバックさせ、偽関節など成績不良を減少させることである。
【対象と方法】
平成23年8月から椎体骨折にて入院した21例、平均79.3歳を対象とした。調査項目は、パス使用率、急性期、回復期での在院日数、骨癒合率、バリアンス発生率とその内容とした。
【結果】
当地域では大腿骨頚部骨折連携パスを活用しており、パスの仕様を同様にした、本パスの導入は非常に容易であり、使用率は100%であった。急性期病院にての平均在院日数はパス導入前の21日から14日に短縮していた。骨癒合率は、調査しえた13例全例で骨癒合していた。偽関節発生の可能性の高い破裂骨折2例も骨癒合に成功していた。
【考察】

本パスが椎体骨折の保存治療の成績を向上させるツールとなる可能性が示唆された。

5.骨粗鬆症性椎体骨折保存治療後の背部痛に関連する因子の解析

 

戸畑共立病院(とばたきょうりつびょういん) 整形外科*1
産業医科大学 整形外科*2

 

清水建詞(しみずけんじ)*1、大茂壽久*1濱田賢治*1、長島加代子*1、原口敏昭*1、田原尚直*1、中村英一郎*2、大友 一*2、山口将則*2

 

【緒言】
胸腰椎移行部の骨粗鬆症性椎体骨折の保存治療後に背部痛が遺残する要因を明らかにする目的で後ろ向き研究を行った。
【方法】
2008年6月〜2011年11月に骨粗鬆症性椎体骨折にて入院での保存治療を開始し、系列の回復期病院にて継続治療したTl2もしくはLl単独骨折55例(平均年齢81歳、男10例、女45例)である。発症後61〜90日目のVAS値平均30以上を疼痛ありとし疼痛の有無を目的変数とした。説明変数は患者プロフィールおよび画像所見19項目とした。単変量ロジスティック回帰分析で有意と判定された項目について多変量ロジスティック回帰分析を行い、P値0.05未満を有意とした。
【結果】
単変量解析にて有意と判定されたのは入院までの日数、後壁損傷あり、X線での脊椎変性スコア、MRでの脊椎変性スコアの4項目であった。多変量解析では後壁損傷およびMRIでの脊椎変性スコアの2つが有意と判定された。
【結論】

Th12あるいはL1椎体骨折の保存治療後3ヶ月目に背部痛が遺残する要因は後壁損傷、MRでの脊椎変性であった。

6.骨粗鬆性椎体骨折に対するテリパラチドの治療(画像的改善例の報告)

 

岩国医療センター


土居克三(どいかつみ)


【目的】
当院では2011年2月からテリパラチドを導入し主に椎体骨折例に使用している。2012年8月までに90例に使用しているが、画像的な改善を認めた3症例について報告する。
【対象】
(症例1)50代男性。L2骨折後に偽関節となりPVP施行。腰痛改善せず後方固定を2回追加した。その後固定上端椎体の骨折を起こしcleftが残存した。テリパラチドを開始し9ヶ月でcleftが消失した。(症例2)70代女性、L2骨折に対し椎体形成とルーキロッドによる後方固定術を施行。術後テリパラチドを開始し骨質と疼痛の改善を認めた。(症例3)70代女性。Thl2骨折に対してHAブロック椎体形成術施行。痺痛改善せず後方固定を追加した。しかし感染を起こし後方instrumentを抜去し、外固定とテリパラチドにて加療。椎体前方の骨架橋を認めた。
【考察】

テリパラチドは骨形成を促進し骨質も改善し得る有益な治療薬である。骨粗鬆症を伴った患者の増加は今後必然であり我々脊椎外科の有用な治療法の一つになると考えられる。

7.骨粗鬆症由来の疼痛機序の検討とテリパラチド投与による鎮痛効果の検討

 

久留米大学 整形外科


猿渡敦子(さるわたりあつこ)、志波直人、山田 圭、永田見生

 

【はじめに】
骨粗鬆症由来の痛みについては、骨粗鬆症の治療を行うことで軽減されることが知られている。今回、テリパラチド投与が痛みの軽減にどの程度寄与するかを検証した。
【対象と方法】
当院および関連施設においてテリパラチドの自己投与をおこなっている13名(男性1名、女性12名)である。疼痛のスケールにはPain DETECTを用い、投与前および投与開始後4ヶ月で骨塩定量(腰椎・大腿骨)、採血データ(Ca,P,P1NP)を評価した。
【結果】
Pain DETECTによるスクリーニング結果では神経障害性疼痛が0名、不明が4名、侵害受容性疼痛が9名であった。不明であった4名では疼痛の改善効果が乏しく、侵害受容性疼痛の9名では疼痛改善効果が顕著であった。
【考察】
骨粗鬆症そのものの疼痛は侵害受容性疼痛と考えられ、その疼痛は骨粗鬆症の改善に伴って軽快傾向となることが示唆された。また、ビスフォスフォネート製剤での効果が乏しかった症例にも有効であると考えられた。

8.骨粗鬆症性椎体骨折に対するテリパラチド週1回投与による疼痛およびQOLの改善効果(第1報)〜多施設前向き観察研究〜

 

国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター整形外科*1
呉中通病院 整形外科*2
沖本クリニック*3
久保整形外科内科 整形外科*4
マッターホルンリハビリテーション病院整形外科*5
呉共済病院 整形外科*6
中光整形外科リハビリクリニック*7
脇田医院*8

 

濱崎貴彦(はまさきたかひこ)*1、中川 豪*2、沖本信和*3、久保 勉*4、白川泰山*5、寺元秀文*6、中光清志*7、脇田 匡*8、好川真弘*1、仁井谷学*1、泉田泰典*1、蜂須賀裕己*1、松尾俊宏*1、安本正徳*1、濱田宜和*1、杉田 孝*1

 

【対象および方法】
新規発症した骨粗鬆症性椎体骨折症例に対し、テリパラチド56.5μgを週1回皮下投与して、12週以上経過観察した23例(女性18例、男性5例 平均80.7歳)を対象とした。DEXAによる平均YAM値は55.2%、平均椎体骨折数は2.3椎体であった。検討項目は投与開始時・投与後2、4、8、10、12週の腰背部痛のVASと注射開始時・投与後4、8、12週の腰痛特異的QOL尺度としてのRDQ、包括的QOL尺度としてのEQ5Dを評価した。また投与開始時と投与12週で胸腰椎レントゲン撮影、血清P1NP、 TRACP5b値を測定した。
【結果】
期間中の新規椎体骨折の発生はなかった。投与開始時と12週で比較すると血清P1NP値は53.4から74.2へ有意に上昇、血清TRACP5b値は604から541へ有意に低下したが、血清Ca値は9.30から9.40で変化なかった。腰背部痛のVASは開始時68.2から4週で47.6と有意に減少していた。RDQは開始時16.7が8週で12.5と有意に減少し、EQ5Dは開始時0.35が8週で0.65と有意に増加していた。
【考察】 テリパラチド週1回投与により腰背部痛は4週からQOLも8週から改善していたが、12週の短期経過であるため、引き続き経過観察していく予定である。