第80回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題6)

25.診断に難渋したfar-out syndrome の1例


長崎労災病院 整形外科*1 産業医科大学病院 整形外科*2

 

日浦健(ひうら たけし)*1、小西宏昭*1、奥平毅*1、山下一太*1、山根宏敏*2

 

診断・治療に難渋したfar-out syndrome の1例を経験したので報告する。

【症例】30歳男性、自衛隊。

【既往歴】2009年に左梨状筋症候群の診断で腱切開術施行。

【現病歴】2013年3月末から左下肢痛が出現。体動困難となり当科入院。CTで腰仙部移行椎の横突起骨棘による左S1神経根の圧迫を疑う。 左S1神経根ブロックで疼痛軽減。移行椎横突起と仙骨翼でのfar-out syndrome の診断のもと内視鏡下後方除圧術施行。術後1ヶ月で左下肢痛再燃。 術後3ヶ月で顕微鏡視下に移行椎横突起の骨棘を切除し、PLF施行した。術後疼痛軽減し、歩行可能となった。

【考察】far-out syndrome は1984年にWiltseが報告して以来、本邦でも数例の報告がある。いずれも神経根造影が診断に有用で、本症例でも神経根ブロック後の再現痛と神経根造影後のCTが診断に有用であった。また、手術は神経根の前方からの圧迫であったため前方手術の適応と考えたが、後方からでも骨棘切除が可能であった。

26.Bertolotti 症候群に伴う腰痛に対して内視鏡下横突起切除術を行った1例

 

徳島大学 整形外科*1 徳島大学病院 リハビリテーション部*2

 

杉浦宏祐(すぎうら こうすけ)*1、高田洋一郎*1、酒井紀典*1、東野恒作*1、加藤真介*2、西良浩一*1

 

Bertolotti 症候群は腰仙椎移行椎の形態異常により、最尾側椎の横突起と仙骨翼との間に関節面を形成し腰痛を生じる症候群である。保存療法に抵抗する場合は外科的に横突起を切除する報告が散見される。今回われわれはBertolotti 症候群を伴う腰椎椎間板ヘルニア再発に対して、内視鏡下にヘルニア摘出と横突起切除を行った症例を経験したので報告する。

症例は43歳、女性。主訴は左腰痛、左下肢痛である。2ヶ月前に左L4/5椎間板ヘルニアに対して内視鏡下ヘルニア摘出術を行い、左下肢痛は軽減していたが、左下肢痛の再燃と腰痛の増強。MRIではL4/5での再発ヘルニアを認めた。左L5神経根ブロックで下肢痛が軽減するもの腰痛は残存した。左腰痛の原因としてBertolotti 症候群を疑い、L5横突起-仙骨間の関節形成部ブロックにて腰痛が numerical rating scale(NRS)で8/10から3/10に軽減することを確認した。内視鏡下に再手術を行い、ヘルニアの摘出と、同皮切下にtubular retractor を傾けて左L5横突起切除を行った。術後、左下肢痛、腰痛とも軽減し、NRSも改善が認められた。

27.腰椎固定椎間レベルにヘルニアを発症し、強い腰痛を呈した1例

 

高松赤十字病院 整形外科


三代卓哉(みしろ たくや)、小坂浩史、岩瀬穣志

 

【症例】60歳男性。主訴:腰痛。既往歴:39歳時に腰椎椎間板ヘルニア(LDH)にてL4-5腰椎椎間板摘出術と46歳時にL4-5後側方固定術(PLF)を受けていた。

現病歴:58歳時に強い腰痛再発し当科受診。6ヶ月間の保存療法で改善なくL3-4椎間板ブロック著効したため、L3-4PLFを施行した。L3-4レベルに軽度狭窄認めたが、下肢症状なく除圧は行わなかった。術後一時腰痛消失したものの3ヵ月で左腰痛再発した。BS-POP医師12/24、患者26-30と高く、画像上著明な変化やスクリューの緩みもないため保存療法継続した。術後9ヵ月目のMRIでL3-4左側のヘルニア所見を認めたが、この時点でも下肢症状はなく保存療法を継続した。11ヵ月目から左大腿部周囲のしびれと痛み出現し、LDHによる症状と断定し、12ヵ月目にL3-4ヘルニア摘出術を施行した。術直後より症状改善し、現在術後3ヵ月で経過良好である。

