第81回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題4)

17. 頚部神経根症に対する内視鏡下椎間孔拡大術(MED,PED)


北九州市立医療センター 整形外科 

 

吉兼浩一、山口 司、西井章裕、大江健次郎、岡田 文、深川真吾、矢野良平

 

【目的】当院では頚部神経根症に対し椎間孔拡大術を内視鏡下に施行してきた。内視鏡はMEDとPEDの2つのシステムを用い、それぞれの有用性と問題点を整理し術式の妥当性について検討した。

【対象】片側性の上肢痛を呈する1椎間の神経根障害で画像上検査上証明された頚椎椎間板ヘルニア(CDH)17例、頚椎症性神経根症(CSR)9例の計26例(男21、女5、平均年齢51歳)で2008〜2011年の14例(CSR5、CDH9)はMEDを、2012年以降の12例(CSR4、CSR8)はPEDを施行した。手術高位はC4-5:3、C5-6:12、C6-7:10、C7-Th1:1であった。

【方法と結果】術後項部痛、上肢痛、しびれ感のNRS(Numerical Rating Scale)は全例ほぼ改善し、術後3日からの4週間で元の生活および職場に復帰した。項部痛はPEDで有意に改善が得られた。手術時間はMED:73.1(52-90)分、PED:55.8(24-75)分、術中出血量はMED:10〜170g、PEDは測定不能であった。CRPの変動(術前/術翌日)はMED:0.12/0.93、PED:0.14/0.98と両群で有意差を認めなかった。合併症は、PEDに特記事項なく、MED1例にピンホール硬膜損傷を認めたが、特に処置を要しなかった。

【考察】本手術の要点は、開窓時ドリルによる機械的および掘削熱による神経根障害の予防と、椎間孔部で圧迫された易出血性静脈の止血コントロールである。内視鏡下に施行することで従来法に比べ頚部後方軟部組織への侵襲は格段に低減し、25°斜視鏡により接近拡大した視野での処置が可能となる。特にPEDは、最大の特徴である生食潅流下に行うことで、視野の確保、椎弓掘削時の神経組織障害予防、術中出血コントロールでより安全かつ有利な点が認められ、MEDからさらに発展した後方アプローチの椎間孔拡大術といえる。

【結論】頚部神経根症に対し内視鏡下椎間孔拡大術を行い良好な治療成績を得た。一方そのlearning curveは急峻であり、脊髄近傍での操作には危険性も高く、手技に習熟した上で行う必要がある。

18. 上位頸椎損傷に対する後外側侵入小侵襲椎弓根スクリュー固定

 

高知医療センター 整形外科

 

阿部光伸、時岡孝光、林 隆宏

 

【目的】当院では頸椎後方固定に際して、後外側皮切での最少侵襲手術(MICEPS)を行っている。今回、上位頸椎損傷に対してもMICEPSを行ったので治療成績を報告する。

【方法】上位頸椎損傷に対してMICEPS法での後方固定を行った6例を対象とした。損傷高位は全例軸椎骨折であり、4例がハングマン骨折、2例が椎体破裂骨折であった。平均年齢は66.5歳(27-84歳)。平均手術待機期間は5日(0-11日)であった。全例に後外側侵入にてCT navigation ガイド下に椎弓根Screwを刺入し後方固定を行った。調査項目として、手術時間、出血量、固定範囲、合併症に関して調査を行った。

【結果】平均手術時間は197分(140-255分)であった。出血量は97.5ml(35-210ml)であった。固定範囲はC1-3が2例、C2-3が3例、C2のみが1例であった。手術・手術後合併症は認めなかった。

【考察】上位頸椎損傷においてもMICEPSは適応可能であり、小侵襲であった。C2椎弓根スクリュー・C1外側魂スクリューは後外側皮切からは角度的に刺入しやすかった。

19. C6棘突起付着傍脊柱筋温存は頚椎 laminoplasty 後の axial pain を軽減させ得るか?

 

総合せき損センター 整形外科 


森 英治、植田尊善、前田 健、弓削 至、河野 修、高尾恒彰、坂井宏旭、益田宗彰、森下雄一郎、林 哲生、芝 啓一郎

 

【目的】C7棘突起に次いで大きなC6棘突起において付着paraspinal muscle(PSM)温存はlaminoplasty術後axial painを軽減させるかどうか非温存群と比較検討。

【方法】棘突起縦割式C3-6 laminoplasty(C2,7 dome含)施行例のうち術後1年以上観察し得たC6PSM温存群25例、非温存群35例を対象として術後axial painのVAS値、種類、局在を術後1-3ヵ月、最終観察時にて比較評価。

【結果】axial painのVAS値及びgradeは術後早期、最終観察時のいずれにおいても、また種類、局在においても術式2群間において全く相違はみられなかった。

【結論】今回用いたC6棘突起付着PSM温存術式では非温存術式と比較して術後axial painを軽減させる効果は認められなかった。

20.最少侵襲頚椎椎弓根スクリュー固定術’(MICEPs)の骨移植法の低侵襲化―facet fusionついて―

 

高知医療センター 整形外科

 

時岡孝光、土井英之、林 隆宏、阿部光伸

 

【目的】最少侵襲頚椎椎弓根スクリュー固定術(MICEPS)の骨移植法を低侵襲化するため、椎間関節に後外側から直接骨移植を行うfacet fusionを開始したので報告する。

【方法】2011年から2013年12月までに中下位頚椎に対して行ったMICEPSは43例で、疾患は外傷が28例、変性疾患が11例、転移性腫瘍が4例であった。骨移植の方法は後側方が22例、前方固定が5例、なしが6例、facet fusionが10例であった。

【結果】facet fusion10例の手術時間は平均161.6分、出血量は平均158.0mlであった。移植骨は自家骨(腸骨8例、棘突起1例)、人工骨1例であった。外側塊を掘削して骨移植を行った後側方の22例の手術時間は194.2分、出血量は平均98.7mlであった。前方固定を追加したものは手術時間256.4分、出血量は157.8mlであった。

【考察】後外側進入からMISで椎弓根スクリュー固定を行う際に、脱臼骨折例では直視下に椎間関節が確認できることを経験した。従来の骨移植では外側魂の多裂筋を剥離し、後枝内側枝を犠牲にするしかなかったが、椎間関節を掘削して関節軟骨を除去し、少量の海面骨を移植することで、facet fusionを低侵襲で行うことができる。現在2椎間固定まではfacet fusionを行っている。

【結論】後外側進入によるMICEPSではfacet fusionが可能で、より低侵襲化できる。