第81回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題1)

1.当院における腰椎椎間孔部病変に対する脊椎内視鏡(MED)手術の短期成績


山口労災病院 整形外科

 

片岡秀雄、富永俊克、舩場真裕、城戸研二

 

【目的】外来診療において頻度は高くないが腰椎椎間孔部(椎間孔内・外)病変に遭遇する。手術侵襲をより低侵襲化するため、2009年7月より脊椎内視鏡(MED)手術を導入した。当院における腰椎椎間孔部病変に対する脊椎内視鏡手術の短期成績を調査したので報告する。

【方法】脊椎内視鏡(MED)下に手術を行った腰椎椎間板外側ヘルニア4例、L5-S1腰椎椎間孔部狭窄2例を対象とした。外側ヘルニアは男性3例、女性1例、平均年齢60歳(58〜65歳)であった。腰椎椎間孔部狭窄は男性2例で年齢は64歳、77歳であった。手術時間、術中出血量、術後入院期間について調査した。NSAID等の服用、JOAスコア(腰椎症)、VAS(痛み)などを術前と術後6ヵ月で比較した。

【結果】外側ヘルニアでは手術時間が平均132分、術中出血量が平均106g(14〜350g)、術後平均入院期間が13.8日であった。NSAIDは術前に全例が服用し、術後6カ月でJOAスコア:平均10→平均26.5、VAS(痛み):平均84.0→平均10.5と改善していた。腰椎椎間孔部狭窄では手術時間が平均187分、術中出血量が平均63g(55、70g)、術後平均入院期間が14.5日であった。NSAIDは術前に2例とも服用していたが術後6カ月でJOAスコア:平均10.5→平均20.0、VAS(痛み):平均57.0→平均8.0と改善していた。

【考察】腰椎椎間孔部に対する脊椎内視鏡(MED)手術は、手技に習熟すればピンポイントで病変部に到達できて低侵襲にヘルニア摘出や神経根除圧が可能な術式である。しかし腰椎脊柱管内病変を対象とした脊椎内視鏡(MED)手術と比較するとその手術頻度が少ないため手技の向上には時間を要する可能性がある。

【結論】腰椎椎間孔部に対する脊椎内視鏡(MED)手術は低侵襲で有用な術式であり、術後6カ月の短期成績は良好であった。

2.再発した腰椎外側ヘルニアに対する再MED法の小経験

 

長崎大学 整形外科 

 

田上敦士、馬場秀夫、津田圭一、依田 周、尾ア 誠

 

【はじめに】1998年に本邦に導入された内視鏡下椎間板摘出術(以下MED)は、いろいろな手術に応用され、中でも腰椎外側病変に対する手術が最も有用性が高いとされている。我々も2003年より外側病変に対するMED(以下far lateral MED)を開始し良好な成績が得られたが、再発例も経験した。

【目的】far lateral MED後再発例に対するfar lateral MED の小経験を報告する。

【対象および方法】2003年8月より2012年2月までの自験例は108例で、男性69例、女性39例、手術時平均年齢は58.5歳であった。手術椎間はL2/3 2例、L3/4 7例、L4/5 32例、L5/S 66例であった。これらの症例中再発を認め手術に至った例は5例であった。このうち術後1年以上経過した4例を対象とした。変性側彎の進行が原因で、3例はヘルニアの再発が原因であった。これらについて手術時間、出血量、JOA score、周術期合併症などを調査した。

【結果】平均手術時間は84分、術中出血量は6.25gであった。JOA score の改善率は89%であった。アプローチはすべて safety triangle zone アプローチであった。

【考察】far lateral MEDは安全で良好な成績が報告されており、スタンダードな術式として認知される様になっている。近年ではPED方も復旧しつつあり、初回例ではPED方がより低侵襲に行える可能性がある。しかしながら再発例に対するPED法は報告がなく、容易な術式とは言い難い。一方MED法ではsafety triangle zoneで椎体上縁を確認し、そこから椎間板を同定し、椎間板摘出を行うといったポイントを押さえながら施行すれば瘢痕組織に覆われた神経根を傷つけることなく手術が可能で、低侵襲で良好な成績が得られた。

【結論】再発した腰椎外側ヘルニアに対する再MED法は低侵襲で有効な治療法であった。

3.腰椎椎間板ヘルニアに対するPEDアプローチの妥当性―当院L4-5椎間板ヘルニア手術例からの検討

 

北九州市立医療センター 整形外科


吉兼浩一、山口 司、西井章裕、大江健次郎、岡田 文、深川真吾、矢野良平

 

【目的】当院では2009年に腰椎椎間板ヘルニア摘出術にPEDを導入した。病態に応じ側方と後方、2つのアプローチを選択し施行してきたが、その妥当性について検討する。

【対象】2009〜2013年に当院で施行したL4-5椎間板ヘルニア(脊柱管内)に対するPED施行141例。側方(経椎間孔)アプローチ(TF法)93例(男60、女33、平均44才)、後方アプローチ(PA法)48例(男32、女16、平均45才)

