第82回西日本脊椎研究会  抄録 (一般演題2)

8. 高度救命救急センターを併設する当院に搬送される上位頸椎損傷の傾向


川崎医科大学 脊椎・災害整形外科学*1川崎医科大学 骨・関節整形外科学*2

 

内野 和也(うちの かずや)*1、中西 一夫*1、古市 州郎*2、清水 総一郎*1、長谷川 徹*1

 

【目的】当院は高度救命救急センターを併設しており、中国地方の救急医療の中核を成している。救急搬送される患者の中には、脊椎外傷を伴う多発外傷が多く存在する。当院における2年間の上位頸椎損傷について調査した。

【方法】平成24年4月から平成26年3月までの2年間で、当院に救急搬送された患者で脊椎外傷全144例のうち、上位頸椎損傷16例を対象とした。平均年齢は66歳、検討項目は、受傷機転、骨折形態、合併損傷、治療、予後とした。

【結果】受傷機転は転倒・転落・墜落による受傷が10例で最も多かった。骨折形態は、環椎骨折3例、軸椎骨折12例、外傷性回旋位固定2例、後頭骨‐環椎脱臼1例、中心性頚髄損傷1例であった。合併損傷は12例(75%)に認め、頭部外傷が9例で最も多かった。治療は2例に手術が行われ、その他は保存的治療を行った。予後は3例(18%)死亡で、3例(18%)は自宅退院された。

【考察】転倒・転落・墜落による受傷が多く、また、上位頸椎損傷では高頻度に合併損傷を認めており、死亡率も高い。これらを念頭において診察することが重要である。

9.近年の高齢者の上位頸椎損傷の検討

 

佐賀大学 医学部 整形外科*1唐津赤十字病院 整形外科*2佐賀県医療センター好生館 整形外科*3嬉野医療センター 整形外科*4

 

森本 忠嗣(もりもと ただつぐ)*1、吉原 智仁*1、塚本 正紹*1、生田 光*2、川口 謙一*3、久芳 昭一*4

 

【背景】高齢化社会の到来とともに高齢者の骨脆弱性の上位頸椎損傷例が増加している。近年における上位頸椎損傷の臨床像の知見は、疾患の予防と診療に有用な情報となりうる。

【対象と方法】2008年から2012年に佐賀県の全ての3次医療施設(4施設)で加療した上位頸椎損傷例73例(男性45例、女性28例、平均年齢69(8〜95)歳)を対象とし、若壮年群(70歳未満)と高齢群(70歳以上)に分類し、損傷高位、受傷機転、来院手段、神経障害(改良Frankel分類AからC)の有無、高齢群の受傷前の骨粗鬆症薬内服率、治療法について調査した。

【結果】損傷高位は環椎18例、軸椎67例(重複例含む)であり、年間発生数は約15例であった。若壮年群32例(44%)、高齢群例41例(56%)であった。受傷機転は若壮年群、高齢群でそれぞれ、交通外傷60%、29%、転落28%、44%、転倒9%、27%であった。転倒例では79%(11/14例)が高齢群であった。神経障害は全体で12%、若壮年群10%、高齢群15%であった(評価不能例9例は除外)。治療方法は若壮年群、高齢群で保存的治療91%、90%、手術的治療9%、10%であった。高齢群の骨粗鬆症薬の内服率は受傷前10%、受傷後12%であった。

【考察】近年の上位頸椎損傷の約半数が70歳以上であり、高齢者の約30%は転倒による受傷であった。以前より指摘されているが高齢者では転倒による頭部打撲例でも本症を念頭におく必要がある。高齢者に多い要因として骨粗鬆症による骨脆弱性、転倒の際に手をつくこともできないなどの運動能の低下、中下位頸椎の変性により応力が上位頸椎に集中しやすいという解剖学的特徴などが考えられた。また骨粗鬆症薬の内服率は低く、受傷後もほとんど変わらず反省点であった。

10.高齢者軸椎歯突起骨折の治療法の検討

 

高知医療センター 整形外科


時岡 孝光(ときおか たかみつ)、林 隆宏、田村 竜

 

