第78回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

22.関節リウマチ患者の椎体骨折後偽関節に対するCPCを用いた椎体形成単独手術の治療成績

 

鹿児島大学大学院運動機能修復学講座整形外科学*1
鹿児島赤十字病院 整形外科*2

 

田邊 史(たなべふみと)*1、河村一郎*1、楕松昌彦*1、川畑直也*1、山元拓哉*1、井尻幸成*1、小宮節郎*1、武冨栄二*2、山下芳隆*2

 

【目的】
椎体骨折後偽関節による難治性腰背部痛(神経障害なし)に対し、2007年以降、CPCを用いた椎体形成単独手術(以下、同術式)を施行している。今回、関節リウマチ(以下、RA)患者に発症した椎体骨折後偽関節に対し同術式を施行し、治療成績を検討した。

【対象】
1年以上追跡が可能であった5例(男1例、女4例)を対象。平均観察期間2年9ヶ月、手術時平均年齢69.8歳、罹患椎体はL2が2例、T11,12,L1が1例。

【結果】
平均手術時間80分、平均出血量75g。術中合併症は認めず。術後2年で椎体再圧潰による遅発性脊髄麻痺にて再手術が1例あった。腰背部痛VASは術前75.2mmが観察時29.5mm、JOA ADL項目(14点満点)は術前3.5点が観察時9.5点であった。椎体楔状率は術前29.8%、術直後68.5%、観察時58.0%であった。新規骨折を2例に認めた。

【考察】 RA患者は骨質が悪く既存骨折合併例も多く、固定範囲の問題や術後instrument failureなど治療に難渋する場合がある。同術式は低侵襲で施行でき、最終調査時、矯正損失、新規骨折を認めたものの、臨床成績はおおむね良好であり、有用な方法の一つと考えられた。

23.骨粗鬆症性椎体圧迫骨折後の偽関節に対する椎体形成術後の画像所見

 

香川大学整形外科*1
渋谷整形外科医院*2

 

小松原悟史(こまつばらさとし)*1、有馬信男*1、渋谷 整*2、山本哲司*1

 

2006年以降、骨粗鬆症性椎体圧迫骨折後の偽関節に対して、リン酸カルシウムペースト(CPC)を用いた椎体形成術(VP)を基本とし、症例に応じ椎弓根スクリュー(PS)を使用した後側方固定術(PLF)や除圧を追加してきた。骨粗鬆症性椎体骨折後の偽関節に対してVPを施行した症例の画像所見の経過を検討したので報告する。症例は2006年10月から2012年6月までに骨粗鬆症性椎体骨折後椎体偽関節に対してVPを施行した22例(男9、女13、手術時平均年齢76歳、平均経過観察期間は19ヶ月)である。椎体楔状率、隣接椎体上下縁の後弯角、骨癒合とその時期、術後隣接椎体骨折について検討した。椎体楔状率は術前49%から術直後84%に改善し、最終診察時61%となっていた。後弯角は術前20°から術直後6°に改善したが、最終診察時25°であった。術直後から5°以上後弯が進行したのは19例で、平均2.7週に発生した。骨癒合は6例で、平均10.8ヶ月に確認した。術後隣接椎体骨折を10例に認め、平均6.8ヶ月で発生した。

24.脊椎圧迫骨折後偽関節症例の臨床的特徴

 

高知大学 医学部 整形外科

 

喜安克仁(きやすかつひと)、武政龍一、木田和伸、公文雅士、田所伸朗、谷 俊一

 

【目的】
腰痛を主訴に外来を受診される症例の中に、骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折後骨癒合不全や偽関節症例が隠れていることがある。脊椎圧迫骨折後偽関節症例の初診時の臨床像を調査し、その特徴を検討した。

【対象および方法】
単椎体の脊椎圧迫骨折後偽関節に対してリン酸カルシウム骨セメントによる椎体形成術を施行した53症例(男17例、女36例)、手術時平均年齢79.9歳を対象とした。罹患椎体は胸腰椎移行部(Th10-Ll)43椎体、腰椎(L2-5)10椎体であった。それらの疼痛部位、日常生活動作の中で一番痛い動作、Visual Analog Scale(VAS)を調査した。