【まとめ】LDHは時に強い腰痛を伴うが、下肢痛やしびれを伴わない場合は手術療法の選択に迷う。また固定椎間レベルでの発症もまれにあり、多数回の椎間板穿刺が椎間板変性を助長した可能性がある。

28.2椎間の腰椎椎間板ヘルニア摘出術にネスプロンテープによる後方棘突起間制動術を施行後に巨大ヘルニアが再発した2症例

 

徳島市民病院 整形外科

 

平野哲也(ひらの てつや)、千川隆志、高砂智哉、中川偉人、中村勝、中野俊次、島川建明

 

【はじめに】2008年から3年間、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の中で軽度不安定性を呈する症例に対して、ヘルニア摘出術や腰椎部分椎弓切除術にネスプロンテープによる棘突起間制動術を併用してきた。

 今回その症例の中で、制動術後に巨大なヘルニアの再脱出を来した2症例を経験したので報告する。

(症例1)57歳男性。2007年10月から腰痛、両下肢痛出現し、2008年5月より右下垂足となり、当科紹介された。腰椎MRI、脊髄造影CTなどの検査でL3/4、L4/5椎間狭窄に椎間板ヘルニア合併と診断し、2008年6月にL3/4、14/5両側部分弓切除、ヘルニア摘出後にネスプロンテープによる後方棘突起間制動術を施行した。経過良好で術後3か月後に復職したが、1週間後に左坐骨神経痛、腰痛が出現した。2008年9月再診時にL3/4,L4/5椎間に巨大なヘルニアを認めた。2008年10月にL3/4、4/5PLIFを行った。

(症例2)54歳女性。2009年5月に県外でL3/4、L4/5椎間板ヘルニアに対してPLDD(Percutaneous Laser Disk Decompression)を受けるも症状改善せず、2009年9月当科紹介された。MRIでL3/4、L4/5椎間板ヘルニアを認め、10月にL3/4、L4/5椎間に同様の両側部分椎弓切除+ヘルニア摘出+ネスプロンテープによる後方棘突起間制動術を施行したが2か月後の2009年12月にL3/4、L4/5椎間に巨大なヘルニアが再発した。

【まとめ】ネスプロンテープによる棘突起間制動術が術後制動した椎間に非生理的な力が加わり巨大なヘルニアが再脱出したと考えられた。

29.胸部・腹部大動脈解離・破裂における背部・腰部痛

 

那覇市民病院 整形外科*1 琉球大学 整形外科*2

 

勢里客ひさし(せりきゃく ひさし)*1、屋良哲也*1、金谷文則*2

 

【対象と方法】対象は2006年12月〜2013年6月の期間に当院に受診し、胸部・腰部大動脈瘤解離または破裂と診断された搬送時心配停止1例を除く11例(男9例、女2例、55〜91歳の平均70.7歳)とした。主訴、来院時血圧、血液生化学検査所見、画像、初診時から診断までの期間(時間)、初診科、転機について検討した。

【結果】主訴は、腰痛または背部痛を5例で、また項部痛および上肢痛を1例認めた。またこれらは持続的かつ強い疼痛であった。来院時収縮期血圧は高血圧(140mmHg以上)は2例で、低血圧(80mmHg以下)は2例であった。来院時血液生化学検査では、白血球は8300〜16200/μlで平均12200/μl、白血球増加(10000/μl以上)は10例にみられた。CRP(10例)0.08〜33.3r/dlで平均6.2r/dl、CRP増加(0.3r/dl以上)は6例であった。ヘモグロビン低下(男性<13.5g/dl、女性<12g/dl)は男性4例、女性1例であった。画像診断では胸部・腹部単純X線画像で、動脈影の異常が見られたのは6例であった。確定診断は10例はCT、1例はMRIで得られた。初診時〜診断までの期間は1〜30.5時間、平均9.7時間であった。初診科は救急科10例、内科1例、整形外科1例で、転機は転院先でステント内挿術または人工血管置換術8例、転院先死亡1例、当院死亡1例、保存療法1例、であった。転院先死亡の1例は整形外科初診例であり、初診時から診断まで30.5時間を要した。

【結論】腰痛、背部痛や上肢症状が半数で生じており、これらを主訴に整形外科受診した際は、胸部・腹部動脈解離または瘤破裂も念頭に診察し、症状が持続的かつ強く、単純X線像で動脈影異常所見や白血球増加を認めたら、CTを追加することが望ましい。