高齢者の軸椎歯突起骨折の治療は難渋することが多い。当院でこれまでに行った各種治療法を検討した。2005年から2014年3月までに当院で治療を行った70歳以上の軸椎歯突起骨折は24例で、男11例、女13例であった。受傷時の麻痺はFrankel分類Aが3例、Cが2例、Eが19例、不明が1例であった。施行した治療法は、前方法では歯突起螺子固定(AS)が5例、前方環軸関節固定術(ATF)3例、後方法では、後外側進入によるMICEPS法7例、Goel-Harms法2例、後頭骨頚椎固定(OC)が2例、Magerl 法が1例、Goel-HarmsとMagerlのhybridが2例であった。ASの1例とATFの1例は偽関節となり、後方から片側MagerlとネスプロンテープによるBrook法で再手術を行い、骨癒合した。

【考察】第一選択は若年者はAS、高齢者ではMagerl法としていたが、高齢者ではhigh riding VA、高度亀背などMagerl法が困難であり、可能な手段を熟慮して選択するしかない。

*11.交通外傷で発症したOs odontoideum の2例

 

大分整形外科病院 

 

酒井 翼(さかい つばさ)、大田 秀樹、松本 佳之、中山 美数、井口 洋平、清田 光一、巽 政人、竹光 義治、木田 浩隆

 

Os odontoideumは日常診療においてしばしば遭遇するが、交通事故を契機に神経症状を発症し手術に至ったOs odontoideumの2例を経験したので報告する。 

症例1:60歳男性。追突され頚部痛、四肢痺れ出現。非整復性のOs odontoideum、頭蓋頚椎移行部での屈曲変形、脊髄高度圧迫と髄内T2高信号もあり。手術はsublaminar wireでC1後弓整復後、O-C2後方固定術、腸骨移植術を行った。

症例2:32歳男性、追突し四肢不全麻痺、巧緻運動障害、下肢痙性出現。左臍部以下の知覚異常もあり。非整復性のOs odontoideum、頭蓋頚椎移行部での著明な屈曲変形、環椎低形成、椎骨動脈走行異常、脊髄高度圧迫と髄内T2高信号もあり。手術はC1後弓、後頭骨部分切除、Os odontoideumの整復、頭蓋頚椎移行部での屈曲変形の矯正を行ったうえでO-C4後方固定術、腸骨移植術を行った。

ともに術後症状改善し、社会復帰できているが、高度の脊髄圧迫があり、比較的若年者であれば、頭蓋頚椎移行部での屈曲変形の矯正、Os odontoideumの整復を行うことでより有効な間接的前方除圧が達成され、よりよい結果、高い患者満足度が得られると思われた。

*12.外傷性環椎後頭骨脱臼の治療経験

 

大分大学 整形外科 

 

吉岩 豊三(よしいわ とよみ)、宮崎 正志、野谷 尚樹、津村 弘

 

【はじめに】外傷性環椎後頭骨脱臼は致死的外傷に伴うことが多く、生存例であっても重傷頭部外傷の合併により看過されることがある。今回2症例を経験したので報告する。

【症例】症例はいずれも高エネルギー外傷にて受傷し、麻痺が存在するも併存疾患により評価困難であった。

症例1は75歳、男性。初診時、意識昏睡状態であり、四肢完全麻痺、外転神経麻痺を認めた。急性硬膜下血腫、頭蓋頚椎移行部レベルのくも膜下出血、血気胸、骨盤骨折を合併していた。Basion-dens interval(BDI)は15.8mmと拡大し、condyle-C1 interval(CCI)は2.0 mmを超え、環椎後頭骨脱臼と診断し後頭頚椎固定術を施行した。

症例2は 8歳、女児。初診時、意識障害とSpO2の低下があり、びまん性脳損傷、外傷性くも膜下出血、血気胸あり、肋骨、骨盤、左大腿骨と脛腓骨に骨折を認めた。画像評価にて後頭蓋下から頚髄周囲にくも膜下出血が存在し、BDI10.9o、Kaufman methodによる計測は5oを超える値であった。左上下肢麻痺、外転神経麻痺が存在し、環椎後頭骨脱臼が疑われ、動態撮影にて明らかな不安定性はなく保存的治療を施行した。

*13.外傷性後頭環椎脱臼後に手術加療を行った1例

 

岡山大学 整形外科 

 