【方法と結果】TF法:初期10例は局所麻酔下に、以後は全身麻酔下に施行。平均手術時間34.4分(15-75)。PA法:経椎弓間アプローチ38例(中19例で開窓術施行)。経椎弓アプローチ10例。全例全身麻酔下に施行。平均手術時間55.4分(20-120)。術中出血量:測定不能。術後ドレーン:留置せず(PA法で初期の5例に留置したが排液がほぼなく以降止)。後療法:術後6時間で起立歩行再開した。合併症:TF法に特記事項なく、PA法2例に術後一過性の馬尾障害を発生した(脊柱管狭窄合併例)。経過観察中の再発例はない。

【考察】腰椎後方支持組織に侵襲を加えずに直接ヘルニアに到達できるTF法は第1選択となるが、脊柱管内で脱出移動したものに対しアプローチの限界もある。PA法は従来のLove法から発展した内視鏡下摘出術であり、16mm径MEDシステムからさらに低侵襲の8mm径PEDシステムを応用したものである。MED経験者にとって見慣れた術野に近く、TF法に比べ受け入れ易いものと考えられる。導入時にはPEDからMEDへのコンバージョンも比較的容易である。PED用ハイスピードドリルの開発により、PA法は経椎弓間に加え経椎弓アプローチも可能となり適応が拡大した。さらには頚椎後方アプローチへの応用も可能な手技である。

【結論】TF法は最も低侵襲なヘルニア摘出術であるが適応の限界もある。PA法を習得することで脱出移動を含め脊柱管内ほぼすべてのヘルニアにPED対応可能となる。

4.PED導入期(MEDと比較して)

 

今給黎総合病院*1、菊野病院*2

 

宮口文宏*1、山口 聡*1、松永俊二*1、古賀公明*2

 

【背景】日本では脊椎低侵襲手術は、元来の気質・開発器具らから比較的発展している。内視鏡視下脊椎手術においては、世界に先駆けてMEDが普及した。さらに低侵襲を目指すのであれば、PEDらに移行してもよい時期である。現状はMEDほど普及していない。

【目的】今回われわれは、PEDを導入しその初期段階においてMEDと比較しその長所・短所・learning curve らに関して比較検討した。

【対象】PED導入後初期の20例である。男性8例、女性12例で、平均手術時年齢は46.8歳(15歳〜80歳)であった。これらの症例の責任高位、approach、手術時間、術中出血量、合併症を検討した。 【結果】責任高位はL4・5レベルが13例、L2・3レベル3例、L5・S1、L3・4レベルがそれぞれ2例であった。Approachはinnterlamina が3例、translaminaが2例、他の15例はpoterolateral であった。平均手術時間は1時間48分で術中出血量は測定不能であった。合併症は術後drop foot :1例(術後3か月で回復)、aloodynia : 2例、術中PEDからMEDへの変更例:1例、術中断念:1例であった。

【考察】PEDはMEDと比較して、approach・手術器具・術中画像所見が異なる。Posterolateral approach に関してはPDに準じて挿入可能である。ただし直径が8mmと大きく挿入時exiting nerve 障害を引き起こしやすい。ここが第1のlearning curve と思われる。In side out でnucleotomy を加えるが除圧のendpointが不明である。ここが第2のlearning curve と思われる。Half and halfでcanal内側を除圧するが、PL切除のこつをつかむと硬膜腹側よりにさらに侵入可能となる。Interlamina approach ではcanulla をどこの位置で止めるか、椎弓内側縁がYLに一部突き刺すかここも熟練を必要とす。Approach的にはMEDに準ずるが、真上にPED器具を立てると術野からかなり離れ、器具保持も困難である。 【結語】MEDのようにさらに手術器具の改良にて今後の普及が見込まれる。

5.経皮的椎間板摘出術(PELD)における麻酔の工夫―局麻、全麻の併用

 

中村整形外科*1、熊本大学整形外科*2、岡崎麻酔クリニック*3

 

中村孝文*1、藤本 徹*2、中村孝幸*2、岡崎止雄*3

 

【目的】経皮的内視鏡下椎間板摘出術は局御麻酔下に施行可能で日帰りなどで超早期退院が可能である。しかし局麻下では不安からか過度に緊張し術中の体動により手術に支障をきたす症例もある。対策としては十分な術前の説明や鎮痛剤、静脈麻酔剤の使用などがあるが当院では局麻⇒全身麻酔を併用しておりその利点などについて検討した。

【対象】対象症例は平成24年3月から平成26年3月までPELDを施行した34例で羅患レベルはL3/4が3例、L4/5が31例、L5/S1が1例であった。ヘルニアの形態はprotrusion、または軽度のSEに限定した。方法は局麻下に椎間板造影を施行後working sleeve(カニューラ)を椎間板内に棘入しexiting nerveの刺激症状がないことを確認した時点でセボフルレンによる全身麻酔を施行した。

【結果】1例に軽いexiting nerve 損傷と思われるparesthesia がみられたが麻酔による合併症はなかった。

【考察、結語】PELDを施行する際に局所麻酔と全身麻酔を併用することで椎間板摘出中の患者の不安、体動を良好に解消できた。