【結果】
日常生活動作の中で一番痛い動作は、寝起きのときが56.6%、座位保持や立位保持のとき32.0%であった。疼痛部位は、腰部62.3%、上殿部痛64.2%、体幹部などの痛み24.5%、下肢痛11.3%であった。

【考察】 長引く腰痛や殿部痛を訴える症例には胸腰椎移行部の椎体偽関節を生じていることもあるため、胸腰椎移行部を含めた撮影が望ましい。

25.骨粗鬆症性性椎圧迫骨折に対するBalloon Kyphoplastyの経験

 

三豊総合病院整形外科

 

長町顕弘(ながまちあきひろ)、高橋芳徳、米津 浩、阿達啓介、井上和正、遠藤 哲

 

【目的】
骨粗鬆性脊椎圧迫骨折に対するballoon kyphoplasty(BKP)の有用性を検証すること。

【対象および方法】
当院でBKPを行った9例を対象とした。男性2例、女性7例、平均年齢75歳、全例圧迫骨折後偽関節となった症例であった。発症から手術までの平均期間は14週間、平均経過観察期間は44週間であった。骨折椎体高位は、Th11、Th12、L2が2例、L1が3例であった。術後新規骨折の発生頻度および部位を調査し、新規骨折発生群(F群)と非新規骨折発生群(N群)を比較検討した。

【結果】
新規骨折は6例(66.7%)に、術後平均47日で発生していた。F群の術前平均VASは5.9、術後は3.8であった。N群では、それぞれ8.5、2.7であった。JOABPEQをみると、 N群では疼痛関連障害、心理的障害において改善がみられた。平均年齢、骨密度、椎体後弯角の有意差はなかった。

【考察】 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対するBKPは新規隣接椎体骨折が生じなければ有用な治療法であると考えられた。

26.骨粗鬆症性椎体骨折の新たな治療選択肢:Balloon Kyphoplasty

 

下関市立市民病院 整形外科

 

山下彰久(やましたあきひさ)、白澤建藏、渡邉哲也

 

【はじめに】
骨粗鬆症性椎体骨折(以下、椎体骨折)に対するBalloon Kyphoplasty(以下、BKP)が徐々に普及してきた。今回われわれはBKPの短期成績と問題点を調査したので報告する。

【対象と方法】
2011年7月より当科においてBKPを施行した33椎体(男性12椎体、女性ll椎体)を対象とした。手術時平均年齢は77.9歳であった。治療高位はL1が13例で最も多かった。これらの症例において、手術侵襲、臨床成績、X線学的指標、合併症などを調査した。

【結果】
手術時間は平均39.8分であった。visual analogue scaleは術前81.2oから術後29.2mmに改善した。X線学的には椎体高整復により局所後弯角の改善が得られた症例が多かった。合併症では術後新規骨折を33.3%(11例)に認めた。セメント関連全身合併症はなかった。

27.骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節に対するBalloon kyphoplastyの手術成績

 

岡山医療センター


高橋雅也(たかはしまさや)、中原進之介、竹内一裕、高畑智宏、寺本亜留美

 

【目的】
骨粗鬆症性椎体骨折後の偽関節症例に対するBalloon kyphoplasty(BKP)の治療成績を調査し、その治療効果と問題点について検討した。

【方法】
対象は2011年3月から2012年8月までに当科にてBKPを施行した35例(男性12例、女性23例)である。手術時年齢は78.0歳であった。BKP施行高位はTh9からL4で、うち4例は2椎体に施行されていた。これら35例39椎体について、セメント漏出の有無、疼痛の変化(VAS)、合併症について検討した。

【結果】
セメントの椎体外への漏出を21椎体(53.8%)に認めたが、これによる合併症はなかった。手術後1ヶ月以上経過し追跡調査できた26症例での疼痛のVAS(0-100)は術前平均82.3が、術後28.8に改善していた。合併症は隣接椎体の骨折を26例中12例(46.1%)に、セメント塊の前方、上方への転位を各1例ずつ認めた。

【考察】 骨粗鬆症性椎体圧潰の偽関節症例に対してBKPは優れた除痛効果を有していることが認められた。しかし高率に隣接椎体骨折が生じており、原疾患である骨粗鬆症の十分な治療や装具療法との併用などを行う必要があると考えられた。