第81回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題6)

27. 最少侵襲腰椎椎体間固定術(MIS-PLIF)の工夫〜L-Varlockの有用性〜


徳島市民病院 整形外科*1、徳島大学医学部 整形外科*2

 

千川隆志*1、平野哲也*1、高砂智哉*1、中川偉文*1、中村 勝*1、中野俊次*1、西良浩一*2

 

【目的】MIS-PLIFの成績は良好で、低侵襲による術後疼痛や出血量の軽減などが報告されている。今回MIS-PLIF(L-Varlock)による1椎間MIS-PLIFの短期成績を報告する。

【方法】当院で2012年10月から2013年12月までの間でMIS-PLIF(L-Varlock)を行った19例を対象とした。男11例、女8例で、年齢は44~80歳(平均67.1歳)であった。検討項目は、手術時間、出血量、血中CPK・CRP・D-ダイマー値、JOA scoreと改善率、側面XPで固定椎間角、CTにおけるScrew,Cage周囲のclear zoneと骨癒合率とした。

【結果】MIS-PLIFの手術時間は平均238.1分、出血量は平均217.9mlであった。同時期に行った1椎間Open-PLIFと比較すると手術時間は平均242.6分で有意差はないが、出血量は平均334mlで有意差を認めた。血液検査は、術後3日目にCPK、CRPと術後7日目にD-ダイマーにおいてMIS-PLIF、Open-PLIFで有意差を認めなかった。JOA scoreは術前平均15.5点が術後平均27.8点に改善し、改善率は89.3%であった。術前後のX線側面における局所後弯角は術前平均3.2度の後弯が、術後平均4.9度の前弯に改善した。術後CTにおける画像評価であるがScrew周囲のClear zoneを認めた症例はなく、L-Varlockと骨性終板の間にclear zoneはなく、固定した位置で圧着し骨癒合が得られた。

【結語】MIS-PLIFの手技はOpen-PLIFに比較して出血量が少なかった。L-Varlock expandable cageで平均4.9度の前方開大が獲得され、全例骨癒合が得られ、短期成績は良好であった。

28. 前向きランダム化比較試験によるMIS-PLIFの中期成績の検討

 

九州中央病院 整形外科 

 

有薗 剛、井口明彦、濱田貴広、西田顕二郎、津嶋秀俊、今村隆太、居石卓也

 

【目的】最少侵襲腰椎椎体間固定術(以下MIS-PLIF)の良好な成績は数多く報告され、既に従来法に対する優位性は確立された感がある。しかしながら、多くの論文を詳細に検討すると、評価期間の長さや評価方法、術者の習熟度など、正確な比較検討が行われているとは言えない点が見受けられる。今回我々はMIS-PLIFより正確な評価を行う目的で何れの方法も30例以上経験した同一術者によるMIS-PLIFとOPEN-PLIFの前向きランダム化比較試験を行い、その中期成績を評価したので報告する。

【対象及び方法】対象は2008年4月から2009年4月までに当院にて一椎間PLIFを行った35例のうち、3年以上経過観察可能であった27名。MIS群14例(平均年齢67.3歳)、OPEN群13例(平均年齢69.7歳)であった。手術は同一術者がMISとOPENを交互に選択して行い、MIS群では正中からのmini-open PLIF後、経皮スクリューを挿入して固定した。出血量、手術時間、被爆時間、術後の鎮痛剤の使用量、採血結果、術前術後の臨床評価について比較検討した。

【結果】術中と術後出血量はMIS群84.7±55.1ml、214.5±111.3ml、OPEN群102.6±74.5ml、353.3±125.6mlで有意にMIS群の方が少なかった。(p<0.05)が被爆時間はMIS群が有意に長かった(p<0.01)。また、術後24時間のペンタソジンの使用量はMIS群0.71±0.72、OPEN群1.08±0.79とMIS群が少ない傾向にあり、腰のだるさの評価に関しても同様の傾向があったが、その他の臨床評価では有意差が認められなかった。

【考察と結論】MIS-PLIFは傍脊柱筋の障害を少なくした良い方法とされているが、今回の結果では出血量以外に大きな差が認められず、症例を重ねたさらなる検討が必要と思われた。

