第79回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

15.腰椎分離症として紹介された椎間関節異型性を伴う2例

 

高松赤十字病院 整形外科


岩瀬穣志(いわせ じょうじ)、三代卓哉、鹿島正弘、小坂浩史、西岡 孝、三橋 雅

 

【はじめに】成長期の腰痛としては、外傷、感染、腫瘍、先天性疾患などがあり、中でもスポーツ障害としては腰椎分離症によるものが多く日常診療にて散見される。今回、腰椎分離症として当科へ紹介されたが、画像上分離症を認めず、椎間関節異型性もしくは低形成による腰痛を呈した症例を2例経験したので報告する。

【症例1】17歳、女性。スポーツはバトミントンをしており、以前より腰痛を繰り返していた。ある日試合中に右下肢痛を伴うようになり近医受診した。単純レントゲン、MRIにて腰椎分離症と指摘され当科紹介となった。初診時、強い腰痛と右下肢痛を訴え、CTにて右 L5下関節突起の異型性を認めた。画像上は明らかな分離症は認めなかったがMyerdingU度のすべり症を認めた。すべりに伴うL5/S間の狭窄により下肢痛が誘発されたと考えられた。現在、保存療法にて症状の改善を認めている。

【症例2】17歳、女性。中学生時からバスケットボールをしており、当時から腰痛の自覚があった。高校へ進学し、スポーツは休止していたものの腰痛が改善しないため近医を受診した。単純レントゲン、MRIにて腰椎分離症を指摘され、当科紹介となった。初診時、明らかな神経所見は認めなかったが、強い腰痛とL5棘突起への圧痛を認めた。単純CTにて、明らかな分離症を認めず、L5/S1椎間関節の変性を認め、これによる腰痛増悪と考えられた。現在は保存療法にて加療中である。

【まとめ】Wiltseらは脊椎すべり症の臨床分類として異型性症、分離症、変性、外傷性、病的の5つに分類しているが、日常診療では若年者では分離症が最も多いとの報告がある。今回の症例1は異型性もしくは若年期の外傷による椎間関節の破綻によりすべりを生じ、症状の一因になったと考えられた。症例2もすべりは認めないものの、椎間関節の低形成および強い腰椎前弯による椎間関節症の悪化が腰痛の一因と考えられた。

16.形成不全性第5腰椎高度辷り症の 4例

 

大分整形外科病院

 

井口洋平(いぐち ようへい)

 

Meyerding分類V、W度の腰椎高度すべり症は神経障害に加え、姿勢異常、腰背部痛を伴い手術加療を選択せざるをえない。しかしこれらは先天的な腰仙椎形態異常を伴うことが多く、さらに腰椎下垂症に至ると回旋変形や短縮変形を合併し整復と固定に難渋する。また整復に伴う神経障害の合併も多い。

当院で経験した腰仙椎形成不全を伴う高度辷り症の4例の手術成績について報告する。

3例は手術時年齢 13,14,15歳の女児。症状は腰痛のみで、全例に仙骨前上方の変形を認め、L5は高度に辷っていた。神経根の十分な除圧とL5/Sの椎体間固定を行い矯正した。2例に一過性のL5神経根障害が出現したが、経過観察で完全回復した。

1例は35歳女性。L5腰椎は完全に下垂していた。矯正は困難であり、仙骨から L5椎体に貫通するスクリューを刺入し、L4からのin-situ後方固定を行った。

腰仙椎の形成不全を伴う辷り症は進行性であり、高度になるほど治療に難渋し神経合併症の危険性も高くなるため、辷りが軽度の場合でも早期手術が望ましいと考える。

17.思春期特発性側彎症手術例のスポーツ復帰

 

鹿児島大学 整形外科


山元拓哉(やまもと たくや)、井尻幸成、永吉隆作、田邊 史、d松昌彦、冨永博之、河村一郎、米 和徳、小宮節郎

 

思春期特発性側彎症 (AIS)の手術例では、多椎間固定による脊柱可動性の低下等スポーツ活動へ及ぼす影響が懸念される。今回 retrospectiveに検討を行った。

2006年以降に手術施行し,術後1年以上経過した40(全例女児 )例を対象とした。術前および術後の部活動への参加、FFD (Finger floor distance)、呼吸機能、スポーツのパフォーマンスの変化、ストレッチ実践の有無、レントゲン所見との関係につき検討した。 

運動部に所属していた9例中 5例は復帰出来なかったが、いずれもスポーツ再開時期が引退と重なったのが理由であった。退院後ストレッチを継続した例は2割以下であったが、パフォーマンスの低下やFFDの悪化は明らかでなかった。Distal instrumented vertebraや腰椎カーブのCobb角、L4 tiltの影響は明らかではなかった。 

本シリーズではAISの手術がスポーツ活動へ与える影響は明らかでなかったが、トップアスリートやスポーツの種目別での検討が今後必要である。

18.医学部学生の運動部活動と腰痛の関連

 

久留米大学 整形外科

 

山田 圭(やまだ けい)、佐藤公昭、脇岡 徹、吉松弘喜、猿渡敦子、永田見生、志波直人

 

【はじめに】医学部学生の運動部活動が腰痛の発生に与える影響について調査検討した。

【対象と方法】医学部 4年生 72名(男 59名、女 13名)を対象とした。質問項目は、運動部所属の有無、腰痛の既往、誘因、程度(NRS)、JOABPEQ、Roland Morris Disability Questionnaire(RMDQ)、BS-POP(患者用)で、運動部所属学生(A群)と所属しない学生(B群)に分けて比較検討した。

【結果】腰痛の既往は A群で 35例、B群は 13例で、誘因は、A群が運動中 14例、日常生活動作 12例、誘因なし 9例で、B群は日常生活動作 10例、誘因なし 3例であった。腰痛の程度は A群が 4.6±1.8、B群が4.2±2.2で有意差はなく、JOABPEQでは心理的障害が運動部群で高い傾向にあった。RMDQ、BS-POPは有意差なかった。

【考察】医学部の運動部活動は腰痛発生に有意な影響を与えていなかったが、A群の 40%で腰痛が運動中に発生しており、競技、練習中の予防方法について検討する必要がある。