第78回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

28.骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対するBKPの椎体矯正効果一半年以上経過の成績一

 

中村整形外科、熊本大学整形外科

 

中村孝文(なかむらたかふみ)、藤本 徹、中村孝幸

 

第77回本研究会にて骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対するBKPの椎体矯正効果について術直後は椎体高10mm、楔状角12.7°の矯正効果があったことを発表した。 今回術後半年以上経過した31例についてその中長期経過を報告する。対象は平成23年2月から24年3月までにBKPを施行した31例中半年以上経過観察が可能であった29例、経過観察期間は6-18か月であった。術後痛みは全例で軽減しVAS10-20未満で経過した。獲得椎体高も最終経過観察時点での損失はなく良好な結果と考えられた。ただ術後1週間の時点でエアロバイクをリハ室で施行したあと激痛が出現、徐々にセメントの半側が前方に数o移動したため外固定を半年追加した1例を経験したため呈示する。

29.骨粗鬆症性椎体骨折に対するバルーン椎体形成術(BKP)の治療経験一成績不良例、隣接椎体骨折例の検討一

 

長崎労災病院整形外科

 

奥平 毅(おくだいらつよし)、小西宏昭、山根宏敏、日浦 健、中島武馬

 

【目的】
当院における骨粗鬆症性椎体骨折に対するバルーン椎体形成術(以下BKP)の治療成績を検討すること。

【対象】
平成23年1月から平成24年3月まで骨粗鬆症性椎体骨折に対してBKPで治療を行った44例(男/女 12:32)を対象とした。平均手術時間は47.5分であった。

【方法】
6か月以上経過観察を行い、平均経過観察期間は10.8か月であった。検討項目は術前、術後、経過観察時のVAS、JOA score、高齢障害者ADL分類、術中合併症等とした。

【結果と考察】
手術関連合併症は、セメントの椎体外への漏出(脊柱管以外)を5例、術後譫妄2例認めたが、重篤な合併症は認めなかった。術前VASは平均7.7から術後VAS平均1.7に速やかに改善したものの、経過観察時には3.0と症状軽度再燃していた。有症状の隣接椎体骨折を6例(13%)に認め(術後平均4.2週)そのうち1例に再BKPが行われていた。経過観察時にADLが悪化した症例を4例(9%)に認めた。脳梗塞、転倒による骨折がADL悪化の原因であった。高齢者が対象であり治療成績改善には周術期、後療法の更なる改善が必要と考えられた。

30.BKP術後早期の隣接椎骨折の危険因子

 

浜脇整形外科病院 整形外科

 

大石陽介(おおいしようすけ)、村瀬正昭、林義裕、岡田義之、浜脇 純一

 

【目的】
経皮的椎体後弯矯正術(以下BKP)は骨粗鬆症性椎体骨折の遷延治癒に対し有用な手術手技である。一方、BKP術後早期に隣接椎の骨折が生じ、術後も痛みが継続する症例もある。当院では2011年4月以降47例のBKPを施行し、11例(23%)に1か月以内の隣接椎骨折を認めた。今回、BKP後早期に隣接椎骨折のあった症例とそうでない症例を比較し、その危険因子について分析した。

【方法】
複数椎体骨折やinstrumentation併用例を除いた、早期隣接椎骨折群10例と骨折無し群21例を対象にした。年齢、骨折高位、骨密度に加え、骨折椎体の上下椎体のなす角から術前臥位・立位角度、術後立位角度と骨折部前縁の高さを術前後の臥位・立位で計測した。術前の臥位と立位の角度と高さの差、術前後の立位の角度と高さの差も求めた。

【結果】
早期骨折群は骨折無し群と比較し有意に術前の立位椎体高が低く、術前後の立位椎体高が高かった。それ以外の項目には明らかな差を認めなかった。

【考察】 高度椎体骨折例にセメントを用いやや過度に整復を試みた症例が隣接椎体骨折を生じやすかった。

31.骨粗鬆性脊椎椎体骨折に対する経皮的後弯矯正術の治療成績

 

JA広島総合病院 整形外科

 

山田清貴(やまだきよたか)、藤本吉範、高田治彦、中川寛顕、橋本貴士、中前稔生、高澤篤之

 

【目的】
骨粗鬆性脊椎椎体骨折は腰背部痛を呈し、高齢者の日常生活動作を著しく障害する。当科では2011年1月より経皮的後弯矯正術(balloon kyphopIasty:BKP)を施行しており、その治療成績を検討した。