29. 単独術者によるMIS-TLIFとOPEN-TLIFの比較

 

大分整形外科病院


中山美数、大田秀樹、松本佳之、酒井 翼、井口洋平、清田光一、木田浩隆、竹光義治

 

【目的】単独術者による同一期間におけるMIS-TLIFとOPEN-TLIFの術後成績を比較検討したので報告する。

【対象】対象は2011年3月から2013年6月の間に施行したMIS-TLIF(以下M群)18例とOPEN-TLIF(以下O群)20例である。全例が筆者による執刀である。手術適応は椎間孔狭窄および外側ヘルニアなどの腰椎変性疾患である。従来法とMIS法について説明した上で、本人の希望にて選択させた。周術期因子および術中・術後合併症、術後復帰、骨癒合、傍脊柱筋への侵襲度、JOAスコアについて両群を比較検討した。

【結果】平均年齢はM群が38.7歳、O群が63.3歳と有意差を認めた。男女比、疾患高位、対象疾患、固定椎間、術後経過観察期間については2群間に有意差を認めなかった。周術期因子および術中・術後合併症については平均手術時間がM群で189分、O群で145分、術後4日目CRP値がM群で4.2r/dl、O群で7.1r/dlと有意差を認めた。術中平均出血量はM群はcc、O群はccと有意差はなかった。術後復帰については術後歩行開始がM群で2.9病日、O群で3.5病日、退院までの日数がM群で20.5病日、O群で24.0病日と有意差を認めた。骨癒合率はM群87.5%、O群85%と有意差はなかった。傍脊柱筋の侵襲度については術後傍脊柱筋変性がM群で8例中1例、O群で7例中全例と有意差を認めた。JOAスコアについては2群間に明らかな有意差はなかった。

【考察】MIS法導入期にはlearning curveもあり、被爆の問題点もあるが、術後CRPの低値、術中出血量、傍脊柱筋変性が少ないなど低侵襲手術の利点もある。JOAスコア子を両者に差は無かったが、MIS法は傍脊柱筋に与える侵襲の少なさ故にスコアに表せない腰部の愁訴の減少につながることが期待される。

【結語】同一術者によるMIS法とOPEN法によるTLIFの比較検討を行った。M群は術後CRO値の低減・術後歩行の早期開始・入院期間の短縮、術後傍脊柱筋変性の低減においてO群より優れていた。

30. 腰椎変性すべり症に対するMIDLF(Midline Lumbar fusion)の短期手術成績

 

長崎労災病院 整形外科

 

奥平 毅、小西宏昭、日浦 健、山下一太、山田周太

 

【目的】MIDLF(Midline Lumbar fusion)手技による腰椎変性すべり症の短期治療成績を明らかにすること。

【方法】2013年5月より2014年1月までに当院で変性辷り症に対してMIDLFを施行した7例、男性4例、女性3例、手術時平均年齢65.1歳(29~78歳)を対象とした。検討項目は術前後のJOABPEQ、JOA score、%Slip、椎間高、局所後弯角、手術時間、出血量、周術期合併症とした。

【結果】手術時間は平均2時間30分、出血量は160g、周術期合併症は認めなかった。術前JOA score平均15点が術後25点となり、腰痛、下肢痛とも著名に改善していた。%Slipは術前平均23.3%が術後10.4%、椎間板高は術前8mmが術後7mm、局所前弯角は術前9度が術後25度と改善していた。

【考察】CBT screwは通常のPedicle screwと比較して引き抜き強度、挿入トルクとも同等がそれ以上と報告され近年新しい脊椎固定法として注目されている。CBTと椎体間固定を組み合わせたMIDLF(Midline Lumbar fusion)はScrew刺入方向の関係上、展開時に椎間関節を超えて側方の展開が必要なく、1椎間の除圧と同等の展開で手技が可能であり低侵襲手術の一つと考えられる。 また椎体間固定の手技も既存のPLIF手技と差は無く、PLIF手技に慣れた術者であればMIDLF施行に際してそれほど手技上の困難は感じない。当初は椎体の整復操作が困難なことを予想していたが、椎間廓清や椎間manipulation、術中体位のみで整復が可能なMeyerding1度程度の変性辷りの症例には既存のPLIF同等の治療成績が期待できると考えられる。しかしながら長期成績は定かでは無く、今度注意深い経過観察が必要と思われる。

