第79回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題1)

1.腰椎分離症、終末期様像でありながら骨癒合傾向を認めた 1例


徳島大学 整形外科*1、帝京大学医学部附属溝口病院 整形外科*2、さかまき整形外科*3、徳島大学病院リハビリテーション部*4

 

杉浦宏祐(すぎうら こうすけ)*1、東野恒作*1、西良浩一*2、酒井紀典*1、酒巻忠範*3、高田洋一郎*1、合田有一郎*1、加藤真介*4

 

【はじめに】腰椎分離症は小児期に多く発症し、画像診断、病期分類としては MRIが有用である。病期分類のうち終末期では骨癒合が得られる可能性が乏しい。今回終末期様画像を認めながら骨癒合傾向を認めた 1例を経験したので報告する。

【症例】10歳男性、野球部に入部 4か月後腰痛出現し、近医受診。画像上腰椎分離症を認めた。スポーツは中止し、ダーメンコルセットを作成、経過観察となった。3か月目でCTを撮影したところ分離部の癒合は得られていない状態であった。他院初診時から 4か月目で当科紹介。画像所見では両側 L5に分離症を認めた。分離部は MRI T1、T2とも low intensity、椎弓根部での輝度変化を認めなかった。CT上骨硬化像を認めた。右側は終末期像様、左側は進行期様であった。再度保存的治療を開始し硬性コルセットを着用した。装着後 5か月で両側とも癒合傾向を認め、7か月でスポーツ復帰用コルセットに変更した。当科受診から 9か月目で左側は再度分離傾向を認めたが右側は癒合傾向を認めた。現在経過観察中である。

2.成長期腰椎分離症の早期診断と保存療法

 

長崎三菱病院 整形外科*1同リハビリテーション科*2

 

矢部嘉浩(やべ よしひろ)*1、池田章子*2、篠原晶子*2、有福浩二*2

 

【目的】本研究の目的は、成長期腰椎分離症におけるMRIとCTを用いた早期診断と病期に応じた保存療法の効果を明らかにすることである。

【対象と方法】対象は、2011年3月〜 2012年12月までに当院を受診した18歳未満の腰痛患者のうち腰椎分離症を疑われた12例(男性9例、女性3例、平均年齢 14.3歳)であり、全例スポーツを行っていた。診断は MRI T2脂肪抑制画像で椎弓根の骨髄浮腫の有無を確認し、さらにCTを用いた病期分類を行い病期別に治療方針を決定し保存療法を行った。臨床症状の推移は疼痛について VASを、生活動作について日整会腰痛治療判定基準のADLスコアを用い、初診時から 3ヶ月後までの経過を追跡した。

【結果】MRIで骨髄浮腫を認めたのは12例中9例であり、CTによる病期分類では初期分離9例、進行期分離1例、終末期分離2例であった。骨癒合を目指した初期分離8例中6例で骨癒合が得られたが(片側初期5例、両側初期1例)、片側初期(病巣)+対側進行期の2例では初期分離が進行期分離へと移行した。臨床症状は全ての症例で改善した。

【考察】分離症の骨癒合に関しては MRIを用いた初期診断と早期治療が重要であり、病期に応じた保存療法は症状の改善に有効であった。

3.成人に発生した新鮮腰椎分離症

 

徳島大学 整形外科*1帝京大学医学部附属溝口病院 整形外科*2


酒井紀(さかい としのり)*1、西良浩一*2

 

