第79回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題5)

19.スポーツ脊椎障害の小経験

 

今給黎(いまきいれ)総合病院 整形外科*1寺田病院 整形外科*2


宮口文宏(みやぐち ふみひろ)*1、山口 聡*1、古賀公明*1、松永俊二*1堀川良治*2、寺田 歩*2

 

【目的】スポーツ脊椎障害は、high energyによる脊髄損傷と慢性的な疲労骨折に分類される。スポーツ中の高所からの転落やプールの飛び込みによる頚髄損傷や、成長期の終盤損傷や分離症が症例としてあげられる。今回我々はスポーツ脊椎障害の 3症例を経験したのでここに報告する。

【症例.1】17歳、男性。新体操にてマット運動中、頭部から着地し受傷す。C4/5脱臼骨折による四肢不全麻痺にて当院へ紹介となる。受傷当日 C4/5後方固定術施行す。術前 FrankelCが術後 Eに改善す。

【症例.2】17歳、男性。腰痛出現し、3週間後当院を受診す。CT・MRI精査後 L4分離を認め、分離部の右側が初期、左側が進行期であり、保存的に加療し症状は軽快した。

【症例.3】58歳、男性。運動会で全力疾走の後腰痛、右下肢痛出現す。当院受診し、MRI上 L5/S1レベルにヘルニアを認め、保存的に加療するも症状改善せず。PED施行す。

【考察】スポーツ外傷の脊損であれば、手術も含めて早期リハが必要である。慢性的なストレスによるものであれば、分離症・椎間板ヘルニアなどは手術になると可能であれば低侵襲が望まれる。

20.スポーツ選手・愛好家に対する MED後のスポーツ復帰

 

大分整形外科病院

 

酒井 翼(さかい つばさ)、大田秀樹、松本佳之、中山美数、井口洋平、木田浩隆、竹光義治

 

【目的】近年普及している内視鏡下椎間板摘出術 (以下MED)をスポーツ愛好家・選手に行い、その低侵襲性、臨床成績、スポーツ復帰について検討すること。

【対象と方法】対象は当院で MEDを施行したスポーツ愛好家・選手の 25例(男性 19例、女性 6例)で、平均年齢は 33.4歳、平均観察期間は 6.3ヵ月であった。術後平熱化までの日数、術後 4日目の CRP および CPK値、スポーツ復帰率、術後復帰までの期間、臨床成績(JOA スコア改善率)、合併症の有無について調査した。

【結果】術後平熱化までの日数は 2.5 ± 1.8日で、CRP は0.7 ±1.3mg/dl、CPK は 181.0 ± 117.2IU/l であった。スポーツ復帰率は84% (25例中 21例 )、復帰までの期間は 2.8 ± 1.5ヵ月であった。1 例に硬膜損傷を認めたが野球に復帰できた。経過観察中の再発例は認めなかった。

【結論】本研究においてスポーツ復帰という観点から見ると比較的良好な結果であった。しかし、後療法の簡略化による極端な早期スポーツ復帰は再発を誘発する危険があり、十分に満足できる結果を得るためには体幹強化などの十分なリハビリテーションと患者教育が特に重要と考える。

21.若年者スポーツ選手の腰椎椎間板ヘルニア手術例の検討

 

広島大学大学院 整形外科学*1JA広島総合病院 整形外科*2


宇治郷 諭(うじごう さとし)*1、田中信弘*1、中西一義*1、亀井直輔*1、大田 亮*1、藤岡悠樹*1、平松 武*1、越智光夫*1、藤本吉範*2

 

【目的】若年者スポーツ選手の腰椎椎間板ヘルニア症例の手術例について検討する。

【方法】2004年 1月から 2012年 12月までに腰椎椎間板ヘルニアに対して手術を施行した 20歳未満のスポーツ症例 33例を対象とした。また,同時期に手術を施行した 20歳未満非スポーツ症例 11例を対照群と設定して検討を行った。手術の内訳は,顕微鏡手術 40例,内視鏡手術 4例であった。手術時年齢は 16 (10-19)歳であった。検討項目として罹病期間,腰椎 JOAスコア,術後スポーツ復帰期間について検討した。

【結果】罹病期間は,スポーツ症例 4 (1-72)ヵ月,対照群 5 (1-12)ヵ月で有意差はなかったが,1年以上の症例をそれぞれ 9例,1例に認めた。腰椎JOAスコアは,それぞれ術前17 (6-20),16 (5-18)から術後 27(24-29),27 (24-29)へと有意に改善した。スポーツ症例におけるスポーツ復帰期間は 2 (2-4)ヵ月であった。

【考察】手術成績は良好であり,術後早期にスポーツ復帰が可能であった。スポーツ症例では罹病期間が1年を超える症例も多く,保存治療抵抗例は専門医を受診することが望ましいと考える。