31. MIS-PLIFにおけるcranial facet joint violation と臨床成績についての検討

 

岡山大学 整形外科 

 

荒瀧慎也、田中雅人、杉本佳久、瀧川朋亭、鉄永倫子、山根健太郎、篠原健介、渡邉典行、魚谷浩二、尾ア敏文

 

【背景】固定後隣接障害の危険因子として、椎弓根スクリュー挿入時頭側椎間関節への侵襲が報告されている。経皮的椎弓根スクリュー(以下PPS)挿入は従来法と比し刺入部が外側からとなることはよく知られているが、椎間関節への侵襲についてはいまだコンセンサスが得られていない。

【目的】本研究の目的は、椎弓根スクリュー挿入時に伴う椎間関節への侵襲についてPPS法と従来法で比較し、隣接障害を含めた臨床成績との関係を明らかにすることである。

【対象と方法】PPSを併用した低侵襲腰椎椎体間固定術(以下MIS-PLIF)を施行し術後2年以上経過観察が可能であった31例(以下M群)を対象とした。男性9例・女性22例、平均年齢67.3歳、平均経過観察期間は34ヶ月であった。固定椎間は全例L4/5単椎間とした。同時期に施行した従来法のPLIF13例(以下T群、平均年齢71.4歳)を比較対象とした。 L3/4隣接椎間関節の評価として、術前形態(face sagittalization,L3 lamina inclination angle)、侵襲(facet joint violation rates、以下FV)、画像評価(disc height ratio、%slip、slip angle)を検討した。

【結果】L3/4椎間関節の術前形態はM群とT群で同様であった。FVはM群においてT群よりも少ない傾向を認めた。画像評価の結果で両群に有意差は認められなかった。

【考察】PPSは従来法と比し刺入部が外側からとなるが、椎間関節への侵襲についてはまだコンセンサスが得られていない。本研究ではL4/5単椎間PLIF術後の頭側(L3/4)隣接障害に着目した。@スクリュー挿入手技の差による椎間関節への侵襲、A頭側椎間関節の形態、B隣接椎間の画像評価について検討した。本研究は経過観察期間が短く、引き続き注意深い経過観察が必要である。

32. CBT(cortical bone trajectory)法を用いた後方固定術の検討

 

済生会福岡総合病院 整形外科*1、久留米大学 整形外科*2  

 

横須賀公章*1.2、佐藤公昭*2、永田見生*2

 

【目的】CBT法によるスクリュー挿入方法とスクリューの進入角度・固定性を検討する。

【方法】CBT法を用いて後方固定を行った13例を対象とした。男性9例、女性4例、平均年齢54.1歳。椎体骨折9例、脊柱管狭窄症4例。平均観察期間13.2ヶ月。全症例術直後より軟硬性コルセットを3か月着用させた。合計70本のスクリューの椎体矢状面に対する外方角・椎体水面に対する上方角を計測し、スクリュー逸脱およびCut out症例についても検討する。

【結果】スクリューの椎体矢状面に対する外方角は10.15°・椎体水平面に対する上方角18.25°。スクリューの逸脱およびcut outは3例に認めた。

【考察】CBT法は従来法から比較的容易に移行しやすい手技であり、手術時間の短縮・侵襲の軽減には良い方法であると考える。しかし、後方からの矯正操作は難儀であり、従来法に比べると劣る。本法でも、術後20ケ月から6ケ月までと期間がそろっていないが、逸脱・cut out症例はごく早期より発生しており、固定法自体の再検討を危惧した。CBT法の長所・短所をより理解することで、更なる適応を決める必要があると思われた。

【結論】CBT法による後方固定は、従来法よりも低侵襲に固定できるメリットはあるが、後方操作の限界もあり適応を決めて使用する必要があると考える。また、高度な骨粗鬆症症例ではやはりcut outを起こしてしまい、固定方法自体の今後更なる検討が必要と考える。