【対象と方法】
骨粗鬆性脊椎椎体骨折に対してBKPを施行した119例(男54例、女94例、平均年齢78歳)を対象とした。術前後の腰背部痛の程度をvisualanalogue scale(VAS)、活動性をOswestry disability score(ODI)を用いて評価した。Xp座位側面像にて術前後の局所後弯角の変化を、CTにて骨セメントの漏出の有無を評価した。また、隣接椎体骨折、周術期合併症の有無について調査した。

【結果】
腰背部痛のVASは術前平均7.9±1.7が術直後2.6±2.2、術後1年4.2±3.9、ODIは術前平均65.5±17.9が術直後41.3±18.4、術後1年32.2±30.0に有意に改善した。局所後弯角は術前平均13.6±12.6度が術後1年1.1±Il.7度に改善した。骨セメント漏出は22.7%に認めたが全例無症状であった。隣接椎体骨折を21.8%に認めたが感染、塞栓症などの全身性合併症は認めなかった。

【考察】 BKPは術後早期から良好な除痛効果を認めた。低侵襲な手術であり、高齢者に特に有用であると考える。

32.骨粗鬆症性椎体偽関節に伴う遅発性神経障害に対 する経皮的椎体形成術

 

JA広島総合病院 整形外科

 

中前稔生(なかまえとしお)、藤本吉範、高田治彦、山田清貴、橋本貴士、高澤篤之、中川寛顕

 

【目的】
本発表の目的は骨粗鬆症性椎体骨折偽関節に伴う遅発性神経障害(DND)に対する経皮的椎体形成術(PVP)の治療成績を検討し、DNDの発症機序について検討することである。

【方法】
骨粗鬆症性椎体骨折偽関節に対しPVP施行例のうち、DNDを認めた37例をDND群、神経障害のない74例の対照群とした。臨床成績はVAS、ODI、modified Frankel分類を用いて評価した。画像所見として、坐位時の局所後彎角、椎体不安定性および椎体後壁骨片の脊柱管占拠率について検討した。

【結果】
VAS、ODIは両群ともに術後有意に改善した。Modified Frankel分類では97%で術後麻痺の改善が認められた。術前画像所見では局所後弯角はDND群・対照群間に有意差は認めなかったが、椎体不安定性、脊柱管占拠率はいずれもDND群で有意に高値であった。また、DND群の椎体不安定性は術後有意に改善していたが脊柱管占拠率に変化はなかった。

【考察】 遅発性神経障害発症には、椎体不安定性・後壁骨片による脊柱管狭窄が関与していた。また椎体不安定性の改善が麻痺の改善に関与していた。高齢者の椎体不安定性を伴うDND症例にはPVPが適応となりうる。

33.当院におけるballoon kyphoplastyとHAブロックを用いた椎体形成術の手術成績についての比較

 

大分整形外科病院

 

中山美数(なかやまよしかず)、大田秀樹、松本佳之、酒井 翼、井口洋平、小林達樹、木田浩隆、竹光義治

 

【目的】
当院では脊椎椎体骨折に対して従来HAブロックを用いた椎体形成術(HA群)を行ってきていたが、balloon kyphoplasty(以下BKP群)を平成24年4月より開始している。今回2群間について比較調査したので報告する。

【対象】
HA群13例、BKP群が7例であり、骨折部高位はHA群でL1、BKP群でT12に最も多く、両者とも女性で偽関節や後壁損傷を伴う骨折型が多い傾向であったが、年齢・性別・骨折部高位・骨折型・手術までの経過期間などで両群間に有意差はなかった。

【結果】
手術時間はBKP群で54分、HA群で115分、出血量はBKP群で13ml、HA群で166m1と有意差を認めた。術後セメントの漏出を認めたものが2例、HAブロックの逸脱を認めたものが7例であったが全て臨床症状を認めなかった。術直後後弯矯正角及び椎体高の矯正率は有意差はなかったが、最終観察時BKP群で0.3°、HA群9.6°と後弯角の矯正損失が起こり有意差を認めた。術後にBKP群で隣接椎体骨折、HA群でスクリューの逸脱を認めた。

【結語】 BKPは低侵襲で且つ10°未満の後弯矯正を獲得でき後壁損傷のある破裂型骨折にも有用であると考えられた。