腰椎分離症は一般的に思春期のスポーツ愛好家に多く発生し、成人で発生することは非常に稀である。これまでの英語論文、また一般成人 2,000人を対象とした我々の調査においても終末期分離症は約6%にみられるものの、成人における新鮮骨折は皆無であった。最近,我々はプロスポーツ競技者を始めとする 12例の成人スポーツ競技者における新鮮腰椎分離症を経験したので報告する。12名中、2名に両側初期、8名に片側初期、2名に片側進行期分離症を認めた。プロ野球選手3名、プロサッカー選手2名、大学生7名であった。L5が7例、L3およびL4が2例ずつ、L2が1例であった。3例の片側分離は反対側の終末期分離,また1例は隣接椎弓の分離症に引き続き発生したもの(多発例)であった。全例保存治療を行い、1名を除いて競技に復帰した。保存治療は骨癒合を目的とするものではなく,疼痛管理を目的とした。一般成人において新鮮分離症が発生することは非常に稀であるが,競技レベルの非常に高いスポーツ競技者においては起こりうることがわかった。

4.MRI輝度変化の部位からみた腰椎分離症の病態

 

徳島大学 整形外科*1徳島大学病院リハビリテーション部*2翠鳳第一病院整形外科*3帝京大学医学部附属溝口病院 整形外科*4

 

酒井紀典(さかいとしのり)*1、合田有一郎*1、高田洋一郎*1、東野恒作*1、加藤真介*2、美馬精一*3、西良浩一*4

 

腰椎分離症は疲労骨折と考えられているが、その発生に関しては不明な点も多い。分離症発生の病態を把握するため、超初期・初期分離症患者28名(男性25名、女性3名、平均年齢は14.1歳 )のMRI初診時 MRIのSTIR像を参考に、高輝度変化 (HSC: High Signal Change)の広がりを解析したので報告する。

HSCを認めたのは、31椎体(両側18例、片側13例)の49椎弓根領域であった。骨折部(関節突起間部)を中心として、Zone1:骨折部の頭・腹側(椎弓根側)、Zone 2:骨折部の尾・背側(棘突起側)、Zone 3:骨外の3つの領域に分け、HSCが認められる領域を調査した。全49椎弓根領域中、HSCを Zone1のみに認めたのは31例(63.3%),Zone 1に加えZone2に認めたものは5例(10.2%)、Zone1に加えZone3に認めたものは7例(14.3%)、すべてのZoneに認めたものは6例(12.2%)であった。

長管骨の疲労骨折のMRI像は、骨折部の頭尾側また骨外(軟部組織)に浮腫像を呈する。超初期・初期分離症では、骨折部の椎弓根側のみしか浮腫像を呈しない症例が半数以上を占めており、分離症が単なる疲労骨折ではないことを示唆している。

5.MRI 椎弓根部輝度変化からみた腰椎分離症の発生高位と予後

 

徳島大学 整形外科*1さかまき整形外科*2徳島大学病院リハビリテーション部*3帝京大学医学部附属溝口病院 整形外科*4

 

合田有一郎(ごうだ ゆういちろう)*1、酒井紀典*1、酒巻忠範*2、高田洋一郎*1、東野恒作*1、加藤真介*3、西良浩一*4

 

【はじめに】腰椎分離症の頻度は6%、その約90%がL5にみられるといわれている。しかしながら、これらの調査には発生段階の分離症は含まれていない。本研究では、腰痛を主訴として来院した思春期スポーツ選手において、発生段階の分離症の発生高位と予後について調査したので報告する。

【対象】対象は、MRI T2 FSで椎弓根に高輝度変化を認めた超初期・早期分離症患者98名(女性31名、男性67名)(平均年齢13.6 歳 (9-18 歳))とし全例にスポーツ中止指示、硬性コルセット処方し、診断後 3ヶ月以降の骨癒合率について調査した。

【結果】101 椎体・150 椎弓根に輝度変化を認めた。L3: 9 椎体、L4: 25椎体、L5: 67 椎体であり、L5 の頻度は66.3 %であった。骨癒合率は L3: 100% 、L4: 97.1% 、L5: 84.4% であった。

【考察】本研究ではL5が、66.3 %と大きな相違があった。また骨癒合率の結果も加え、L5 以外の分離症は比較的保存的に治癒しやすいのでは、と考えられる。