22.アスリートの腰椎椎間板ヘルニアに対する percutaneous endoscopic discectomyの治療成績 -腰痛に着目して Percutaneous endoscopic discectomy for lumbar disc herniation in athletes -Clinical results of low back pain

 

JA広島総合病院 整形外科

 

中前稔生(なかまえ としお)、藤本吉範、高田治彦、山田清貴、橋本貴士、高澤篤之、中川寛顕

 

【目的】近年、腰椎椎間板ヘルニアに対する低侵襲手術として percutaneous endoscopic discectomy (PED)が行われるようになってきている。本発表の目的は、アスリートの腰椎椎間板ヘルニアに対するPEDの治療成績について、特に腰痛に着目して検討することである。

【方法】2012年 1月から 2013年 1月までに腰椎椎間板ヘルニアに対して局所麻酔下に PEDを施行した 23例中、スポーツ活動を行っている11例について検討した。年齢は平均 24歳で術後経過観察期間は平均 3.7ヵ月であった。検討項目として手術時間、術前後の腰痛の visual analogue scale(VAS)について検討した。また下肢痛の VASおよび Oswestry Disability Index (ODI)についても検討した。  【結果】手術時間は平均 88分であった。術前後の腰痛のVASはそれぞれ6.2、0.6と腰痛は術後有意に改善した。下肢痛の VASは術前 5.4から術後 0.9に有意に改善し、また ODIも術前 22%が術後 2か月で 2.2%と改善した。  

【考察】今回の検討でアスリートの腰椎椎間板ヘルニアに対して PEDを行うことにより下肢痛だけでなく腰痛も有意に改善することが分かった。

23.ラグビートップリーグ選手の頸椎・腰椎障害の 2例

 

佐田厚生会佐田病院 整形外科

 

藤原将巳(ふじわら まさみ)

 

【目的】ラグビートップリーグのチームドクターとして選手の脊椎障害治療に従事する機会が多い。脊椎障害の手術治療後、完全スポーツ復帰可能であった 2例を報告する。

【症例1】20代男性腰椎椎間板ヘルニア 合併症 第2.3.5腰椎分離症 右臀部〜下肢外側痛 足関節、拇趾背屈力低下で競技不能。MRIで右 L4/5ヘルニアを認めた。顕微鏡下 Love法施行、術後 1ヶ月よりアスレチックリハビリテーション開始、術後 4か月でスポーツ復帰可能であった。その後 3年経過しているが再発も無く、レギュラー選手として活躍している。

【症例2】20代男性 頸椎巨大骨棘C 3/4による一過性四肢麻痺、ラグビー練習中にタックル動作で一過性の四肢麻痺出現、その後速やかに症状改善し、脊髄症状の遺残は無かった。C3/4レベルで右優位に脊柱管に突出する巨大骨棘あり、MRIで頸髄 T2高信号を認めた。スポーツ継続の強い希望があり。顕微鏡下に巨大骨棘を完全に除去し、国分法による腸骨移植を行った。術後 6ヶ月でプレー復帰可能であった。

24.プロ野球選手における腰椎椎間板変性の画像評価

 

九州大学 整形外科


播广谷勝三(はりまや かつみ)、松本嘉寛、岡田誠司、林田光正、岩本幸英


【はじめに】プロ野球選手は少年期より厳しい練習を経験していると考えられ、腰椎にも過度のストレスが加わっていると予想される。プロ野球選手における腰椎椎間板変性の画像所見について評価した。

【対象】2008年から 2013年 3月までに腰下肢痛を主訴に受診した 20例を対象とした。19例にX線検査、19例に MRIを施行した。L1-2から L5-S1までの腰椎椎間板変性について、X線を改変 Weiner分類、MRIを Prirrmann分類によって評価し、Pfirrmann分類 Grade V以上を変性ありとした。

【結果】X線では grade 0が 69椎間、1が 14椎間、2が 6椎間、3が 6椎間に認められた。Grade 2または 3はすべて L4-5あるいは L5-S1椎間板であった。MRIでは、19例中 16例で1椎間以上の椎間板変性を認め、変性椎間板数は平均 1.7椎間(0-5椎間)であった。高位別には L1-2 2例、L2-3 2例、L3-4 3例、L4-5 11例、L5-S1 14例であった。年齢が高くなるにつれて変性椎間板数が増加する傾向にあった。また、腰椎椎間板ヘルニアを 6例に、high intensity zoneを 2例に、滑膜嚢腫を 1例に認めた。

【考察】プロ野球選手では高率に腰椎椎間板変性を認めるものの、一般に適切な治療やトレーニングによりプレー可能となると考えられた。