第80回西日本脊椎研究会 抄録 (一般演題2) |
6.インソール型足底荷重計による経時的姿勢評価と腰痛との関連
中村英一郎(なかむら えいいちろう)、筒井隆夫、山根宏敏、山口将則、酒井昭典
【目的】腰痛診療では本人の記憶より発症時状況を把握するしかなく客観的エビデンスを得るのが難しい。本研究の目的は、インソール型足底荷重記録計を用いて日常生活での姿勢を経時的に把握し腰痛との関係を客観的に調査する全く新しい腰痛評価システムを構築することである。 【方法】我々が開発したインソール型足底荷重記録計を用いて一日の荷重データを記録し、一方、痛みを入力する装置を開発しそのタイミングを記録した。両データを同期させ姿勢と腰痛の出現を検討した。 【結果】荷重分布と荷重変換のパターン解析により、立位、歩行、座位、臥位の動作を約95%の精度で把握でき、各々の姿勢の連続時間を把握できた。調査対象者のうち、立位作業者では静止した立位時間が30分〜60分を超えると腰痛の訴えが出現し、座位作業者でも同様に静止座位の時間が60分〜2時間を超えると腰痛の訴えが出現した。 【結論】立位作業、座位作業などのstaticな作業に伴う腰痛の場合、その姿勢の持続時間がある閾値以上になると腰痛が出現することが客観的に把握できた。 |
7.腰部脊柱管狭窄症に対する歩行負荷における腰痛の検討
総合せき損センター
村上剛史(むらかみ こうじ)、森英治、森下雄一郎、植田尊善、前田健、弓削至、河野修、高尾恒彰、坂井宏旭、益田宗彰、林哲生、松下昌史、芝啓一郎
【目的】腰部脊柱管狭窄症において歩行によって誘発される腰痛を伴う症例は少なくない。また腰痛に対する除圧術の効果については未だ不明な点が多い。今回、腰部脊柱管狭窄症に伴う腰痛の特性や除圧術の効果について検討した。 【対象と方法】再手術や不安定性のある症例を除外した腰部脊柱管狭窄症に対して固定術を併用せず、L4/5またはL3/4、4/5の部分的椎弓切除術のみを行った症例のうち、トレッドミル歩行負荷試験により腰痛が出現または増強した15例と負荷試験前後で腰痛を認めなかった17例を対象とした。術前の画像の特徴や術前後の腰痛の変化について検討した。 【結果】術前の歩行負荷試験で腰痛が出現または増強した15例中12例は術後早期に腰痛が改善し、腰痛が残存した3例も腰痛が生じるまでの歩行距離の延長を認めたことから腰痛に対する除圧術の治療効果が示唆された。 |
8.腰痛疾患における痛みやしびれのVAS評価法の特性について
愛媛県立中央病院整形外科
【目的】腰椎疾患におけるVAS値の゛臨床的に意味のある変化量゛を報告すること 【対象】日整会腰痛治療成績判定基準改正を目的とする調査票に回答した腰痛患者350名のうち、1)他の整形外科的疾患の合併がなく、2)患者自身、および医師の評価で調査期間内に腰痛の状態に変化がないと判断された、122名を対象とした。 【方法】3部位(腰痛、殿部・下肢痛、殿部・下肢のしびれ)の痛みやしびれの強さをVAS(0〜100)で評価した。検討項目は、1回目と2回目のVAS値の差の分布、最小可検変化量(minimum detectable change:MDC95)、である。 【結果】1、1回目2回目のVAS値の差の平均値±標準偏差は、腰痛:-1.2±18.3、殿部・下肢痛:-1.3±18.0、殿部・下肢のしびれ:-0.2±20.8、であった。 3、MDC95は、腰痛:24.8、殿部・下肢痛:20.9、殿部・下肢痛のしびれ:27.1、であった。 【結語】痛みやしびれが改善(悪化)したと判断するには、MDC95以上の変化量が必要である。 |
9.T1 rho mapping による椎間板変性度の評価
熊本大学大学院生命科学研究部 整形外科学分野
藤本徹(ふじもと とおる)、谷脇琢也、岡田龍哉
【目的】近年、プロテオグリカンや水分量などの関節軟骨成分の質的変化を非侵襲的に解析する方法として、T1rho mapping を用いたMRI評価法が注目されている。本研究の目的はT1rtho mapping を用いて椎間板変性度の質的評価を検討することである。 【方法】腰椎疾患に対しT1rho mapping を撮像した11症例で各症例のL1/2〜L5/Sの5椎間、総計で55の椎間板を本研究の解析対象とした。3Tesla MRI 装置を用い3D fast-field-echo 法により腰椎矢状断像を撮像した。得られた画像を基にT1rho mapping を作成し、椎間板髄核に関心領域を設定して T1rho 値を測定し、検者間での T1rho 値を Pfirrmann の分類を用いた椎間板変性 Grading と比較し、両者の相関を検討した。 【結果】T1rho 値における検者間での相関は r=0.938、P<0.01と有意に相関を認めた。椎間板変性 Grading 毎のT1rho 値は、GradeTで平均2228、GradeUで183.8、GradeVで156.5、GradeWで111.6であった。GradingとT1rho 値の間の相関はr=-0.533、P<0.0001と有意に相関を認めた。 【考察】T1rho mapping は腰痛と相関があると報告があるが、本法により椎間板変性度の定量化が可能となるために、早期からの変性変化を把握できる検査として有用であると考える。 |
10.腰椎変性側弯における腰痛と椎体骨髄浮腫の関連性
JA広島総合病院 整形外科
中前稔生(なかまえ としお)、藤本吉範、鈴木修身、山田清貴、橋本貴士、松浦正己、森迫泰貴
【目的】高齢化とともに腰椎変性側弯症(degenerative lumbar scoliosis :DLS)は急速に増加している。われわれは高齢者DLS患者に対して、腰痛と椎体終板の骨髄浮腫(bone marrow edema :BME)の関連について調べた。またDLSにおける腰痛の関連因子についても検討した。 【方法】2002年から2004年までに当科に紹介されたDLS患者を対象とした。腰痛のある患者とない患者を比較し、腰痛とBMEの関連性、さらに腰痛関連因子について検討した。 【結果】腰痛群は64例、コントロール群は56例であり、両群間で年齢、性別、BMIに有意差はなかった。BME陽性率は腰痛群で62例(96.9%)、コントロール群で21例(37.5%)であり、腰痛群のほうがコントロール群よりもBME陽性率が有意に高かった。圧痛の陽性率は、腰痛群52例(81.3%)、コントロール群4例(7.1%)であり、腰痛群のほうが高かった。ロジスティック回帰分析の結果、腰痛に関与する因子ではBMEスコアのオッズ比が最も高かった。 【考察】高齢者DLSにおける腰痛と椎体終板周囲の骨髄浮腫には関連性が圧と考える。 |