第79回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題2)

6.腰椎分離症に対する分離部除圧術の経験

 

岡山大学病院 整形外科


荒瀧慎也(あらたき しんや)、田中雅人、杉本佳久、瀧川朋亨

 

【目的】腰椎分離症・分離すべり症に対する分離部除圧術の臨床成績を検討すること。  Case report

【対象と方法】当院で分離部除圧術を施行し、半年以上経過観察が可能であった3例を対象とした。男性2例、女性1例、平均年齢63.3歳(53〜71歳)であった。経過観察期間は平均23カ月(6〜71カ月)であった。 手術時間、出血量、VAS(腰痛、下肢痛、下肢しびれ)、JOA scoreについて検討した。

【結果】手術用顕微鏡または内視鏡を使用し、分離部除圧を実施した。分離椎弓のみの除圧が1例、他椎間の除圧併用が2例であった。 全例で術後に下肢症状は軽快したが、長期的に腰痛の増悪を認めた症例がみられた。

【考察】分離部の除圧術単独で良好な成績を得たとする報告が散見される。当院では、以下の基準を満たす症例に対し本手術を施行した。 ・保存加療に抵抗性である ・下肢痛が主訴で、腰痛はないかあって も軽度である ・椎間不安定性がないか軽度である ・ 40歳以上 短期的には下肢症状の軽減がみられたが、除圧術単独では症状の再増悪を認める症例が存在した。

7.腰椎分離症に対する分離部修復術 MIS pedicle¬rod (Smiley Rod) 法の経験

 

高松赤十字病院 整形外科

 

小坂浩史(こさか ひろふみ)、三代卓哉、鹿島正弘、岩瀬穣志、西岡 孝、三橋 雅

 

【はじめに】腰椎分離症はスポーツを好む若年者に多く発症する。保存治療が原則であるが成人症例に対しては手術が必要な場合もある。今回分離部修復術として MIS pedicle-rod(Smiley-Rod)法を行ったので報告する。

【症例(L5両側分離症)】35歳男性、職業機械整備。スポーツ歴は中学ソフトボール、高校野球で軽度腰痛あるも当時は未治療。保存治療抵抗性の腰痛左下肢痛があり仕事、ADL制限強く手術施行となる。

【手術方法】正中約5センチの皮切で分離部郭清を施行。pedicle screwは別皮切で経皮的に刺入。この皮切から腸骨海綿骨採取可能である。RodはL5棘突起基部の尾側を通し、棘突起を圧着し分離部を安定化させ固定する。単純レントゲン正面でインプラントが笑っているように見えるため我々は同方法を Smiley-Rod法と呼んでいる。

【考察】分離部修復術には screw, wire, pedicle-rod, pedicle-hookなどがある。活動性が高い症例が多くより強固な固定性が要求されるため、最近はpedicle screwを用いる事が多い。pedicle-rod法を MISで行うことにより pedicle-hookよりも術野の展開が少なく低侵襲で施行することができる。

【まとめ】腰椎分離症手術(分離部修復術)を MIS pedicle¬rod法で施行したので紹介した。

8.腰椎分離を伴う先天性腰椎高度すべり症に対して矯正固定術を施行した 1例

 

高知大学 医学部 整形外科


喜安克仁(きやす かつひと)、武政龍一、木田和伸、公文雅士、田所伸朗、加藤友也、谷 俊一

 

13歳男性。野球部 (キャッチャー )。野球中に腰痛と左大腿外側部痛を自覚し、他院にて第5腰椎分離すべり症の診断で紹介となった。初診時、SLRTは両側30°で hamstring tightnessを認めた。筋力、深部腱反射は正常であった。X線にて第5腰椎の pars defectを認めるも、分離によるすべりはなく、dysplastic typeのすべりにスポーツによる疲労骨折が生じたものと診断した(Meyerding分類V度、slip angle 54.4 °、 %slip 62.9%)。手術は、遊離椎弓を切除し、両 L5神経根の除圧を行い、L4-S1で cantilever操作にて矯正を行った。矯正に際して、我々が開発した整復フレーム (Spinopelvic realignment frame)で矯正時に骨盤〜下肢を挙上しながら仙骨骨盤を前傾させ、矯正の補助とした。術後は一過性の左前脛骨筋の筋力低下を認めたが、回復した。術後 X線では slip angle 12.3、 %slip 22.2%、hamstring tightnessは術後 3ヶ月で 70°まで改善し、野球に復帰した。

9.20歳以下における腰椎分離症及び分離すべり症に対する手術的治療の術後成績

 

大分整形外科病院

 

中山美数(なかやま よしかず)、大田秀樹、松本佳之、酒井 翼、井口洋平、清田光一、木田浩隆、竹光義治

 

スポーツに起因した20歳以下の腰椎分離症及び分離すべり症の手術成績を調査したので報告する。

対象は6例。男性4例、女性2例で、年齢は15〜18歳 (平均15.8歳)であった。疾患は腰椎分離症 4例、腰椎分離すべり症2例であり、高位はL3が1例、L4が2例、L5が3例であった。術式は分離部固定術が3例、椎体間固定術が3例であった。全例が術前は運動部に所属していた。術前JOAスコアは 8~23点(平均17点)で、最終観察時JOAスコアは23〜29点(平均26.5点)であり、平林法改善率では50〜100%(平均80.2% )であった。転居のため follow-upが途絶えた 2例を除いた 4例の骨癒合は良好であった。運動復帰は術後 6~11ヵ月 (平均 7.6ヵ月 )で体育レベルまでが 3例、元の運動部活動レベルが 3例であった。

手術療法後の運動復帰率は 100%であったが、元の部活レベルで言えば 50%であった。骨癒合までの長い後療法による休部期間が復帰への妨げになったと思われる。分離症そのものが必ずしもスポーツ活動の支障になる訳ではないので症例は厳選する必要がある。