渡邉 典行(わたなべ のりゆき)、杉本 佳久、瀧川 朋亨、荒瀧 慎也、田中 雅人、尾崎 敏文

 

【目的】外傷性後頭環椎脱臼は致命的であり、手術に至る症例は比較的稀である。今回我々は、外傷性後頭環椎脱臼後に救命し得て、内固定を行った1例を経験したので報告する。

【方法】症例は24歳、男性。バイクを運転中に転倒し、タクシーと衝突。当院に救急搬送された。来院時には右片麻痺を認めた。画像上、後頭環椎脱臼骨折、両側大脳半球脳挫傷、肺挫傷を認めた。受傷2日目にハローベスト装着、受傷11日目に後頭骨頚椎後方固定術(O-C3)を施行した。外固定はハローベストからフィラデルフィアカラーに変更した。受傷後23日目には介助下に立位が可能となり、その後右片麻痺の残存や高次機能障害はあるものの介助下の歩行が可能となった。

【考察】以前は救命し得なかった後頭環椎脱臼の症例も、現場での蘇生術と緊急搬送機関の進歩により、生存患者数は増加してきた。しかしながら、頭部外傷や他の部位の脊椎損傷を合併した症例では、後頭環椎関節損傷が見逃されることがあるため、適切な診断、早期治療が患者の予後に大きく影響すると考える。

*14.軸椎歯突起骨折に対し前方螺子固定術を施行した1例

 

福岡東医療センター 整形外科 

 

吉田 裕俊(よしだ ひろとし)、井上 三四郎、富永 冬樹、福元 真一、中西 芳応、中家 一寿

 

【目的】当院では本年4月より救命救急センターが開設され、転落事故による脊椎損傷が増加している。今回我々は、軸椎歯突起骨折に対して、前方螺子固定術を施行した1例を経験したので報告する。

【症例】46歳、男性。木の剪定中に5mの高さより落下し受傷。来院時軸椎歯突起骨折、左脛腓骨開放骨折、C7前方脱臼骨折を認めた。当日左脛腓骨開放骨折に対し、緊急洗浄・創外固定術・筋膜切開術施行し、受傷後18日目にプレート固定、軸椎歯突起骨折に対し前方螺子固定術を施行した。受傷後25日目に、C6-T1後方固定を実施した。

【考察】軸椎歯突起骨折のうち、AndersonU型は保存的治療による諸問題が指摘され、手術的治療が選択される。手術的治療は中西らにより螺子を用いた固定術が報告されており、陳旧例、固定性不良のもの以外の成績は良好とされている。本件は、新鮮例で転位が軽度であったためMedtronic社の中空螺子による固定を行ったが、固定性、頸椎運動制限などの問題は生じなかった。

【結論】前方螺子固定術の1例を報告した。

*15.転倒によって受傷した第2頚椎前方脱臼の1例

 

大分整形外科病院 

 

巽 政人(たつみ まさと)、酒井 翼、大田 秀樹、松本 佳之、中山 美数、木田 浩隆、井口 洋平、清田 光一、竹光 義治

 

我々は第2頚椎前方脱臼を経験したので報告する。症例は75歳男性、2008年4月、夜中に自宅でうがいをした際、バランスを崩して後方に転倒し、敷居で後頭部を打撲した。頚部痛が強く、近医に救急搬送され、上記診断のため、直ちに当院に転院した。入院時右頚部の痺れ、腫脹、疼痛が強かったが明らかな神経脱落症状は認めなかった。単純X線とCTでは明らかな骨折は認めなかったが、第2頚椎が前方に10mm脱臼しており右側椎間関節嵌合型であった。MRIでは後方の軟部組織に出血と思われる信号変化を認め、第2頚椎の椎弓前面と第3頚椎椎体後縁の間で脊髄が圧迫されていた。受傷翌日に全身麻酔下で後方より手術を行った。術中所見は、傍脊柱筋は広範囲に損傷をうけ出血しており、第2第3頚椎棘突起間は開大、右椎間関節は嵌合、左は亜脱臼位を呈していた。これらを術中透視下に整復した後に腸骨からの半層骨移植と棘突起間ワイヤリング固定を行った。術後疼痛は改善し、整復位での骨癒合が得られ、神経脱落症状も認めなかった。